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異譚~ケニスの憂慮~
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「私以外の大切な人を守って。それが私の最後の願い……」
深く濃い霧の中に揺蕩うような、頼りなくおぼろげな意識と記憶の中で、その言葉だけが自己を形どるための依り代であるように感じる。
かつては屈強な肉体と超絶な技巧でもって建国以来最強の将軍と謳われたケニス・サルファードは、はっきりとしない意識の中、自らの命令に従わない己の身体を動かしながら、蜘蛛の糸のようにか細い記憶をたどろうとしていた。
記憶にあるのは、悲壮な決意を湛えた一人の女性と、彼女を止めることはおろか手助けすることさえできない無力な自分だけだ。そこに至る過程を思い出すことはできないが、空白の記憶に思いをはせるだけだ全身を焼くような後悔に苛まれる。
ケニスが理解している限りでは、今自分はとある男の命令に逆らえない状態らしい。意識はかろうじてあるものの、己の身体はすでに失われており、なぜかかつて愛用していた自分の武具で体が構成されているようだった。
また、他に自分と同じような状態の兵士が数人いるが、その兵士たちは自分のような意識はないようだ。かつて行っていたような周囲への命令はなぜか自然に行え、さらに兵士たちはそれに従うものの、それ以上のことはできそうにない。
己に命令を発しているのは、底知れぬ嫌悪感を感じる人族の見た目をした男だと思われた。この男が自分の今の境遇にどれほど関与しているかは分からないが、今はその命令に従うしかない。
男は無作為に森の中を進んでいるようだが、時折立ち止まってはケニスたちが倒した魔物の死骸や植物などを不明な方法で回収している。その際に顔に浮かべるニヤけ顔は、今のケニスをもってして不快に感じるものだった。
やがて奇怪な弓兵二体が合流したころ、ケニスたちの眼前に大樹が立ちはだかる。その大樹の幹はかなり太く、大の大人十人が互いの手をつなぎ、ようやく幹を囲えそうなほどだ。
そんな大樹の太枝の一本から、これまで遭遇した蜘蛛のどれよりも巨大な化け蜘蛛が糸を伝ってゆっくりと現れた。
体色こそこれまでの【|備える森蜘蛛(プレア・フォーダ)】と近いものの、その体長はおよそ四、五倍ほどだろうか。口に付いた牙からは紫と琥珀が混ざったような色の毒液がしたたり落ち、八つの複眼はルビーのような真紅に染まっている。だが、最も異質なのは蜘蛛の頭と胴体の接合部分に生えるようにして備わっている人間の上半身だった。
遠目から見ればそれは人族の男性のように見えたが、その大きさは蜘蛛のサイズ相応になっているため、巨人と見まがうほどだ。さらに、人間部分の顔面には不規則に複眼や牙が取ってつけたように生えており、生気がすべて抜け落ちたかのような表情が貼り付けられている。
化け蜘蛛はケニスたちを一目見た瞬間に敵と認識したようだ。人間とも獣ともつかない絶叫を上げて、両腕に抱えられたガシアの成樹を振り回す。
だが、ケニスの視線は化け蜘蛛の出現前から一点に固定されたままだった。その視線は蜘蛛の後ろの大樹、さらにはその幹の中心部分に向いている。そこには、大樹に半ば飲み込まれるようにして埋まった女性の上半身があった。化け蜘蛛の上半身とは違い、その大きさは一般的な人間の女性と同様で、表情は眠っているかのように安らかだ。女性の肌の質感は人の肌のようにも、樹皮のようにも見えるが、血が通っているそれとは似つかないものだ。
そして、その女性の顔は、ケニスの記憶の中にいる女性と重なっていた。その女性を見た瞬間、言葉にできない強い感情と化け蜘蛛に対する激しい憎しみが燃え上がる。おぼろげな意識の中でもはっきりと感じられる憎悪に身をゆだね、ケニスは駆け出した。
化け蜘蛛の叫びに呼応するように周囲の森から森蜘蛛が湧き出してくるが、最早眼中にも入らない。近づいてくる森蜘蛛は大剣を振り回し当たるを幸いに弾き飛ばしながら、化け蜘蛛に一直線に向かっていく。その速度は全身鎧の姿からは想像もできないほど素早いものだったが、両者の手の中にある武器のリーチの差から必然的に先にケニスが敵の攻撃範囲に入ることとなった。
