魁!断筆姉さん!!

西洋司

文字の大きさ
4 / 128

01 斎木茂吉って知ってる?_03

しおりを挟む
   *          *

「何それ?」

「いいから、見てみ!」

 英子が緑子から渡されたそれは、A4の紙数枚で、……。どうやら、ネットのとあるWeb日記をプリントアウトしたもののようだった。

 その一枚目のトップページと思しきプリントには、中世ヨーロッパ風の不思議な街の写真が、カラーで印刷されていた。

「CG?」

 思わず英子は目を見張った。もしかすると、最近流行り出している3DCGアートではないかと思ったのだ。

 実を言うと、英子もそれらグラフィックソフトに手を出そうかと思っていたのだが、……。
 マヤとかソフトイマージュとか、あいにくそれらソフトは大変高価なため、なかなか手を出しづらいのも事実だった。

 すると、緑子もこちらの表情を見て、ひとつ頷いた。

「うん、……私もそう思う。おそらく、かなり腕のいい職人のいる事務所が作ったのかも」

「なるほど」

 英子はしばしの間、その街、おそらく王都? の風景をじっと黙って見つめていた。
 その街の風景は、まるで別の世界の現実を写し取ったような、精密な描写だった。

 ベージュ色の壁の建物が並び、その建物の一階が店舗で、何やら商品が並んでいる。
 客らしき人物と店員のやり取りの前の往来には、多くの馬車が行き交っている。

 その脇をベージュやカーキ色の簡素な服を着た大人、子供、若い女、車夫のような一群や、職人風の男、中年の女性が歩いている、そんな風景。

 英子の眼には、とてもこれが作り物には思えなかった。

「これが、その斎木茂吉のWeb日記のトップページ。ウチらの間でも真偽が定かでなくてさ」

 緑子はいわゆるCGクリエーターで、フリーでテレビ番組のCGを作って生計を立てている。
 本人いわく、そのウチ自主制作の映画を作りたいのだとか、……。

「なるほど、凄いな。これは海外のエース級のCG職人たちが集まって作ったのかも?」

 思わず、英子は唸らざるを得ないほどの出来だった。
 どうやら今日、この飲み会に参加して正解だったようだ。

 今回緑子から齎された情報は、英子にとって喉から手が出るほどのものだった。
 飲み代は高かったけど、……。でも、十分元を取れたと思った。

「「「「「かんぱぁ~いっ!!」」」」」

 本日の他の参加者たちは、これで5回目の乾杯の挨拶をしていた。
 飲み放題のため、飲まないと元を取れないと思っているのだろう。男性陣は羨ましいくらいにビールの大ジョッキを片手に、ごくごくと喉を鳴らして飲んでいた。

「それで、緑子。その斎木さんって人って、どんな人なの? 見るからにお役人って感じの人なの?」

「いや、かなりのイケメンという噂。でも見た目30歳くらいのオジサンらしいよ」

「へぇ~、……。ならイケオジか。でも変な性質のオジサンだったりしない?」

「何それっ? イケオジって!? きゃはは、英子、また変な言葉流行らせたりしないでよ!」

「へへへっ! 私が、変なお姉さんでぇ~すっ!!」

「やだっ、何それぇ~っ!」

 そう言って、緑子が英子の肩に抱き着いてくる。
 それから、緑子は英子の耳元に口を近づけて、こう囁いた。

「でもさ、……。いくつか、サポートして貰うには条件があるらしいよ!」と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...