317 / 500
第一部「ハルコン少年期」
37 研究所の長い一日_15
しおりを挟む
* *
「それでは、皆さん。あなた方隊商がファイルド国に向かう途中、一体何があったのか、……改めていくつか質問させて下さい!」
ハルコンの言葉に、その男達は息を飲んだ。
ハルコン・セイントークという貴族の男が、ここ最近のファイルド国を隆盛に導いていると噂されていたのだが、……。
「まさか、こんな年端もいかない子供だったとは、……」
隊商の男達は、上が50代後半で下がティーンエージャーくらいと様々な年齢の者達で構成されていた。
その一番の年配の男が驚きの表情を浮かべて呟くと、傍のベッドから右腕を伸ばして制止する40代前半の男がいた。
「済まない、ハルコン殿。我々の本拠地にしているサスパニアでは、まだ情報が新しくなくてな。だが、我々はほんの少しの運と実力だけでこうして商売を営んできた。アンタが、その見た目のワリに、もの凄い力を宿しているのが、私にはヒシヒシと伝わってくるな!」
そう言って、どうやらグループのリーダー格らしき男がニヤリと笑った。
「はははっ、とりあえず身体の安全は我々ファイルド国で保障しますので、……。どうぞ、お体を存分に休めて下さいね!」
ハルコンもニコリと笑って応じる。
だが、隊商の男達には、ハルコンとカルソン教授、更には療養所の医官達が皆完全防備のつなぎで全身を覆っていることから、自分達が如何に危険な状況にあるのかワカっているつもりのようだ。
「それで、ハルコン殿。我々は今後どうなるのかね? 最悪、この国で骨を埋めることになってしまうのか? 正直にお答えしてくれないか?」
言葉つきはとても飄々としていたが、その表情は営業スマイルに若干憂いを含ませたような感じだ。
なら、先ずはここで隊商の皆さんに安心して貰わないといけないかな、とハルコンは思った。
「皆さんには、事前にハルコンBを飲んで貰っておりますが、これはあくまで対処療法に過ぎません。今後同様のことが起こらないためにも、ハルコンAを飲んで頂こうと思っております」
「おぉっ、ハルコンAですか!? 噂では、どんな病もケガも立ちどころに治してしまう万能薬だと聞いておりますが?」
「はいっ、私どもファイルド国での実績では、ほぼ100%、間違いなく回復することを断言しますよ!」
「おぉっ、それは良かった!」
ハルコンの言葉に、隊商の男達は皆ホッとしたように表情が緩んだ。
「カルソン教授、ではいつものように、……彼女に薬剤を用意して頂けますか?」
「既に手配済みです」
ハルコンが教授に命じると、薬剤をトレーに載せて、ワゴンを押して入ってくる女性がいる。
彼女もまた王立研究所のスタッフの一人で、名をファルマという。20代前半の見た目で、主にハルコンが治療を行う際の看護助手を担当する者だ。
厳重な防護服を纏った状態で、手際よく薬剤を患者達に配っていく。
そして、11人には漏れなくハルコンAを経口投与させていくが、30代前半のただ一人にだけは、何の効果もない味付けだけそれっぽい偽薬を口に含ませた。
彼女は投与の際、その患者の胸元にさりげなく触れると、「失礼しました」と言って、直ぐさま次の患者に対応する。
ハルコンはいつもの光景に、特に表情を変えることなくその作業を見つめている。
ハルコンの右手には小さなコルク栓で閉じられた小瓶数本が握られており、……少しずつことりと、何らかの物質が中に充満していく気配があった。
とりあえず、……鳥インフルエンザのサンプルを直接頂きましたよ! と、ハルコンは思った。
ハルコンは誰に告げるでもなく、ユニークスキル「マジックハンド」で患者の体内から全ての悪性ウイルスを除去すると、それら全てを数本の小瓶に回収した。
こんな芸当ができるのも、看護助手を務めるファルマが、ただ単に有能だからではない。
彼女もまた、例外なくNPCの一人だからだ。
「それでは、皆さん。あなた方隊商がファイルド国に向かう途中、一体何があったのか、……改めていくつか質問させて下さい!」
ハルコンの言葉に、その男達は息を飲んだ。
ハルコン・セイントークという貴族の男が、ここ最近のファイルド国を隆盛に導いていると噂されていたのだが、……。
「まさか、こんな年端もいかない子供だったとは、……」
隊商の男達は、上が50代後半で下がティーンエージャーくらいと様々な年齢の者達で構成されていた。
その一番の年配の男が驚きの表情を浮かべて呟くと、傍のベッドから右腕を伸ばして制止する40代前半の男がいた。
「済まない、ハルコン殿。我々の本拠地にしているサスパニアでは、まだ情報が新しくなくてな。だが、我々はほんの少しの運と実力だけでこうして商売を営んできた。アンタが、その見た目のワリに、もの凄い力を宿しているのが、私にはヒシヒシと伝わってくるな!」
そう言って、どうやらグループのリーダー格らしき男がニヤリと笑った。
「はははっ、とりあえず身体の安全は我々ファイルド国で保障しますので、……。どうぞ、お体を存分に休めて下さいね!」
ハルコンもニコリと笑って応じる。
だが、隊商の男達には、ハルコンとカルソン教授、更には療養所の医官達が皆完全防備のつなぎで全身を覆っていることから、自分達が如何に危険な状況にあるのかワカっているつもりのようだ。
「それで、ハルコン殿。我々は今後どうなるのかね? 最悪、この国で骨を埋めることになってしまうのか? 正直にお答えしてくれないか?」
言葉つきはとても飄々としていたが、その表情は営業スマイルに若干憂いを含ませたような感じだ。
なら、先ずはここで隊商の皆さんに安心して貰わないといけないかな、とハルコンは思った。
「皆さんには、事前にハルコンBを飲んで貰っておりますが、これはあくまで対処療法に過ぎません。今後同様のことが起こらないためにも、ハルコンAを飲んで頂こうと思っております」
「おぉっ、ハルコンAですか!? 噂では、どんな病もケガも立ちどころに治してしまう万能薬だと聞いておりますが?」
「はいっ、私どもファイルド国での実績では、ほぼ100%、間違いなく回復することを断言しますよ!」
「おぉっ、それは良かった!」
ハルコンの言葉に、隊商の男達は皆ホッとしたように表情が緩んだ。
「カルソン教授、ではいつものように、……彼女に薬剤を用意して頂けますか?」
「既に手配済みです」
ハルコンが教授に命じると、薬剤をトレーに載せて、ワゴンを押して入ってくる女性がいる。
彼女もまた王立研究所のスタッフの一人で、名をファルマという。20代前半の見た目で、主にハルコンが治療を行う際の看護助手を担当する者だ。
厳重な防護服を纏った状態で、手際よく薬剤を患者達に配っていく。
そして、11人には漏れなくハルコンAを経口投与させていくが、30代前半のただ一人にだけは、何の効果もない味付けだけそれっぽい偽薬を口に含ませた。
彼女は投与の際、その患者の胸元にさりげなく触れると、「失礼しました」と言って、直ぐさま次の患者に対応する。
ハルコンはいつもの光景に、特に表情を変えることなくその作業を見つめている。
ハルコンの右手には小さなコルク栓で閉じられた小瓶数本が握られており、……少しずつことりと、何らかの物質が中に充満していく気配があった。
とりあえず、……鳥インフルエンザのサンプルを直接頂きましたよ! と、ハルコンは思った。
ハルコンは誰に告げるでもなく、ユニークスキル「マジックハンド」で患者の体内から全ての悪性ウイルスを除去すると、それら全てを数本の小瓶に回収した。
こんな芸当ができるのも、看護助手を務めるファルマが、ただ単に有能だからではない。
彼女もまた、例外なくNPCの一人だからだ。
78
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる