世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 それは不思議な感覚だった。地面に足がついているようで、それでいて空中に浮いているような変な感じ。

 意識はあるはずなのに、まるで夢の中を漂っているかのように感覚がハッキリとしていない。

 上も下も分からず、自分の身体の存在すらも感じられないそんな場所で、俺は目覚めた……のだと思う。

(ここ、何処だよ……)

 言葉を発したはずだけど、口が存在していないらしい。短い一言は声になって飛ぶことはなく脳内再生されるだけに終わる。

 ならばと辺りを見回してみれば、視界に入るのは真っ白な空間。多分目も無くなった影響なのだろう。

 瞼を閉じれば真っ暗な世界が広がるというのに、瞳が無くなると見えるのは白一色なんてね。なんとも不思議だ。

「無事、呼び出せたみたいだね」

 解明されてない人体の謎を一つだけ解くことができた優越感に浸ってると、突然声が聞こえてきた。

 方向は……ダメだ。全然把握できない。

「随分今の状態に難儀してるみたいだね。その様子だと、自分の見ている方向も立ち位置も、ボクの居場所も分かってないのかな?」

(何も見えないし、声も四方八方から反響しているようにも聞こえるんだ。こんな状況で場所を特定なんてできないって)

「あぁ、それもそうだね。その身体じゃ無理ないかも」

 依然聞こえてくる謎の声は小さく笑い声を漏らす。

 元から可愛らしかったその声は、おかしそうに笑うと一層可愛らしさを増した気がする……って待て。今、会話が成立したか?

 ついさっき声が出ないことは確認済みなのだから、必然的に俺が誰かと対話することなんて不可能なはずだ。

 だから会話が成立するはずもない……はずなんだけど。まぁ、ものは試しだ。

(えっと、俺の声が聞こえてる感じですか?)

「うん、バッチリ聞こえてるよ~?」

(マジで!?)

「はい、マジです」

(良かった……。俺一人じゃなかった……)

 声音からして女の子。若干幼さを感じる高い声はうるさいとは感じず、むしろ保護欲を湧き立たせられた。

 とはいえ、彼女はこの異質な場所で唯一の対話が可能な存在だ。なんだかここにも詳しそうだし、色々と聞いてみてもいいかも知れないな。

(なぁ。ここって何処なんだ? 目が覚めたら、この空間にいて……身体の感覚もおかしいみたいなんだけど)

「感覚がおかしいのも仕方ないよ。だって、君はんだもん」

(……えっ?)

 彼女の言葉を聞いた瞬間、思わず短い言葉が俺の脳内を埋め尽くした。

 『』。単語にすれば随分と短いそれだけど、実際その状態にある俺としては心穏やかなものではなかった。

(し、死んだって、何かの冗談なんじゃ)

「あれ? もしかして、覚えていないのかな。自分がすでに命を落としてしまったことをさ。――おかしいなぁ。死者は大抵記憶を所持してくるはずなんだけどなぁ……」

 心底不思議そうなトーンで喋る彼女だが、頭で理解できないという点では俺のほうが上手だ。

 何せ、こちらは目が覚めたらわけのわからない場所にいるし、対話可能な相手が現れたと思えば自分はすでに死んでいるなんてことを告げてきているんだ。

 この状況で頭が変にならないほうがおかしい。

 まるで、勝手に話が進んでいく夢に付き合わされている気分だ。

(――と待てよ? つまり夢ってことか?)

 この状況がリアルな夢だというのなら、身体の違和感も自分の『死』さえも説明がつく。――だが、

「ねぇ、何を勝手に納得したようにしているのさ? 言っておくけど、ここは夢でも幻でもないよ? 全ては現実であり、君は本当に死んでいるんだ」

 彼女は俺のそんな解釈を許してはくれないらしい。

 少し不機嫌そうに口にすると、小さくため息を吐いてゆっくりとした口調で言葉を発した。

春崎暁人はるざきあきとくん。君は死んだんだ。これは変えることの出来ない事実であり現実なんだ。その証拠に君はこうして魂だけの状態にあるんだからね」

(魂だけの状態ってことは、この変な感覚も元から身体がないからこそってことか?)

「残念だけどね……」

 確かに、そもそもからして身体が無いのならこの状態にも説明はつく。

 声が発せられないのは口が存在していないからだし。声が全方位から反響して聞こえるようなのも、耳が消えてしまって機能していないからなんだ。

 言われてみれば合点はいく。だけど、そう簡単に自分の死を受け入れたくもないっていうのも本心だった。

「まだ、納得いっていないみたいだね?」

(まぁね。自分がすでに死んでるなんて、簡単に認められるほど弱い身体はしていないからさ)

「そうだね。対して大きな怪我も病気も患ったことのない君だ。身体の丈夫さには自信があるのも分かるよ。だけどね――」

 そこで一度彼女は言葉を区切ると、静かにこう言った。

「人間はそこまで強い生き物では無いんだよ。自分の力を大きく上回る相手には、どう頑張ったって太刀打ちできないものなんだよ」

 瞬間、俺の頭――いや、心の中とでも言うべきなんだろうかな。

 衝撃を受けたような気がした。

 それは熱いようで強い。かと思えば、弱いようで冷たい。言葉としてどう表現すればいいのか分からないそんな衝撃を受けた途端、俺の思考はへと移行する。

 まるで、記憶を無理矢理引っ張り出されているような感じ。事実そうなんだろう。

「さぁ、思い出してごらん。君が――どうしてのか……」
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