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俺がドゥルドゥーを掴んだ際、起きたことは単純。
触れた瞬間、サッカーボール大の身体がグシャグシャにされた紙のように圧縮、丸められたうえで俺の手のひらの中に納まったのだという。
つまり、俺はビー玉程度にまで丸められたドゥルドゥーを力は入れていないにしても掴んだのだ。
結果は先程の通り。
圧縮された身体は俺の強化された握力の前になすすべもなく崩壊し、手のひらの中で崩れ去った。血液と羽毛だけを残して……。
「貴様はいったい何をしたんだ? どうやったらドゥルドゥーがあんな悲惨な目になる?」
「知らないって。俺はただ手を伸ばしただけだ。こうやってな」
腕を前に伸ばす。ただそれだけしかしていないはずなのに、何らかの力が働いたらしく魔物は小さな球体にまで圧縮されて残酷な死を迎えた。
本当に、自分がやったとは思いたくない殺し方だよ。
「ただドゥルドゥーを捕まえようとしただけなのに、どうしてあんな風になるんだよ……」
「ボクが知るか。だが、この分だとテストは失敗だぞ?」
「何で?」
「内容はドゥルドゥーの羽。貴様の手に付着しているのも羽に違いないが、そんなに真っ赤だと判別がつかない。間違いなく不採用だろうな」
淡々と告げてきたゾイトの言葉に、俺は思わず空を仰いだ。
自分の身体が強化されていることで、試験はおろか日常生活に支障が出ることは察していた。
だけど、冒険者になる前につまずくことになるなんて。さすがに考えもしなかったよ。
どんな化け物だって一撃で倒せる気がするほどまで強くなった身体。
だけど、それ故に自分よりもはるかに弱い相手が前に立ちふさがったとき、こうもやりずらくなるなんてね。
「身体の扱いに慣れていないから起きた問題か……」
言いながら地面を軽く小突いていれば、俺を中心にしてできる亀裂。
自分の中では軽く小突いただけなのにこれだ。力の制御が全くできていない証拠だろう。
「――なぁ、ゾイト。お前から見て、さっきの俺の距離の詰め方。もう少しスピード抑えてもドゥルドゥーに追いつくと思うか?」
「……無理だな」
腕を組み、ゾイトは変に気遣うことなく口にした。
「ドゥルドゥーは知っての通り素早い。だから、貴様がさっきの状態から少しでも加減しようものなら逃げられてしまうだろうな」
「やっぱし、そうだよな……」
早歩きくらいでちょうどいいくらいだったんだ。
歩いたんじゃ追いつけないし、かといって走れば追い抜いてしまうか――最悪、轢き殺してしまいかねない。
本当に微妙な速さの魔物だから困りものだ。
「地道に身体に慣れさせていくしかないってことだよな……。できるかな」
苦笑しながらその場で屈伸。
軽く身体を解してから頬を叩いて自分に渇を入れると、俺は近場にあった岩を持ち上げると
「せーのっ!」
掛け声とともに投手。
ゾイトのようにスレスレのところを飛ばすような真似はできなかったが、少なくともドゥルドゥーたちにとっての脅威にはなりえたのだろう。
原っぱの中から数匹のドゥルドゥーが姿を現しダチョウのように走っていくさまが見受けられた。
「……無茶苦茶するな」
「頼んだところでお前は手を貸してくれないだろ? なら、代用品を探してするだけさ」
言うや否や、俺は早歩きでドゥルドゥー達の後を追う。
そうして距離が近づいたところで、再び一瞬で間合いを詰めるんだがあとは手を伸ばしたんだが、今度は触れた瞬間目に見えてドゥルドゥーが吹き飛んだ。
まるで、同じ極同士の磁石が反発を起こすように飛んだ一匹は、地面を何度か弾んだ後に元気よく走って逃げていった。どうやら今回は圧縮せずに済んだみたいだよ。
しかし、軽く触れただけで飛んで行ったのは事実。
もう少し加減を覚える必要がありそうだ。
「――どうやったら、あいつら殺さず捕まえられるんだろうな……」
手のひらを開いたり閉じたり。
感覚を確かめるようにしてから再度挑戦してみるものの結果は同じ。
触れた瞬間凄まじい反発力が発生したかのように吹き飛ぶドゥルドゥー。最初のように圧縮されないだけまだマシだけど、それでも成功もしていない。
そんな感じで何度も挑戦したものの、結果は惨敗。
