物欲の赴くままに

三々九ユーエー

文字の大きさ
9 / 10

八ページ目

しおりを挟む
 まさか【エスカ式自動重兵人形・壁剣将軍ジルラド】―ジルラド―が突然命令を無視して戦いだすとは……。無事にあの化け蜘蛛を倒すことができたからよかったものの、なにかが間違ったら取り返しのつかないことになっていたところだ。
 現に他の自動人形を使って手助けをしなかったら、そのまま物量に負けてしまっていたかもしれない。

 ともあれ、ジルラドの戦闘力は化け蜘蛛を軽く上回っていたようで、タイマンに持ち込めばケリはあっさりとついてしまった。とどめを刺す前に化け蜘蛛が何かを言ったようだが、生憎距離が離れていたため、その内容は分からなかった。
 当のジルラドと言えば、化け蜘蛛の頭を斬り落とした直後にまた大人しくなったあたり、個人的な恨みでもあったのかもしれない。

 化け蜘蛛はジルラドによって倒され、また他の備える森蜘蛛プレア・フォーダたちも自動人形たちによって殲滅することができた。ようやく待ちに待った素材回収の時間だ。

――――――――――
鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダの斑甲殻】を収集しました
鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダの大牙】を収集しました
鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダの複魔眼】を収集しました
鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダの怪脚】を収集しました
鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダの紫珀毒】を収集しました
【エスカ軍魔導長の死形相デスマスク】を収集しました
――――――――――

 今の化け蜘蛛は鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダという名称だったらしい。他の魔物と名前の付き方が違うことから、この森に生息する魔物の中でも特別な個体だったのかもしれない。
 さらにジルラドによって切り離された人間に似た頭部に至ってはなんと【エスカ軍魔導長】ときたから驚きだ。以前手に入れた似たような物品といったら、無論ジルラドや他の自動人形をはじめとする【エスカ軍式シリーズ】である。
 ただ、先ほどのジルラドの様子を見る限り、同じ国の出身?の割にはあまり仲が良かったわけではないと思われた。それか、ジルラドの暴走の原因は、こちらを見下ろすような体勢で大樹から半身を生やしたあの女性像だろうか。

 道中の備える森蜘蛛プレア・フォーダの残骸を回収しながら、先ほど鳴哭せし啜る怪蜘蛛リッチープ・モンパーダが現れた大樹に近づいていく。ジルラドは後ろを大人しくついてきたが、大樹に触れようと手を伸ばしたところで、背後から不自然な金属が擦れる音が聞こえてきた。
 背後を振り向いてもジルラドは微動だにしないが、その右手には先ほどから大剣が握られており、その気になればこちらの首などそこらの魔物のそれよりもよほど容易く斬り飛ばされてしまうだろう。

 まあ、そんなことはどうでもいいので、とりあえず全書を使って女性像ごと大樹を回収する。

――――――――――
【ガシアの古大樹】を収集しました
【眠りし悲愛姫の樹棺】を収集しました
――――――――――

 大樹の方は予想通りといえば予想通りだが、女性像の方は如何にも事情がありそうな物品である。ここで手に入れた物品から色々と考察してもよいのだが、それよりも新たに現れた生成候補を作ってみる方が早いように思われる。 

――――――――――
【悲愛姫の樹骸】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
眠りし悲愛姫の樹棺 100%/100%
時森の葉麗衣 0%/100%
森霊の樹冠 0%/100%
瘴気 300%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
――――――――――

 見たところ生成に必要な物品は、この森の素材を使って作れそうだ。だが、双方ともまだ生成候補ですら見たことがないので、引き続き森の探索を続ける必要があるだろう。

 そんなことを考えているうちに、だんだんと日が暮れてきた。ここまで拠点から結構な距離を移動してきたうえに、自分はほとんど参加していないものの魔物との戦闘もあったため、思っていたより時間が経っていたようである。
 日が暮れ始めてからあたりが暗くなるまではあっという間だ。幸い、古都の倉庫に大量に置かれていた【エンゴの淡灯火】を全書にしまっていたので、それを自動人形たちにそれを持たせて明かりを確保する。

 さて、これからどうしたものか。拠点に戻ってもいいのだが、如何せん帰路はまだ慣れない森の中だ。魔物が徘徊する森を夜通し歩くというのも遠慮したいところである。それとは逆に今いる空き地から先に進んでもいいのだが、それも結局は森の中を進むことになってしまう。

 なので、今日は一旦この空き地で休むことにした。寝具等はランプと一緒に全書にしまっていたのだが、ちょうど中継拠点が欲しいと思っていたところなので、できるところまで拠点としてこの広場を整備してみることにする。
 拠点を作るための準備などしていなかったのだが、全書を捲っているといくつか使えそうなものを見つけた。

――――――――――
【時森の毒蜜柵】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
ガシアの成樹 3000%/100%
ガシアの毒蜜 2500%/100%
ハクセングサ 4000%/100%
腐湧水 1200%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――

――――――――――
【葉隠れの泊套】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
揺れる木立クエント・グブの小枝 100%/100%
揺れる木立クエント・グブの若葉 150%/100%
揺れる木立クエント・グブの粘液 100%/100%
アイノキ 1000%/100%
ハリカエデの針葉 200%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――

