317 / 595
第一部「ハルコン少年期」
37 研究所の長い一日_15
* *
「それでは、皆さん。あなた方隊商がファイルド国に向かう途中、一体何があったのか、……改めていくつか質問させて下さい!」
ハルコンの言葉に、その男達は息を飲んだ。
ハルコン・セイントークという貴族の男が、ここ最近のファイルド国を隆盛に導いていると噂されていたのだが、……。
「まさか、こんな年端もいかない子供だったとは、……」
隊商の男達は、上が50代後半で下がティーンエージャーくらいと様々な年齢の者達で構成されていた。
その一番の年配の男が驚きの表情を浮かべて呟くと、傍のベッドから右腕を伸ばして制止する40代前半の男がいた。
「済まない、ハルコン殿。我々の本拠地にしているサスパニアでは、まだ情報が新しくなくてな。だが、我々はほんの少しの運と実力だけでこうして商売を営んできた。アンタが、その見た目のワリに、もの凄い力を宿しているのが、私にはヒシヒシと伝わってくるな!」
そう言って、どうやらグループのリーダー格らしき男がニヤリと笑った。
「はははっ、とりあえず身体の安全は我々ファイルド国で保障しますので、……。どうぞ、お体を存分に休めて下さいね!」
ハルコンもニコリと笑って応じる。
だが、隊商の男達には、ハルコンとカルソン教授、更には療養所の医官達が皆完全防備のつなぎで全身を覆っていることから、自分達が如何に危険な状況にあるのかワカっているつもりのようだ。
「それで、ハルコン殿。我々は今後どうなるのかね? 最悪、この国で骨を埋めることになってしまうのか? 正直にお答えしてくれないか?」
言葉つきはとても飄々としていたが、その表情は営業スマイルに若干憂いを含ませたような感じだ。
なら、先ずはここで隊商の皆さんに安心して貰わないといけないかな、とハルコンは思った。
「皆さんには、事前にハルコンBを飲んで貰っておりますが、これはあくまで対処療法に過ぎません。今後同様のことが起こらないためにも、ハルコンAを飲んで頂こうと思っております」
「おぉっ、ハルコンAですか!? 噂では、どんな病もケガも立ちどころに治してしまう万能薬だと聞いておりますが?」
「はいっ、私どもファイルド国での実績では、ほぼ100%、間違いなく回復することを断言しますよ!」
「おぉっ、それは良かった!」
ハルコンの言葉に、隊商の男達は皆ホッとしたように表情が緩んだ。
「カルソン教授、ではいつものように、……彼女に薬剤を用意して頂けますか?」
「既に手配済みです」
ハルコンが教授に命じると、薬剤をトレーに載せて、ワゴンを押して入ってくる女性がいる。
彼女もまた王立研究所のスタッフの一人で、名をファルマという。20代前半の見た目で、主にハルコンが治療を行う際の看護助手を担当する者だ。
厳重な防護服を纏った状態で、手際よく薬剤を患者達に配っていく。
そして、11人には漏れなくハルコンAを経口投与させていくが、30代前半のただ一人にだけは、何の効果もない味付けだけそれっぽい偽薬を口に含ませた。
彼女は投与の際、その患者の胸元にさりげなく触れると、「失礼しました」と言って、直ぐさま次の患者に対応する。
ハルコンはいつもの光景に、特に表情を変えることなくその作業を見つめている。
ハルコンの右手には小さなコルク栓で閉じられた小瓶数本が握られており、……少しずつことりと、何らかの物質が中に充満していく気配があった。
とりあえず、……鳥インフルエンザのサンプルを直接頂きましたよ! と、ハルコンは思った。
ハルコンは誰に告げるでもなく、ユニークスキル「マジックハンド」で患者の体内から全ての悪性ウイルスを除去すると、それら全てを数本の小瓶に回収した。
こんな芸当ができるのも、看護助手を務めるファルマが、ただ単に有能だからではない。
彼女もまた、例外なくNPCの一人だからだ。