ドゥルドゥーから羽をむしるどころか、掴むことすらできないまま帰路につくことになった。
「……何故だ。何故なんだ……」
「ふっ、無様だな。たかがドゥルドゥー一匹捕まえることすらできないなんて。貴様の力はその程度さ」
「お前も見てただろ。別に俺はあいつらに負けたわけじゃ無いんだって。ただ物理的にだな」
「そうだな。無慈悲にも何匹ものドゥルドゥーを地面に叩きつけたり、圧縮したりと血も涙もない奴だよ、貴様は」
「お前、最初から見てたよな?」
鼻で笑ってくるゾイトにツッコミを入れつつ嘆息。
その際、大きな風が発生したがそのことを気にする余裕もないほどに、俺は精神的に弱っていた。
加減の一つもまとまに出来ない今の状況は、時間をかければいつかは解消できる問題だ。
数ヶ月か、数年か。どのくらいかかるか分からないが、とにかく解決は可能だろう。
だが、そうなるとドゥルドゥーの羽を採集するという当初の目的さえも、俺が手加減を覚えるまでお預けになるわけだ。
フィーリネと一緒に過ごすと言った手前、俺が手加減を覚えるまで定職に就かないなんてのはいくらなんでも不真面目すぎるからな。
何としても、それだけは避けたいところなんだけど
「ドゥルドゥーを捕まえないことには先に進めないよな。……この際、俺が軽く触っても死なない鳥が来れば良いのに」
「そんな都合のいい鳥が来るわけないだろ」
「だよな……」
などと会話を繰り広げていると、突然辺りに衝撃と地響きが発生した。
まるで、隕石でも降ってきたような轟音は、聞き慣れたものだが自分以外のものだと新鮮味を感じる。
「き、貴様! 今度は一体何をしたんだ!?」
「何もしてねーよ!」
確かに歩くたびに地面を揺らしてはいたが、今回に限っては間違いなく俺ではない。
覚えの無い言いがかりにそう返しながら、ゾイトと共に地響きが発生した方向を確認してみる。すると、そこには
「何だ、あれ……」
思わず口から漏れた疑問。
視界に映ったのは黒く大きな鳥のシルエット。
巨大な二対の翼を広げ、今まさに甲高い咆哮を上げる三匹の化け物の姿がそこにはあった。
触れた瞬間、サッカーボール大の身体がグシャグシャにされた紙のように圧縮、丸められたうえで俺の手のひらの中に納まったのだという。
つまり、俺はビー玉程度にまで丸められたドゥルドゥーを力は入れていないにしても掴んだのだ。
結果は先程の通り。
圧縮された身体は俺の強化された握力の前になすすべもなく崩壊し、手のひらの中で崩れ去った。血液と羽毛だけを残して……。
「貴様はいったい何をしたんだ? どうやったらドゥルドゥーがあんな悲惨な目になる?」
「知らないって。俺はただ手を伸ばしただけだ。こうやってな」
腕を前に伸ばす。ただそれだけしかしていないはずなのに、何らかの力が働いたらしく魔物は小さな球体にまで圧縮されて残酷な死を迎えた。
本当に、自分がやったとは思いたくない殺し方だよ。
「ただドゥルドゥーを捕まえようとしただけなのに、どうしてあんな風になるんだよ……」
「ボクが知るか。だが、この分だとテストは失敗だぞ?」
「何で?」
「内容はドゥルドゥーの羽。貴様の手に付着しているのも羽に違いないが、そんなに真っ赤だと判別がつかない。間違いなく不採用だろうな」
淡々と告げてきたゾイトの言葉に、俺は思わず空を仰いだ。
自分の身体が強化されていることで、試験はおろか日常生活に支障が出ることは察していた。
だけど、冒険者になる前につまずくことになるなんて。さすがに考えもしなかったよ。
どんな化け物だって一撃で倒せる気がするほどまで強くなった身体。
だけど、それ故に自分よりもはるかに弱い相手が前に立ちふさがったとき、こうもやりずらくなるなんてね。
「身体の扱いに慣れていないから起きた問題か……」
言いながら地面を軽く小突いていれば、俺を中心にしてできる亀裂。
自分の中では軽く小突いただけなのにこれだ。力の制御が全くできていない証拠だろう。
「――なぁ、ゾイト。お前から見て、さっきの俺の距離の詰め方。もう少しスピード抑えてもドゥルドゥーに追いつくと思うか?」
「……無理だな」
腕を組み、ゾイトは変に気遣うことなく口にした。
