幻獣士の王と呼ばれた男

第２章

召喚獣

「レナードさんの言うことが本当なら、我々も本腰を入れて検証したい」
「リベルタでは商業ギルドと冒険ギルドに、魔性植物園が三者協定を締結しちゃって大変でしたよ」
甘えてくるスティードを撫でながら苦笑いするレナード。
「変異種と森に行くと言うので確かめに来たが、問題がないというのは嘘でも誇張でも無さそうだ。
ただやはり信じられないから、職員を同行するのが条件だ。
同行なしの場合には、変異種の幼体は預からせていただく、こちらの管轄の森で貴重な変異種に何かあっても対応出来ないからだ」
「職員ですか？
うーん、他の子達は大丈夫ですが、この通り幻獣の幼体は人族が怖いんです。
慣れていない人族がいると怯えてしまうんです」
幼体は２人に背中を向け、レナードに抱いてもらってようやく落ち着いたようだ。
「では召喚獣ならどうだ？」
「この子達と相性さえ良ければいいですよ」
「コナー副ギルド長を呼んで来い」
背の高い人が獣舎を走って出て行った。



「シリル・・・ギルド長お呼びですか？」
長身で眼鏡をかけた知的な印象の男がやって来た。
「お前なぁ、客人の前だぞ」
レナードに申し訳なさそうに軽く頭を下げながらギルド長は注意した。
「失礼しました。
何かギルド長この人が迷惑をかけたのでしょうか？」
優雅な仕草でレナードに頭を下げながら、さりげなく言われてレナードは苦笑いするしかない。
「だから嫌みは‥。
そうだ、お前に来てもらったのは彼奴ら・・・を呼び出して欲しいからなんだよ」
「あの子達を何に使うつもりで？」
一瞬で周りの空気が重くなる。
「こちらにいるレナードさんが、幻獣と変異種の幼体を連れて森へ行くと言うので話していたんだが、大丈夫だと言うが心配だから彼奴らの中から一緒に行ってもらいたいと思ってな」
「変異種の幼体を？」
「先程そちらのお二人には話したんですが、リベルタでは変異種の幼体の飼育方法によって、体調を崩すことが格段に減ったんです。
それに変異種の全部と仮契約を済ませているので、即座に対処できるからと説明したんですが、同行者を出すと言われて。
ただ幻獣の幼体は人族に襲われて、この様に見知らぬ人間は怖がってしまうので、召喚獣ならと」
「なるほど、そういうことならお力になりましょう」
にこやかにレナードの子供達を見つめて請け負ってくれた。
「さて、どの子を呼びましょうか？」
コナーが悩んでる間にスティードに協力してもらい子犬達を起こす。
幼体の警戒を薄くするため、シリルとコナー以外は退出し、更に２人はドア付近に立つ。
レナードと幼体は反対側の窓際に移動し椅子に座り、
「先ずは言葉を喋ることが出来る、《サモンオウムスナップ》」
「コンニチわ、スナっぷだョ」
挨拶の後にレナードのところへ飛んで来て、右肩に乗った。
ところがそれを見たクレドがひと鳴きすると、スナップを追い払うように後ろから体当たりをした。
《クレドどうした？》
《主人の肩はクレドの、他の鳥ダメ》
《そっか、分かったよ》
「コナーさん、肩に乗る鳥類は駄目みたいです」
「うん、見てたから分かるよ」
苦笑いしてスナップを還す。
「じゃあ次は器用な、《サモン猿コルザ》」
「キキッ」
レナードの近くへ行くとぺこりとお辞儀をして、レナードの座っている椅子の背もたれの上に飛び乗った。
「続いて珍しい《サモン虹色カメレオンクインス》」
コナーが床から抱き上げる。
「最後は《サモン栗鼠 ピアニー》」
チチッと可愛らしく鳴いて、レナードの足元から膝の上に駆け上がった。
「この４匹が見届けの出来る視界や聴力を感覚共有が出来る個体です。虹色カメレオンは擬態が得意で、ピアニーはポケットに入って大人しくしていること出来ますよ。しばらく席を外しますからその間に絞っていただければありがたいですね。
では１０分くらいの間私達は席を外しますのでごゆっくり」