――――――――――
【喀血玉】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
カケツダケ 500%/100%
ハゼダケ 350%/100%
備える森蜘蛛プレア・フォーダの白糸 400%/100%
生成を行いますか?【はい/いいえ】
――――――――――

 それぞれ拠点の防衛、心ばかりの宿、万一魔物に襲われた場合の反撃手段といったところだろう。
 試しに一つずつ作ってみて全書で性能を確認してみるが、なかなか使い勝手もよさそうである。

――――――――――
【時森の毒蜜柵】
分類:魔具・設備
等級:D-
権能:【獣除】【弛毒】
詳細:ガシアの毒木材を使用した木柵。鋭利に削られた先端には毒蜜が染み込んでいる他、木材に刻まれたルーンは獣や魔物を遠ざける作用を持つ。
――――――――――

――――――――――
【葉隠れの泊套】
分類:魔具・設備
等級:D-
詳細:ガミルの森の植物素材を利用した迷彩模様のテント。風通しがよく、周囲の様子を確認しながら休むことができる。
――――――――――

――――――――――
【喀血玉】
分類:投擲武器・仕掛玉
等級:D-
権能:【散胞】
詳細:カケツダケの胞子とハゼタケを混合した粉末を充填した糸玉。落下した衝撃で炸裂し、拡散した胞子が周囲の生物を侵す。
――――――――――

 目の前に生成された【時森の毒蜜柵】をじっくりと見てみる。幅は四メートル、高さは二メートル強ほどだろうか。材料はやはりガシアの木材が使われているようで、下から突き上げるようにして三層の巨大な木杭が重なっているような構造だ。それぞれの杭の先端は琥珀色に染まっているが、これは全書の説明の通り毒蜜によるものなのだろう。
 さらに近づいて見てみると、すべての木材に細かな文様のようなものが刻まれていることが分かった。これがおそらく全書の説明にあった”ルーン”なのだろう。

 まだどれほどの効果があるのかは分からないが、これまで生成したものを見る限りいくらかの効き目は期待してもいいだろう。とりあえず十個ほど作り、円状に配置していく。なかなか隙間がないように設置するのは難しいので、人ひとりが通れるくらいの隙間を残しておくことにした。この柵の内側に【葉隠れの泊套】を設置し、周囲を自動人形たちに見張ってもらいながら夜を越す、という計画である。
 自動人形たちに疲労というものがないことはこれまでの行動から確認済みだし、森に入ってからの戦闘の様子を見る限り魔物たちに苦戦するということもないだろう。

 思いのほかあっさりと準備が終わってしまったので、全書から【黒羊の毛長椅子】を取り出し少し寛ぐことにする。干し肉と果実も取り出し、のんびりと星を見ながら食事と洒落こもう……と思ったのだが、柵の隙間から淡く発光する球体がちらりと見えた。自動人形たちに持たせたランプとも違うその灯が気になり柵の外に出てみると、ちょうど自動人形の一体がその灯に攻撃を加えるところだった。

 灯に相対しているのは【エスカ式自動槍歩兵人形】だ。自動人形は鋭い踏み込みとともに手に持つ槍を灯に突きこむが、灯はそれをひらりと躱すと、自身から枝のような触手を伸ばし槍に絡みついた。
 だが、それ以上のことはできないようで、槍歩兵が絡みついた枝と槍ごと地面にたたきつけると、灯は数度弱く明滅した後消えてしまう。

 灯が消えたところを確認してみると、様々な色の葉が寄り集まった集合体が転がっていた。

――――――――――
擦れる葉玉スクラ・リールの緑葉】を収集しました
擦れる葉玉スクラ・リールの紅葉】を収集しました
擦れる葉玉スクラ・リールの枯葉】を収集しました
擦れる葉玉スクラ・リールの枝指】を収集しました
――――――――――

 どうやら今の灯は【擦れる葉玉スクラ・リール】という魔物だったらしい。自動人形に叩きつけられるだけで倒せるあたり、耐久力などはそれほどないようだが、その攻撃方法は今までの魔物とはずいぶんと違うように見えた。もしかしたら少し注意が必要かもしれない。
 とはいえ、新たな物品を手に入れることができたのは僥倖だ。しかも目的の物品についての生成候補も確認することができた。

――――――――――
【時森の葉麗衣】を生成します
以下の物品を消費する必要があります
擦れる葉玉スクラ・リールの紅葉 5%/100%
擦れる葉玉スクラ・リールの枯葉 10%/100%
捲れる樹皮タン・バクの黒樹皮 0%/100%
泣咽せし這う奇蛇スクシグ・スタネックの腰鱗殻 0%/100%
メイテイソウカの大花弁 0%/100%
物品が不足しているため、生成を行えません
――――――――――

 生成候補が現れたのはいいのだが、足りない素材ばかりだし半分は手に入れる算段すら思いつかない。だが、そういった素材が存在すると知ることができたのは幸いだった。これから探索を続ける意欲も増すというものである。

 さて、思わぬ戦果が手に入ったが、そろそろ休むとしよう。生成したばかりの【葉隠れの泊套】でなら、一晩くらいならなかなか快適に過ごせそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...