「ドゥルドゥーは知っての通り素早い。だから、貴様がさっきの状態から少しでも加減しようものなら逃げられてしまうだろうな」
「やっぱし、そうだよな……」
早歩きくらいでちょうどいいくらいだったんだ。
歩いたんじゃ追いつけないし、かといって走れば追い抜いてしまうか――最悪、轢き殺してしまいかねない。
本当に微妙な速さの魔物だから困りものだ。
「地道に身体に慣れさせていくしかないってことだよな……。できるかな」
苦笑しながらその場で屈伸。
軽く身体を解してから頬を叩いて自分に渇を入れると、俺は近場にあった岩を持ち上げると
「せーのっ!」
掛け声とともに投手。
ゾイトのようにスレスレのところを飛ばすような真似はできなかったが、少なくともドゥルドゥーたちにとっての脅威にはなりえたのだろう。
原っぱの中から数匹のドゥルドゥーが姿を現しダチョウのように走っていくさまが見受けられた。
「……無茶苦茶するな」
「頼んだところでお前は手を貸してくれないだろ? なら、代用品を探してするだけさ」
言うや否や、俺は早歩きでドゥルドゥー達の後を追う。
そうして距離が近づいたところで、再び一瞬で間合いを詰めるんだがあとは手を伸ばしたんだが、今度は触れた瞬間目に見えてドゥルドゥーが吹き飛んだ。
まるで、同じ極同士の磁石が反発を起こすように飛んだ一匹は、地面を何度か弾んだ後に元気よく走って逃げていった。どうやら今回は圧縮せずに済んだみたいだよ。
しかし、軽く触れただけで飛んで行ったのは事実。
もう少し加減を覚える必要がありそうだ。
「――どうやったら、あいつら殺さず捕まえられるんだろうな……」
手のひらを開いたり閉じたり。
感覚を確かめるようにしてから再度挑戦してみるものの結果は同じ。
触れた瞬間凄まじい反発力が発生したかのように吹き飛ぶドゥルドゥー。最初のように圧縮されないだけまだマシだけど、それでも成功もしていない。
そんな感じで何度も挑戦したものの、結果は惨敗。
ドゥルドゥーから羽をむしるどころか、掴むことすらできないまま帰路につくことになった。
「……何故だ。何故なんだ……」
「ふっ、無様だな。たかがドゥルドゥー一匹捕まえることすらできないなんて。貴様の力はその程度さ」
「お前も見てただろ。別に俺はあいつらに負けたわけじゃ無いんだって。ただ物理的にだな」
「そうだな。無慈悲にも何匹ものドゥルドゥーを地面に叩きつけたり、圧縮したりと血も涙もない奴だよ、貴様は」
「お前、最初から見てたよな?」
鼻で笑ってくるゾイトにツッコミを入れつつ嘆息。
その際、大きな風が発生したがそのことを気にする余裕もないほどに、俺は精神的に弱っていた。
加減の一つもまとまに出来ない今の状況は、時間をかければいつかは解消できる問題だ。
数ヶ月か、数年か。どのくらいかかるか分からないが、とにかく解決は可能だろう。
だが、そうなるとドゥルドゥーの羽を採集するという当初の目的さえも、俺が手加減を覚えるまでお預けになるわけだ。
フィーリネと一緒に過ごすと言った手前、俺が手加減を覚えるまで定職に就かないなんてのはいくらなんでも不真面目すぎるからな。
何としても、それだけは避けたいところなんだけど
「ドゥルドゥーを捕まえないことには先に進めないよな。……この際、俺が軽く触っても死なない鳥が来れば良いのに」
「そんな都合のいい鳥が来るわけないだろ」
「だよな……」
などと会話を繰り広げていると、突然辺りに衝撃と地響きが発生した。
まるで、隕石でも降ってきたような轟音は、聞き慣れたものだが自分以外のものだと新鮮味を感じる。
「き、貴様! 今度は一体何をしたんだ!?」
「何もしてねーよ!」
確かに歩くたびに地面を揺らしてはいたが、今回に限っては間違いなく俺ではない。
覚えの無い言いがかりにそう返しながら、ゾイトと共に地響きが発生した方向を確認してみる。すると、そこには
「何だ、あれ……」
思わず口から漏れた疑問。
視界に映ったのは黒く大きな鳥のシルエット。
巨大な二対の翼を広げ、今まさに甲高い咆哮を上げる三匹の化け物の姿がそこにはあった。
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