幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第5章

ファンタラー

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ファンタラー研究都市では発表直後に幹部会議が幻獣士幹部が発表された数日後に開かれた。
魔法会議に出世した議長と副議長、事務局長が正面中央に座り、他の幹部達が地位に応じてコの字の席に座り、補佐がいる者はその後ろの壁際に立った。
幹部は20名で、魔導具や魔法陣などを魔術に関する研究部署が第一勢力で、次いで生活に役立つ魔道具や複合魔法の生活魔法に関する研究部署、他には新しい魔法や魔術を開発する部署、幻獣の研究する部署などがあるが、2大勢力以外は幹部は1人または兼任だった。
「今日の議題は通知した通り幻獣士及び新しい迷いの森の件だ。
最初に言っておくが、今までを名乗っていた者は幻獣使いとなるが、幻獣士が一定の人数になるまでは猶予されるそうだ。
我都市にも居るようだが、この会議が終了後に事務局から公示する。
知り合いに幻獣士を名乗る者が居れば、早々に幻獣士になるか、幻獣使いとして名乗りを変えるか決める様に伝えてくれ。」
手を挙げた者を指名する。
「幻獣士の定義が変わったということですか?」
「幻獣の研究部署なら幻獣士の要項を取り寄せ確認していると思うが?」
「はい、要約すると『精霊王と幻獣王が認め、幻獣士の聖句を唱えた者』とあります」
「確か会議の時に言ってたな。
幻獣王の聖句の後でないと、幻獣士本来の目視範囲以外の念話が出来んと」
議長のその呟きはさほど大きくは無かったが、静かになっていた会議室では全員に届いた。
幻獣士と名乗る者を束ねているのは副議長で、魔法陣を研究する者達が秘密裏に行い、研究都市外の幻獣使いで実験を重ね、迷いの森の中で増幅の魔法陣を使用すると契約期間が伸びることがあるという事で、そろそろ正式な検証をすべきではという機運になっていた。
ケイシー商業ギルド代表が魔法会議で見つけたのは一瞬だけ顔を顰めたがは冷静そうに見える副議長だった。
他の2人はやはりという様な表情だった。
議長は現行の幻獣士の問題を深刻に受け止めていた。
ファンタラーの周辺で幻獣使いの問題が起きており、この都市の人間が関わっているだろうと推測していたからだ。
偽幻獣士の一派が実験の末にたどり着いた方法で唯一正しいのは、迷いの森の中で契約をした事だけで、それ以外は条件が揃っただけ。
そもそも本契約が成功するのは幻獣との信頼関係が出来ているか、絶対服従で逆らう気がないかで、どちらでもなければ契約の失敗に終わる事が多い。
ただでさえ危険な迷いの森で契約の儀式をする事自体が危険度が上がり、成功率が低いために実験してくれる者が集められず拡がらなかった。
今までの粛正に引っ掛からなかったのは、方法そのものが幻獣に危害を加える方法ではなかったためで、幻獣士で大粛正にあった者は密猟に関係した者だけだった。
「納得したなら続けるゾ。
今後は迷いの森での素材が欲しい場合には、幻獣士ギルドに依頼となる。
もちろん今まで通りに買うことも出来るらしいが、我々のように大量に必要な場合には、依頼一択だと思う」
「出入りの商人や馴染みの冒険者からは、今の量が入らないのですか?」
「皆も噂である程度聞いていると思うが、正規の幻獣士は迷いの森を安全に行き来出来る。
そして今までより多くの素材を持ち帰る事が出来る様になる。
但し同行者は今まで通りの量だし、大儲けしようと必要以上の量を持ち出そうとしても駄目らしい」
「どういうことですか?」
「今後の事もあり正式に幻獣士ギルドへ問い合わせをしました。
先程の議長の言葉の補足も兼ねますが、使用に関する規定の書類で申請して依頼をすると、目的が戦争や犯罪に関わらなければ手に入れる事が出来ます。
但し必要以上に多くの素材の依頼を繰り返すと監査が入り、依頼の受付を中止になり、横流しが発覚したら申請者だけでなく、横流しに関係した全ての者が処罰されるそうです」
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