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01 斎木茂吉って知ってる?_04
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* *
「詳しく!」
緑子の言葉に、英子は思わずそう言葉を漏らしていた。
「ん~、訊いちゃう? 一度訊いたら、……。もう後戻りできないよぉ?」
何だか、こちらを焦らす言い方だなぁと英子は思った。
まぁ、緑子は先ほどまでビールを大ジョッキ一杯、サワー三杯、カクテルいろいろと楽しんで飲んでいたから、もう結構酔っているのだろう。
すると、そのトロンとした目つきで、緑子はこう話を続けてきた。
「ん~、そうだなぁ、……。先ずある一定期間、ここ東京を離れて、どこか遠くの街で缶詰め状態になって、創作活動もろもろを強制的にさせられてしまうらしいの」
「マジで! 監禁とか、……じゃないの?」
「いやぁ、噂ではさ、……。マジもんの異世界に、連れていかれちゃうらしいよ?」
「怖っ! それ、マジでオカルト話じゃん」
英子もそう応じてみたのだけど。でも、やはりだんだん信ぴょう性のない話になってきたなぁと、思った。
「でしょぉ?」
「……」
「うん。でもさ、……。それが上手くいった暁には、その作家(クリエーター)さんは創作で飯を食っていけるだけのチャンスを貰えるそうよ!」
「ふむ、かなりいい話だね。緑子なら、そんな人現れたら、どうする?」
「私かぁ、……。私、いま彼氏いるからさ。英子みたいにフリーじゃないし。それに、オジサンってだけで、ちょっと敬遠するかも」
「なるほど」
その言葉を、英子はかなり前向きに受け取ることにして、……。腕組みをして、うんとひとつ笑顔でニッコリ頷いた。
そもそも英子は同年代よりも頼もしい年上男性が好みなので、友人の言葉に、大して棘を感じなかった。
「とりあえず、その人のWeb日記のアドレス。これね!」
そう言って、緑子はブログのアドレスの載っている先ほどのA4のプリントを、そのまま渡してくれた。
英子は「ありがとっ」といって受け取ると、どうにかしてこのチャンスをものにできないかと考えた。
飲み会が終わり、グループは往来に出た。
これから二次会をするかといった話が出てきた頃、英子たちの集団にさりげなく近づいてくる外車から、お高そうな背広姿の中年男性が現れた。
「じゃっ、彼氏が迎えにきたから。私はここいらで失礼します!」
そう言って、緑子は二次会のグループから離れていった。
「緑子のヤツ、コネで仕事取ってくるからなぁ」
「だね。アイツはその辺上手だしなぁ」
残されたグループのメンバーたちが、そんなことを呟いている。
何だかイヤな空気になりそうだったし、それにバイトの給料日前で金欠状態だったので、……。
英子も「それじゃ、私も朝一で仕事入っているから」といって、その場を離脱した。
とりあえず家に帰ったら、そのWeb日記を見てみようと思った。
* *
どうやら、貧乏作家(クリエーター)の英子に、ビッグチャンスが訪れたようです。
「詳しく!」
緑子の言葉に、英子は思わずそう言葉を漏らしていた。
「ん~、訊いちゃう? 一度訊いたら、……。もう後戻りできないよぉ?」
何だか、こちらを焦らす言い方だなぁと英子は思った。
まぁ、緑子は先ほどまでビールを大ジョッキ一杯、サワー三杯、カクテルいろいろと楽しんで飲んでいたから、もう結構酔っているのだろう。
すると、そのトロンとした目つきで、緑子はこう話を続けてきた。
「ん~、そうだなぁ、……。先ずある一定期間、ここ東京を離れて、どこか遠くの街で缶詰め状態になって、創作活動もろもろを強制的にさせられてしまうらしいの」
「マジで! 監禁とか、……じゃないの?」
「いやぁ、噂ではさ、……。マジもんの異世界に、連れていかれちゃうらしいよ?」
「怖っ! それ、マジでオカルト話じゃん」
英子もそう応じてみたのだけど。でも、やはりだんだん信ぴょう性のない話になってきたなぁと、思った。
「でしょぉ?」
「……」
「うん。でもさ、……。それが上手くいった暁には、その作家(クリエーター)さんは創作で飯を食っていけるだけのチャンスを貰えるそうよ!」
「ふむ、かなりいい話だね。緑子なら、そんな人現れたら、どうする?」
「私かぁ、……。私、いま彼氏いるからさ。英子みたいにフリーじゃないし。それに、オジサンってだけで、ちょっと敬遠するかも」
「なるほど」
その言葉を、英子はかなり前向きに受け取ることにして、……。腕組みをして、うんとひとつ笑顔でニッコリ頷いた。
そもそも英子は同年代よりも頼もしい年上男性が好みなので、友人の言葉に、大して棘を感じなかった。
「とりあえず、その人のWeb日記のアドレス。これね!」
そう言って、緑子はブログのアドレスの載っている先ほどのA4のプリントを、そのまま渡してくれた。
英子は「ありがとっ」といって受け取ると、どうにかしてこのチャンスをものにできないかと考えた。
飲み会が終わり、グループは往来に出た。
これから二次会をするかといった話が出てきた頃、英子たちの集団にさりげなく近づいてくる外車から、お高そうな背広姿の中年男性が現れた。
「じゃっ、彼氏が迎えにきたから。私はここいらで失礼します!」
そう言って、緑子は二次会のグループから離れていった。
「緑子のヤツ、コネで仕事取ってくるからなぁ」
「だね。アイツはその辺上手だしなぁ」
残されたグループのメンバーたちが、そんなことを呟いている。
何だかイヤな空気になりそうだったし、それにバイトの給料日前で金欠状態だったので、……。
英子も「それじゃ、私も朝一で仕事入っているから」といって、その場を離脱した。
とりあえず家に帰ったら、そのWeb日記を見てみようと思った。
* *
どうやら、貧乏作家(クリエーター)の英子に、ビッグチャンスが訪れたようです。
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