幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第4章

幻獣の試練

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条件に納得した者は受付に行き番号札をもらい、順番に案内される事になる。
相棒がいる場合は幻獣との相性の確認のために森へ行く。
1番は幻獣士2号を狙うリベルタの幻獣使いのアーウィンだ。
これまでの幻獣保護施設での貢献が認められ、開業時間の1時間前に閲覧を許され、開業時間には待機部屋の扉の前でスタンバイしていた。
開業と同時に待機部屋から地下への階段を降りて洞窟に入る。
奥に続く洞窟は幅は広いが一本道ではあるが、入り口までには霧が立ち込め方向を狂わせるために風向きが変わったり、幻覚や幻聴などで距離や方向を狂わせている。
入り口までのこの区間は更に新しい幻獣を得る場合に、今の相棒との関係性をチェックする場所としても機能する。

白狼ホワイトウルフのリーダーは急に臭覚や聴覚が鈍くなった感じがして戸惑って立ち止まった。
すると側に居たはずのご主人様であるアーウィンの姿を見失った。
直ぐに念話で呼びかけるも、距離があるのかのように反応がない。
ナンバー3と4に感覚が届く範囲でご主人様を探すように命令する。
しばらくしてナンバー4から主人あるじの匂いを見つけたので追うと念話が入って気配が途切れた。
ナンバー4の居た方向に全員で駆け出す。
そこには主人と一緒にナンバー4が居たが、いつもと様子が違った。
主人がナンバー4を踏み付けていたからだ。
戸惑いの弱々しい鳴き声がした。
「きゅーん」
その途端に踏み付けていた足に力が入る。
「ギャン!」
いつも幻獣や動物に優しい主人が、相棒である自分の配下に理不尽に暴力を振るったことは一度もない。
おかしい。
リーダーは他の眷族を下がらせて姿勢を低くして臨戦体制を取った。
「従魔のくせに主人に向かって飛びかかって来るなんて生意気だ!」
そう言ってナンバー4を更に強く踏む。
間違いない、これは主人ではないと。
そう確信したリーダーは、機会を狙って敵を襲うべく更に構えた。
《ナンバー3、引き続き主人を探せ!
この偽者は我が相手をする》
すぐさま駆けて行った。
抵抗を止めたナンバー4が身体の力を抜いた時に、意識が足元に向かったのを見て飛びかかる。
体当たりをして上にのしかかり、急所を噛もうとしたところでナンバー4が消え、人形だけが残った。

一方鼠型幻獣のサナは主人の胸ポケットに入っていた。
霧が濃く足元がおぼつかないため危険と感じたアーウィンはサナをポケットから出した。
《サナ、霧で足元が見えないから転ぶと危ない。
白狼のところへお行き》
「チュ」
サナが飛び降りられる高さに屈んでくれたので勢い良く飛んだ。
いつものように一番優しい白狼のところへ駆け寄った。
ナンバー4とリーダに呼ばれた個体で、サナを乗せている時に一番揺れが少なく安定した走りをするので大好きだ。
主人の匂いを見つけて走った優しい白狼が、近寄ったら透明な壁にぶつかってサナは放り出された。
飛ばされてしまい戸惑ったが、一生懸命ご主人様か、優しい白狼を探して匂いを嗅ぎ回った。
ようやく懐かしい匂いがして近付くと、他の白狼達が居た。
鼠型幻獣はそれほど賢くはないので、さっき優しい白狼が白狼の群れと離れた場所に走ったのだから、ここに皆が居ないはずということに気付けるほどの知能のはなかった。
なので探していたのが優しい白狼だということを忘れて近付いた。
近くの白狼の背中に駆け上がると、視界の先に主人の姿を見つけた。
嬉しくて登ったばかりなのに飛び降りてご主人様に駆け寄る。
普段ならご主人様が気付いて屈んでくれるが気付いていないのかと思い足元に駆け寄る。
ところがあり得ない光景に立ち止まる。
白狼のお腹を蹴ったから。
この人はご主人様じゃないと思ったサナは元来た道を戻りご主人様を探しに走った。

ここで幻獣に幻覚で主人が仲間に暴力を振るったと見せ、どう反応するかで関係性を確認される。
アーウィンの幻獣2匹は正しく主人じゃないと判断したため合格となる。
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