幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第7章

懸念

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 闇の大精霊を呼びに行った者が帰って来た。だが一緒ではなかった。
《居ナカッタノカ?》
《イエ、人間ノ暴挙ニヨッテ落盤シタ場所ニ居テ怪我ヲシタ者ト一緒ニイルノヲ知ラセルタメニ戻リマシタ》
《落盤ダト!?》
《人間達ガ迂回ヲセズ通ルタメニ魔法デ爆破シタ影響デ、脆カッタ箇所ガ崩レタ様デス》
《光ノ同胞ハ救助ノタメニ居タノカ?》
《未ダ小精霊ヤ中精霊シカ居ラズ、苦痛ヲ和ラゲルタメ闇ノオ方ガ力ヲ奮ッテオラレマシタ。間モナク到着スルカラ引キ継ギ次第ト》
《ゴ苦労ダッタ。戻ッテ此方ヘ案内ヲ頼ム》
《承知シマシタ》
 闇の大精霊を呼ぶのは他の属性では分からないほどの呪いや呪具がないかを確認して欲しかったから。光である自分が解呪出来る呪いならば見つけられても、呪いを司る闇の高位精霊や従えた者達が隠匿した場合には分からないことがあるので念の為に。
 アルバがそこにいる者達にリオことレナードとどんな所に行き、どんな事を話すのを聞いて期待に目を輝かせている姿は微笑ましい。そして話しを過剰な期待のせいでの誇張があるのを差し引いても、嘘や強制された様子が全くみられず、全て本当の事の様に聞こえる。
 我主人ルーチェ様や主人の盟友であるダーストニ様の言う様な残忍で強欲なだけの者達しか居ないという人間への認識は間違っているのだろうかという疑問に捉われ始めた。
 もちろん大粛正で多くの人間や人間の国が相応の罰を受けた事は同胞でもある4属性の者達から聞いており、その人間達がか弱き幻獣達や幻獣になる前やなれない変異種達を酷い扱いをしていたことを聞いて一緒に憤慨し、粛正に必要な時には同族の力も奮ったし、傷付いた者の心以外の傷は治せる物は全て治療したと聞いている。
 その協力していた人族に人間が居たとは聞いてはいたものの、光と闇の精霊全ては他の義理堅いエルフ族や勇敢で誠実な竜人族など精霊や妖精を敬う種族だけに違いない、もしくは見た目は人間でも獣人だったり、過去に他の種族の血が混ざった者や人間でも捨てられて他の種族に育てられたなど訳ありの者だろうと話し合っていた。
 だがアルバという麒麟の幻獣の言葉が真に正しければ、人間でも我々と共存出来る者達が少なからず存在するということになる。
だがどうしても光の大精霊は信じられなかった。我主人の属性を受けし者達の末路を聞かされ続け、実際に悪行を目にした事もあったからだ。
 闇の属性の者に至っては、文明が滅んでも尚残る呪いの呪具や魔道具などを作り出し、人族が遺物として保管したり、未だ使用する者共がいると聞き及んでいる。
長命で賢い人間以外の人族が成した事なら当然の事だと理解出来るが、欲深き人間が成した事とはどれだけ聞いていても納得出来なかった。
 ここにいる生まれて間もなく経験が浅い者達はすっかり麒麟の言うことを信じてしまい、麒麟の主人の人間に会いたがってしまっている。もしこのまま麒麟が言う水の中精霊が現れこの空間から出てしまえば、信じやすい小さき者達は増えてしまう。
 流石に大精霊が居なけれこの特別なダンジョンからは出ることは出来ないが、それでも我々同胞を穢され使い捨て続けた憎き人間を信じた事が我主人やダーストニ様に現時点で知られてしまえばその者達が罰を受けてしまう。
どうしたら良いのか考え続けた。
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