化け蜘蛛は直前まで何の感情も感じさせなかったその表情を突如憤怒のそれに変え、腕に抱える成樹を横なぎにふるった。葉も枝もそのままの成樹の重量は相当な重量なはずだが、化け蜘蛛はまるで小枝を扱うかのような気安さでケニスを狙う。
だが、ケニスはその強烈な一撃を、大剣を振るうことで真っ正面から受け止めた。大剣と成樹が衝突するとともに木っ端が弾け、ケニスの巨体が成樹に押し戻される。
地面に轍を作りながら圧力に耐えるケニスの身体が、三メートルほど後退したところで止まった。ケニスは怯むことなく幹に半ばまで食い込んだ大剣を力任せに引き抜き、再び化け蜘蛛に向かって駆け出す。
あまり武器の取り回しに慣れていないのか、化け蜘蛛が再び成樹を振るうが僅かに逸れてケニスの身体を捉えることができない。
森蜘蛛を蹴散らしながら化け蜘蛛のもとに到達したケニスは、最も前にある右脚に向けて剣を振るった。一抱え程の太さがありそうな化け蜘蛛の脚に剣が食い込み、そのまま胴体から切り離す。
「イギャアアアアア!!!」
痛みに呻いているのか、歪な人面に付いた口から聞くに堪えない醜悪な叫びをあげる化け蜘蛛。化け蜘蛛は成樹を滅多矢鱈に振り回しながら、残った脚でケニスから離れようとする。さらに親玉の危険を察知したのだろう、周囲にいるほとんどの森蜘蛛がケニスに向けて殺到した。
最初の数体は退けていたケニスだったが、やがて捌ききれなくなった森蜘蛛たちに埋もれてしまう。森蜘蛛の攻撃力ではケニスの鎧を突破できないためダメージは少ないが、山のように積み重なった森蜘蛛たちの重さで身動きが取れなくなってしまった。
なんとか森蜘蛛たちを撃退しようと身をよじるケニスだが森蜘蛛の数は増えるばかりでついには視界すべてが森蜘蛛に覆われてしまう。大剣も満足に振るえない体勢のケニスだったが、突如後方の森蜘蛛たちが何かに弾き飛ばされた。それによってできた包囲網の穴を起点に大剣を振り回し、群がっていた森蜘蛛たちを蹴散らす。
ケニスを森蜘蛛の大群から救い出したのは、ほかの自動人形たちだった。先ほどまでいた五体の自動人形に加えて、さらに五体の剣や槍を持つ自動人形が森蜘蛛に攻撃を加えている。
おそらく、また例の男が白い本から自動人形たちを出したのだろう。その男は先ほどから同じ場所に立っており、こちらの戦況を伺っているようだ。自分の近くには二体の別の自動人形を置いているあたり、抜け目がない。
自分は傍観しているだけというところは気に食わないが、今は増援に感謝しなければならない。自動人形たちの援護を受けて、ケニスは再度化け蜘蛛に向かう。
先ほどと同じように化け蜘蛛は成樹を振るうが、脚が一本ないせいか、その動きは先ほどと比べてはるかに精彩を欠いたものだった。軽く身をひるがえすことでその攻撃を避けたケニスは、次は左の前脚を狙う。
「ガガギ!」
化け蜘蛛も同じ手は食わないと言うように、大剣を握るケニスの腕を狙って巨大な牙を突きだてようとする。禍々しい色の毒液が滴る牙は、ナイフほどの大きさがあり、並の人間の腕なら一噛みで食い千切られるだろう。
しかし、ケニスは化け蜘蛛の動きを察知した瞬間、左手を大剣から離しそのまま化け蜘蛛の口腔に突きこんだ。突然の行動に化け蜘蛛の動きが止まるのを見計らい、ケニスは残った右手で大剣を逆手に持ち帰る。
そして、右手に握った大剣を複眼が備わる化け蜘蛛の顔に叩きつけた。その一撃により、化け蜘蛛の複眼の半分が潰れ、ケニスの左手が咥えられた口もほぼ断ち切られる。
その隙にケニスはもう一度大剣を両手で握りなおし、さらに二本の脚を切り飛ばした。それにより巨体を支えることが難しくなった化け蜘蛛の状態が崩れ、上半身部分がケニスの目の前に下りてくる。
「オオオ……ゲ、ゲニズ……マモ……モ……」
初めて化け蜘蛛が口にした意味がある言葉は、驚いたことにケニスの名前だった。だがそれを聞いたケニスの脳裏には、なぜかとある人間の名前が浮かぶ。
