天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

26 隣国の姫君の容態_09

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 シルファー先輩にも、「タイプB」をお出しした。すると、先ず一口こくりとお飲みになると、「フルーティーで甘く、とても飲み易いですね!」とお褒めの言葉を頂いた。

「それは、良かったです!」

 ハルコンがニッコリ微笑むと、シルファー先輩はもう何ら躊躇わずに、こくこくと飲み干してしまった。
 どうやら、飲み口がとてもまろやかだったからかなぁと、ハルコンは分析する。

「ハルコン、これっ、凄くいいですねっ!」

 先程とは打って変わって、シルファー先輩の血色のいい、元気溌溂とした笑顔。
 どうやら「タイプB」が即効し、疲労回復につながったようだ。

 シルファー先輩も激務だからさ。体質改善、体力増進を目的に常用して貰えるといいよね。

「ありがとうございます。今後、この薬剤を量産し、市場に流通できればと思います」

「えっ!? これ程効果の高い薬を、量産できるのですか?」

「十分、可能です!」

「いいですねぇ、いいですねぇ」

 シルファー先輩は、輝く笑顔で頷いて下さる。

 こちらの世界でも王宮のお墨付きを得て、「タイプB」の評価を高めておく。そして、市場に安く大量に流通できればベストかなぁ、とハルコンは思った。

 すると、寮長がシルファー先輩に何やら耳打ちした。
 シルファー先輩は、「ふむふむ」という感じで小さく頷くと、こちらにニコリと笑顔をお見せになられた。

「ねぇ、ハルコン。ちょっといいかしら?」

「はい?」

 改まって、一体何だろうとハルコンは思った。

「この『タイプB』って、王都の森の『聖地』で採取したものよね?」

「えぇそうです」

「『聖地』内に自生する、『回生の木』の根元の土壌から採取した『放線菌』? が生み出した成分なのですよね?」

「えぇ、……まぁ、そうですね」

「でしたら、王都の森の『聖地』の管轄は、王宮になります。つまり、王宮の所有財産からこの『タイプB』が作られた、……ということになりますよね?」

 ハルコンは、シルファー先輩が大体何を仰りたいのか、直ぐに察しが付いた。
 でも、利に敏いシルファー先輩がこう仰るのは、既に想定済みだ。

「私としては、この『タイプB』が安価で広く市場に流通するのが、ベストだと考えています。そのために王宮で製造、販売の管理をして頂き、国内だけではなく、隣国諸国にも輸出できるようになることが私の希望です!」

「まぁっ!? それで、ハルコンはよろしいんですの?」

「とにかく安価で、市場に提供できれば、……それに越したことはございません!」

 ハルコンがニッコリと笑うと、シルファー先輩は更に輝くような笑顔になられた。
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