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第一章
プロローグ
しおりを挟む私の名前はメリ。
国で一番大きな森の近くに点在する小さな村の1つポポラに住んでる。ここは王宮薬師って言う人達と同じくらいのすごい腕を持っているって噂される薬師のおばあさんの家。村で一番森に近い少し離れたところで、裏庭には栽培出来る薬草畑と、虫や魔物が嫌う臭いのある植物が植っている。
私とお母さんはこの村の手前の街道の途中で倒れていたのを、おばあさんが見つけてくれて助けてくれた。しかも仕事を手伝う事を条件に住み込みで面倒を見てくれたの。お仕事には厳しいけどすごく優しいの。
私が8才になる年までの6年間は大変なこともあったけど村の人達は優しいし、薬師のスキルや資格がなくても出来る日常的に使う傷の軟膏や簡単な血止めなどを教えてもらったりとすごく毎日が充実してた。他にも早朝に薬草や素材になる物を森の入り口付近に採取しに行くのも私のお仕事だったよ。お母さんはおばあさんの跡を継ぐつもりで一生懸命お手伝いをしていたよ。
その幸せも1年前に村に帰って来た薬師のおばあさんの息子さんと、そのお友達が村に帰って来るまでだった。嫌がる母親にしつこく求婚し、力づくで言うことを聞かせ様としたこともあった。3ヶ月前に流行り病になり寝込む様になると、今度は私を行儀見習いで街に行かせようと言って来た。その後お母さんの分に取っておいた薬を、息子さんが勝手に持ち出して他の町の人に売っちゃったからお母さんは助からなかった。
けどそのお礼にとたくさんその町からここで手に入らない素材を手配してもらえた。だから納品も仕入れも代わりにやってもらえたんだけど、とうとう素材がなくなってしまって、おばあさんが直接仕入れしなきゃいけない依頼が来た。
「それじゃあ行って来るね。戸締りはしっかりね」
「うん、いってらっしゃい」
薬師のおばあさんはこれから馬車で3日程かかる大きな街まで仕事に出かけるの。半年前まではお母さんの仕事だった。隣の町だったら一緒に連れて行ってくれるけど、今度行く街は人が多くて悪い人もたくさんいて危ないし、薬師しか入れない場所があって一人になっちゃう時があるから駄目なんだって。だからお留守番。
でも私は出発前日のおつかいの途中で聞いてしまったの。お友達の家で寝泊まりしている息子さんとお友達が、お昼なのにお酒を飲んで大声で笑いながら話している内容を。
『ババァが居ない間にあの娘を売ってしまおう』なんて言っていたことを。行儀見習い先が急いでいるからと留守中に誘い出すという作戦らしい。前々から行儀見習いというのは口実で、始めから奴隷として売るつもりだったんじゃない!
10才になると教会や役所で『スキル授与』の行儀を受けることが決まってる。スキルは生まれ持った才能や伸びしろのある能力、熟練度などで授かることが多いため、家業がある者は小さな頃から手伝いをさせるの。子供の将来はスキル授与の時の経験値によって左右されることが多いんだって。
それを悪用して孤児やお金に困ってる家の子供を10才前に買って召使や雑用をさせ、スキルによって待遇を変えられる。良いスキルじゃないと奴隷の様に雑用係にされて使い捨てられ、お金になるスキルなら使い潰されるか、別の人に売られたりとどちらにしても自由や未来がない。
あの人達が言うにはお母さんは美人だから私も美人になるだろうと。薬師や家事の手伝いをしているからどちらかのスキルの可能性もあるが、違ったら容姿を活かした職場もあるから高く買ってもらえそうだなどと言ってた。
私はそれを聞いて見つかる前に走って家に帰った。おばあさんは旅の支度で忙しくて、私がずっと下を向いたままだったのを気付いてなかった。おばあさんは私が街で危険な目に遭わせたくなくて留守番をさせたいと知っている。酔っている時の話しを鵜呑みにしておばあさんを困らせたくない。それに私自身さっき聞いたことが怖くてちゃんと話せる自信がない。
だから夜中に目が覚めてしまった時に逃げるための準備をした。毛布とか食べ物などおばあさんが出かけた後にしか用意出来ない物以外を。
私は見えなくなくなるまで手を振ると『さよなら、今までありがとうございました』と小さく呟いて扉を閉めた。
その日の夜、薬師の家にいた孤児の少女は村から消えた。
薬師が出発した翌々日に少女を心配して様子を見に隣人が、作り過ぎたと言う口実でお裾分けしようと昼頃に訪れた。ちょうど手紙を届けに来た配達人がいて、昨日もこの時間に不在だったと聞いて少女が居ない事が発覚した。
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