幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第2章

初依頼

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なんの話しもなく勝手に進められていて驚いたが、今後のことを考えると正直助かるので黙って聞いていた。
今回の件はアーウィンが受けてくれることになった。
しかも本人の希望で報酬は幻獣達の次回の薬の無償提供で良いと言う。
アーウィンは他にも幻獣がいて、この前の薬では駄目な子もいるらしい。
これで依頼が失敗しても相棒達の治療だけは受けられると、豪快に笑って引き受けてくれた。
依頼内容は出発連絡の3日後にレナードの家に行き、牛とコッコ達の生存確認と、厩舎とコッコ小屋の掃除と世話。
その日までにレナードからの連絡がなければ保護か、誰かが待機することになった。
待機の場合にはギルドに預けた鍵でレナードの家の客間と生活に必要な施設のみを利用し、それ以外の部屋などに立ち入ったことが判明した場合は依頼料の取り消し、要するに無報酬ただ働きになる。
アーウィンが会議室を出て行った後、そのまま会議室でギルド長と話し合う。
「今日にでも職員にレナードのところに、説明と依頼内容の詳細を決めるために派遣する予定だったんだ。
先日変異種育成計画の会合でヘルマン氏が、レナードが長期間自宅を離れて薬草を採取すると聞いて議題にあげて来た。
もしそれが本当なら対策を講じる必要があるということになってな」
今までは牛達だけだったし、魔物との混血種で賢く強いから、短ければ放牧したままで、長くなりそうな時は村に預けていた。
コッコ達は、ルゼがいるから村に預ける訳にいかないからこの提案は渡りに船だった。
今後も3日以上の外出の時は同様の内容として、保護している幻獣がいる時には別途追加する、報酬は基本報酬額を後日改めて決めることにして冒険者ギルドを後にした。
薬師ギルドに依頼品を納入する際に、採取のため作成依頼の受注は出来ないことを伝える。
ついでに採取依頼の掲示板を確認し、自分以外の分も採取が出来そうな物をいくつか受けた。
ヘルマン氏のところと魔性植物園に寄り、採取のため南にある森に行くため家を空けると伝えた。
それぞれ果物や植物などの素材の採取を依頼され、後で指名依頼を出しておくから受けて欲しいと頼まれた。
ヘルマン氏にはマジックバックまで渡された。
なんでも変異種の雛の生存率が3倍になり、成鳥間近の変異種が新しい育成方法により丈夫になったおかげで、成鳥後に王家専属の伝書鳥として採用されたと。
それに伴い公爵家や辺境伯など上位貴族からの問い合わせが殺到し、莫大な利益を得たのでそのお礼にと荷車1台分の容量しかないが受け取ってくれと言う。
何度も断ったのだが、本当はもっと大容量の物か、それにに匹敵する物を贈りたいほどなんだと切々と訴えられて、渋々受け取った。

せっかく譲ってもらえたマジックバックには、幻獣の子供達の非常食の傷付きやすい魔性果物を入れておいた。
テントなどの荷物はスティードの背に積み、それ以外はリュックで背負うつもりだったが、幼体も運びたいと言うのでマジックバックと自分達の食器類と毛布を乗せることにした。
幼体は自分も仕事をもらえて嬉しいらしい。
クレド は上空の警戒、ソルとルナは前方の左右の警戒をさせている。
今日は慣れない場所での行動の仕方の訓練でもある。

皆に首輪か、足輪を付けた。
これで万が一、レナードの目の届く範囲に居なくても、主人持ちだと見てもらえるのでいきなり人族に襲われるリスクが減る。
もちろんルールを守らない者もいるが、幼体以外は仮契約をしているから直ぐに異変には気付ける。
幼体にはクレドを付け、念のために居場所が分かる魔道具を付けてある。

普段行く森はコンティノアールの国境沿いだが、鋼の森 カリュプスとは接していない場所だが、今回行くのは迷いの森の一つ薬草トラヴァーの森に隣接している、ヘンルーダという町の近くの小さな森。
まだ迷いの森に行くには幼体達では早いが近くにあるため、他にはない薬草が少ないが生えているから選んだ。
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