「それでは、皆さん。あなた方隊商がファイルド国に向かう途中、一体何があったのか、……改めていくつか質問させて下さい!」
ハルコンの言葉に、その男達は息を飲んだ。
ハルコン・セイントークという貴族の男が、ここ最近のファイルド国を隆盛に導いていると噂されていたのだが、……。
「まさか、こんな年端もいかない子供だったとは、……」
隊商の男達は、上が50代後半で下がティーンエージャーくらいと様々な年齢の者達で構成されていた。
その一番の年配の男が驚きの表情を浮かべて呟くと、傍のベッドから右腕を伸ばして制止する40代前半の男がいた。
「済まない、ハルコン殿。我々の本拠地にしているサスパニアでは、まだ情報が新しくなくてな。だが、我々はほんの少しの運と実力だけでこうして商売を営んできた。アンタが、その見た目のワリに、もの凄い力を宿しているのが、私にはヒシヒシと伝わってくるな!」
そう言って、どうやらグループのリーダー格らしき男がニヤリと笑った。
「はははっ、とりあえず身体の安全は我々ファイルド国で保障しますので、……。どうぞ、お体を存分に休めて下さいね!」
ハルコンもニコリと笑って応じる。
だが、隊商の男達には、ハルコンとカルソン教授、更には療養所の医官達が皆完全防備のつなぎで全身を覆っていることから、自分達が如何に危険な状況にあるのかワカっているつもりのようだ。
「それで、ハルコン殿。我々は今後どうなるのかね? 最悪、この国で骨を埋めることになってしまうのか? 正直にお答えしてくれないか?」
言葉つきはとても飄々としていたが、その表情は営業スマイルに若干憂いを含ませたような感じだ。
なら、先ずはここで隊商の皆さんに安心して貰わないといけないかな、とハルコンは思った。
「皆さんには、事前にハルコンBを飲んで貰っておりますが、これはあくまで対処療法に過ぎません。今後同様のことが起こらないためにも、ハルコンAを飲んで頂こうと思っております」
「おぉっ、ハルコンAですか!? 噂では、どんな病もケガも立ちどころに治してしまう万能薬だと聞いておりますが?」
「はいっ、私どもファイルド国での実績では、ほぼ100%、間違いなく回復することを断言しますよ!」
「おぉっ、それは良かった!」
ハルコンの言葉に、隊商の男達は皆ホッとしたように表情が緩んだ。
「カルソン教授、ではいつものように、……彼女に薬剤を用意して頂けますか?」
「既に手配済みです」
ハルコンが教授に命じると、薬剤をトレーに載せて、ワゴンを押して入ってくる女性がいる。
彼女もまた王立研究所のスタッフの一人で、名をファルマという。20代前半の見た目で、主にハルコンが治療を行う際の看護助手を担当する者だ。
厳重な防護服を纏った状態で、手際よく薬剤を患者達に配っていく。
そして、11人には漏れなくハルコンAを経口投与させていくが、30代前半のただ一人にだけは、何の効果もない味付けだけそれっぽい偽薬を口に含ませた。
彼女は投与の際、その患者の胸元にさりげなく触れると、「失礼しました」と言って、直ぐさま次の患者に対応する。
ハルコンはいつもの光景に、特に表情を変えることなくその作業を見つめている。
ハルコンの右手には小さなコルク栓で閉じられた小瓶数本が握られており、……少しずつことりと、何らかの物質が中に充満していく気配があった。
とりあえず、……鳥インフルエンザのサンプルを直接頂きましたよ! と、ハルコンは思った。
ハルコンは誰に告げるでもなく、ユニークスキル「マジックハンド」で患者の体内から全ての悪性ウイルスを除去すると、それら全てを数本の小瓶に回収した。
こんな芸当ができるのも、看護助手を務めるファルマが、ただ単に有能だからではない。
彼女もまた、例外なくNPCの一人だからだ。
あなたにおすすめの小説
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました