魁!断筆姉さん!!

西洋司

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04 霞が関のコンビニで、深夜のバイトを始めました_09

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   *          *

 英子は夕方、母校の大学の6限(17時半)を告げるチャイムの音で、目が覚めた。

 あぁ、……。寝ちゃってたんだ、私。
 起き上がって洗濯物を手に取ると、もうすっかり乾いていた。

 点けっぱなしのテレビやパソコンをそのままにして、半日ぶりの食事を摂り始めた。
 今日は、21時から霞が関のコンビニで、深夜のバイトか、……。
 正直、気が重いかも、と英子はパンを咀嚼しながら思った。

 とりあえず、パソコンで「エース展」のサイトを見てみたんだけど、……。でも、英子の作品が「選外」されてしまった情報なんて、どこにも見つけられなかった。

 ただ、本展が歴史ある由緒ある素晴らしい展覧会であることが、あっさりした文で綴られ、初日の会場の混雑した様子のスナップ写真が、数点載っていた。

 もう後がない英子にとって、死力を尽くして描いた作品は、あえなく玉砕した。

「あ~あぁ、もぉう。ショックで頭がふらふらだよぉ~っ!」

 そう独り言ちたら、……。
 ホンとごく自然に、もう「断筆」するしかないのかと思った。

 気が付くと、テーブルの上の目覚まし時計が、夜の7時半を指していた。

「もぉう、いかなくちゃ、……」

 それから先のことは、……。よく、覚えていない。

 英子は電車で少しだけ寝てから、深夜のコンビニでオールナイトで働いて、……。
 漸くバイトを終えて、意識朦朧と夜明け前の店の外に出たところ、……。

 折悪しく、大型のダンプカーが店の前の都道を猛スピードで走ってきた。

 けたたましくクラクションが鳴り響くが、それは誰に対して鳴らしているのか?
 私、……なのか? でも、なんで私、こんなに鳴らされているの?

 気が付くと腰が砕けてしまい、もう路上にまともに立っていられない。
 ホンと、……もう、どうでもいい。このまま消えてしまった方が、いっそ楽かも。

 クラクションの音と、ギラギラするハイビームのライトに照らされながら、英子は死を覚悟した。

 まさに、その時!

「危ないっ!!」

 聞き覚えのある男性の声。深みがあって、心地よい、英子のよく知る男性の声。
 突然、何者かに抱き着かれると、そのまま勢いよく宙を舞い、路面をゴロゴロと転がっていった。

 その直後、大型車両の急ブレーキの音が、夜明け前のコンクリートジャングルに響き渡る。

 もの凄いうるさい音だなぁと思った。
 でも、……。仕立てのいい黒のスーツに顔を埋め、とてもではないけど、声を出すことができなかった。

「大藪さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」

 急ブレーキの音に、店員達が大騒ぎで店を飛び出してくる。
 どうやら、路肩に倒れて難を逃れたみたい。

「救急車っ、救急車、早くっ!!」

 同じシフトの学生バイトの子が救急車をコールする中、その男性は淡々と救護処置を施してくれた。
 意識朦朧と、こちらがその相手を見つめていると、……。

「大丈夫ですか? 大藪さんっ!!」と悲痛な表情で、その男性が呼びかけてくる。

 あぁ、……。助けてくれたのは、いつもの常連さんだったか。
 もう疲れた。もう少しだけ寝かせて、……と英子は思った。

   *          *

 英子のピンチを救ってくれたのは、まさかの常連客の男性だった。
 さて、……。明日はどっちだ。
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