ーさらばだ、サイカンー
口にはせずともそう呟いたケニスは、一閃のもとに化け蜘蛛の頭を斬り飛ばした。
深く濃い霧の中に揺蕩うような、頼りなくおぼろげな意識と記憶の中で、その言葉だけが自己を形どるための依り代であるように感じる。
かつては屈強な肉体と超絶な技巧でもって建国以来最強の将軍と謳われたケニス・サルファードは、はっきりとしない意識の中、自らの命令に従わない己の身体を動かしながら、蜘蛛の糸のようにか細い記憶をたどろうとしていた。
記憶にあるのは、悲壮な決意を湛えた一人の女性と、彼女を止めることはおろか手助けすることさえできない無力な自分だけだ。そこに至る過程を思い出すことはできないが、空白の記憶に思いをはせるだけだ全身を焼くような後悔に苛まれる。
ケニスが理解している限りでは、今自分はとある男の命令に逆らえない状態らしい。意識はかろうじてあるものの、己の身体はすでに失われており、なぜかかつて愛用していた自分の武具で体が構成されているようだった。
また、他に自分と同じような状態の兵士が数人いるが、その兵士たちは自分のような意識はないようだ。かつて行っていたような周囲への命令はなぜか自然に行え、さらに兵士たちはそれに従うものの、それ以上のことはできそうにない。
己に命令を発しているのは、底知れぬ嫌悪感を感じる人族の見た目をした男だと思われた。この男が自分の今の境遇にどれほど関与しているかは分からないが、今はその命令に従うしかない。
男は無作為に森の中を進んでいるようだが、時折立ち止まってはケニスたちが倒した魔物の死骸や植物などを不明な方法で回収している。その際に顔に浮かべるニヤけ顔は、今のケニスをもってして不快に感じるものだった。
やがて奇怪な弓兵二体が合流したころ、ケニスたちの眼前に大樹が立ちはだかる。その大樹の幹はかなり太く、大の大人十人が互いの手をつなぎ、ようやく幹を囲えそうなほどだ。
そんな大樹の太枝の一本から、これまで遭遇した蜘蛛のどれよりも巨大な化け蜘蛛が糸を伝ってゆっくりと現れた。
体色こそこれまでの【|備える森蜘蛛(プレア・フォーダ)】と近いものの、その体長はおよそ四、五倍ほどだろうか。口に付いた牙からは紫と琥珀が混ざったような色の毒液がしたたり落ち、八つの複眼はルビーのような真紅に染まっている。だが、最も異質なのは蜘蛛の頭と胴体の接合部分に生えるようにして備わっている人間の上半身だった。
遠目から見ればそれは人族の男性のように見えたが、その大きさは蜘蛛のサイズ相応になっているため、巨人と見まがうほどだ。さらに、人間部分の顔面には不規則に複眼や牙が取ってつけたように生えており、生気がすべて抜け落ちたかのような表情が貼り付けられている。
化け蜘蛛はケニスたちを一目見た瞬間に敵と認識したようだ。人間とも獣ともつかない絶叫を上げて、両腕に抱えられたガシアの成樹を振り回す。
だが、ケニスの視線は化け蜘蛛の出現前から一点に固定されたままだった。その視線は蜘蛛の後ろの大樹、さらにはその幹の中心部分に向いている。そこには、大樹に半ば飲み込まれるようにして埋まった女性の上半身があった。化け蜘蛛の上半身とは違い、その大きさは一般的な人間の女性と同様で、表情は眠っているかのように安らかだ。女性の肌の質感は人の肌のようにも、樹皮のようにも見えるが、血が通っているそれとは似つかないものだ。
そして、その女性の顔は、ケニスの記憶の中にいる女性と重なっていた。その女性を見た瞬間、言葉にできない強い感情と化け蜘蛛に対する激しい憎しみが燃え上がる。おぼろげな意識の中でもはっきりと感じられる憎悪に身をゆだね、ケニスは駆け出した。
化け蜘蛛の叫びに呼応するように周囲の森から森蜘蛛が湧き出してくるが、最早眼中にも入らない。近づいてくる森蜘蛛は大剣を振り回し当たるを幸いに弾き飛ばしながら、化け蜘蛛に一直線に向かっていく。その速度は全身鎧の姿からは想像もできないほど素早いものだったが、両者の手の中にある武器のリーチの差から必然的に先にケニスが敵の攻撃範囲に入ることとなった。
