幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第7章

当惑

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 アルバはこの状況を招いた相手の第一声に困惑した。薄紫色の精霊達は苛立ちからの怒りに我を忘れさせた当事者である。
我を忘れてしまい追いかけた事は自分の落ち度だけど、それを何もなかったかの様に心配されているからだ。
 正直に答えただけで良いのか、それとも先程の件を抗議した方が良いのかと。
 でもなんとなく感じる心配する気配に素直に答えてしまった。
《体に痛いところはないよ》
《ヨカッタ》
《ヨカッタネ、アラクネ》
 アルバを治療した蜘蛛はいつの間にか背中の上に移動していて嬉しそうに体を振るわせていた。
《イタクナイナライコウ》
《イコウ》
《ミンナイル》
《マッテル》
《えっ、リオや僕の仲間がいるの?》
《チガウ》
《ヤミヤヒカリ》
《セイレイタチ》
《イッパイ》
仲間に会えると期待したが違ったと分かり落ち込むアルバ。
《ココナイ》
《ナニモナイ》
 改めて周りを見渡すと広い通路の様な場所で、前方は緩やかに降っており、後方はカープして先はあまり見えないが、今いる場所を含めて平らになっているが、石以外には何もなく生き物の気配も音もない。
《マッテルヨ》
《ハヤクハヤク》
《イコウヨ》
 1体が扇動する様に動き、振り返る様にくるりと回って止まる。
 続くように1体、2体と同様な動きを見せアルバを通路の先へと促す様な動きを見せる。
 落ちる前ほど強引な動きではなく、でも誘う様な動きに諦めた様に着いていく事にした。
 着いて来たアルバに闇の小精霊は喜びを表す様にくるくると淡い紫色の光が舞い踊る。
そのままスーッと集まって先程の方向へと進む。下り切った先にはいくつかの横道がある様で、その内の1つに小精霊達が入っていく。さほど歩くことなく通路が終わり広い場所に出た。そこには沢山の闇の精霊と幻獣が居た。
《ツレテキタ》
どうやら幼生期の幻獣が集まっている様で、新たに来た遊び仲間を歓迎している様な雰囲気だった。
驚いて立ち止まっていると突進して来たのは好奇心旺盛で、悪戯好きの妖精と物怖じしない犬狼系の聖獣や魔獣と自分より大きな生き物にも怯まない蛇系や昆虫など一部の者達だった。
特に犬系の魔獣は体当たりするかの様な勢いで先頭になって迫って来て、足の周囲にまとわり付かれた。
続いて狼系の聖獣や魔蜂達が周囲を囲んで来た。
驚きが収まって動こうとしても、今度は物理的に身動きが出来ない。
気が付くと蛇系や蜂以外の魔虫系も輪に加わっていた。
《ネェ、キミハニンゲントイタノ?》
《人間ッテ、怖インダヨネ?》
犬系魔物、狼系聖獣達が興奮して念話して来た。あまりの勢いに圧倒され黙っていたら
《ヨクガンバッタネ》
と足元から声がした。紫色の蛇がアルバの前足の前で首を上げていた。
アルバはどうしたらいいのか途方にくれて佇んでいた。

ここにいるのは変異体の幼体や希少種の中でも人族に生態や生息地を知られていない種の幼体や若い個体だった。
変異体は群れで行動するタイプ以外は異質とみなされ、親個体の地位や力が強くなければ捨てられたり、最悪の場合には同族に殺されてしまう。そのため独りになった際に闇の精霊王が近くのダンジョンに招く。
但しあくまでも行き先を提示し選択肢を与えるだけで保護する訳ではない。
同種から馴染めない個体を離すことで生存する可能性に賭けるためだった。
変異体の多くは幼体の間に命を落とす。なんらかの体の変化のせいで、環境に対応出来なかったり、特定の条件下や特定の餌がないと生きられない者や内臓や体力が弱くて成長が出来ないなど様々な問題がある。
その代わりに元の種族より知性が優れていたり、本来ならないはずの属性や能力を持っている事が多いため、成体まで成長出来れば元の種族より長生きする。
ただ以前はこんな風に大所帯ではなかった。
光と闇の精霊王が管轄する迷いの森やダンジョンなどから、幻獣士が誕生した直後に移動させたのだ。
共存出来る環境のグループ毎に数カ所この様な場所があるが、光と闇の精霊王や直接関わった大精霊達以外は知らされていなかった。
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