化け蜘蛛は直前まで何の感情も感じさせなかったその表情を突如憤怒のそれに変え、腕に抱える成樹を横なぎにふるった。葉も枝もそのままの成樹の重量は相当な重量なはずだが、化け蜘蛛はまるで小枝を扱うかのような気安さでケニスを狙う。
だが、ケニスはその強烈な一撃を、大剣を振るうことで真っ正面から受け止めた。大剣と成樹が衝突するとともに木っ端が弾け、ケニスの巨体が成樹に押し戻される。
地面に轍を作りながら圧力に耐えるケニスの身体が、三メートルほど後退したところで止まった。ケニスは怯むことなく幹に半ばまで食い込んだ大剣を力任せに引き抜き、再び化け蜘蛛に向かって駆け出す。
あまり武器の取り回しに慣れていないのか、化け蜘蛛が再び成樹を振るうが僅かに逸れてケニスの身体を捉えることができない。
森蜘蛛を蹴散らしながら化け蜘蛛のもとに到達したケニスは、最も前にある右脚に向けて剣を振るった。一抱え程の太さがありそうな化け蜘蛛の脚に剣が食い込み、そのまま胴体から切り離す。
「イギャアアアアア!!!」
痛みに呻いているのか、歪な人面に付いた口から聞くに堪えない醜悪な叫びをあげる化け蜘蛛。化け蜘蛛は成樹を滅多矢鱈に振り回しながら、残った脚でケニスから離れようとする。さらに親玉の危険を察知したのだろう、周囲にいるほとんどの森蜘蛛がケニスに向けて殺到した。
最初の数体は退けていたケニスだったが、やがて捌ききれなくなった森蜘蛛たちに埋もれてしまう。森蜘蛛の攻撃力ではケニスの鎧を突破できないためダメージは少ないが、山のように積み重なった森蜘蛛たちの重さで身動きが取れなくなってしまった。
なんとか森蜘蛛たちを撃退しようと身をよじるケニスだが森蜘蛛の数は増えるばかりでついには視界すべてが森蜘蛛に覆われてしまう。大剣も満足に振るえない体勢のケニスだったが、突如後方の森蜘蛛たちが何かに弾き飛ばされた。それによってできた包囲網の穴を起点に大剣を振り回し、群がっていた森蜘蛛たちを蹴散らす。
ケニスを森蜘蛛の大群から救い出したのは、ほかの自動人形たちだった。先ほどまでいた五体の自動人形に加えて、さらに五体の剣や槍を持つ自動人形が森蜘蛛に攻撃を加えている。
おそらく、また例の男が白い本から自動人形たちを出したのだろう。その男は先ほどから同じ場所に立っており、こちらの戦況を伺っているようだ。自分の近くには二体の別の自動人形を置いているあたり、抜け目がない。
自分は傍観しているだけというところは気に食わないが、今は増援に感謝しなければならない。自動人形たちの援護を受けて、ケニスは再度化け蜘蛛に向かう。
先ほどと同じように化け蜘蛛は成樹を振るうが、脚が一本ないせいか、その動きは先ほどと比べてはるかに精彩を欠いたものだった。軽く身をひるがえすことでその攻撃を避けたケニスは、次は左の前脚を狙う。
「ガガギ!」
化け蜘蛛も同じ手は食わないと言うように、大剣を握るケニスの腕を狙って巨大な牙を突きだてようとする。禍々しい色の毒液が滴る牙は、ナイフほどの大きさがあり、並の人間の腕なら一噛みで食い千切られるだろう。
しかし、ケニスは化け蜘蛛の動きを察知した瞬間、左手を大剣から離しそのまま化け蜘蛛の口腔に突きこんだ。突然の行動に化け蜘蛛の動きが止まるのを見計らい、ケニスは残った右手で大剣を逆手に持ち帰る。
そして、右手に握った大剣を複眼が備わる化け蜘蛛の顔に叩きつけた。その一撃により、化け蜘蛛の複眼の半分が潰れ、ケニスの左手が咥えられた口もほぼ断ち切られる。
その隙にケニスはもう一度大剣を両手で握りなおし、さらに二本の脚を切り飛ばした。それにより巨体を支えることが難しくなった化け蜘蛛の状態が崩れ、上半身部分がケニスの目の前に下りてくる。
「オオオ……ゲ、ゲニズ……マモ……モ……」
初めて化け蜘蛛が口にした意味がある言葉は、驚いたことにケニスの名前だった。だがそれを聞いたケニスの脳裏には、なぜかとある人間の名前が浮かぶ。
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