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小さな身体に腐肉を付着させ、頭蓋骨の中に残った光を映していない眼球。見るからにゾンビのような姿をした化け物は、ゆっくりとこちらへと迫ってきた。
片足を引き摺り、消えない飢えを満たしたいが為に動くゾンビのように向かってくるその姿は、不気味以外のなにものでもない。
「――あれは、何ですか……?」
「多分、オークの『王』なんだろうな」
さっきのオークが消えると同時に降り注いだ魂魄。あれが、俺たちが倒したオークたちの魂のようなもの――『養分』の塊なのだとしたら、足らない養分を奴らで補って復活したと言うことなんじゃないだろうか。
奴らにとっての『養分』がいったい何なのかは定かじゃないが、少なくとも復活したらしい目の前の『王』の力は凄まじい。
骨と腐肉だけの身体のはずなのに、漂わせる覇気のようなものがそう思わせた。
「とにかく、アイツを野放しにはできないしな。村に辿り着く前に、ここで消し去るぞ」
「分かりました」
短く答えてフィーリネは身体を鎧で包み込む。そうして真っ黒な刺々しい重装備に身を包んだ彼女は、背負った大剣を抜刀。剣先をオークの王に向けて構えた。
「――炎の渦」
ゾイトの声が聞こえると同時にフィーリネの横を燃え盛る火炎が通り過ぎる。
そして、オークの王に着弾。奴を中心にした炎の竜巻をその場に出現させた。
振り向けば、ゾイトが今まさに魔法を放ったらしく、腕を前に伸ばした状態で静止していた。そんな彼女は、俺の視線に気づくと不適に笑い、
「まずは魔法で様子を確認するのが最適だ。接近戦に持ち込むのはその後でもいいだろう?」
「まぁ、そりゃそうだけど……」
フィーリネを見れば、得物の矛先を何処に向ければいいのか分からなくなり、最終的には剣先を地面に刺して腕を組む。微妙にご立腹のようだ。
「まあまあ。落ち着けよ、フィーリネちゃん。ゾイトもいきなり接近戦に持ち込むのも危険だからって魔法で様子見しているんだ。あいつなりに、色々考えてるんだよ」
「……!」
指先を炎の竜巻に向けて、何やら強く指摘するフィーリネ。
刺々しい鎧を身に着けた彼女の寡黙具合は相変わらずで、何を伝えたいのか良く分からない。
そんな彼女にゾイトは苦笑すると
「心配しなくても、フィーリネの出番はすぐに来る」
「……?」
小首をかしげるフィーリネ。あれは何を言いたいのか分かっていない仕草だ。
というか、俺もゾイトの言いたいことが分からない。どういう意味だと彼女を見据えてみれば、ゾイトは真っ直ぐ渦を見据えたまま
「あの程度では、やつは消えないと言うことだ」
冷えた彼女の言葉を頷けるように、渦の方向から大きな咆哮が聞こえた。
そちらを確認してみれば、炎の渦に巻かれる中央で仁王立ちするオークの王の姿。上を見据え、獅子のように咆哮する姿は雄雄しさを感じるが、注目すべきはそこではない。
「何、だと……?」
俺の見間違いでなければ、奴の大きく開かれた口の中に炎が吸い込まれている。
降り注ぐ雨を飲み込むかのような仕草で炎を飲み込んでいくオークの王。そして、驚くべきはそれと同時に、少しずつ奴の身体が再生していっていることだ。
炎で焼かれていく身体の様を逆再生しているかのような。
少しずつ再生されていく肉体。炎の中にいるとは思えない光景は、奴が渦を全て飲み干すまで続いた。
「……げぷっ」
「ボクの魔法を美味そうに飲み干すとはな。気に食わん」
「それだけ美味かったってことだ。――まぁ、おかげでアイツは回復してしまったみたいだけどな」
炎に焼かれたはずの身体からは、煙は出ているものの火傷を受けた様子は見られない。
再生した黒い体毛を生やし、他のオークに比べて随分と大柄な姿をした姿は、普通の固体に比べて一回り大きな二足歩行型のイノシシだろうか。
『……足り、ない』
そんなイノシシは、かすれた声を上げると俺たちを見据える。
ゾイトの放った魔法のおかげで多少は再生された身体だが、治癒しきれていないのだろう。こっちを向いた奴の顔は酷くグロテスクだ。
再生し切れていない肉と、微妙に生えた黒い体毛、剥き出しになった大きな牙や歯の生えた口からは、よだれが垂れ流しだ。
はっきり言って、気持ちの悪い姿だよ。
『足り、ない……。エネ、ルギー……。人間の……悲しみ、怒り、痛み……全てが足りない』
かすれ声のまま呟くと、オークの王は覚束ない足取りでこちらに歩みを伸ばしてくる。腕を前に伸ばし、得物に向かって迫る姿は本当にゾンビのようだ。
『よこせ……貴様らの……力……苦しみ……全て……!』
「あんなこと言ってるけど、どうする? また、アイツに魔法を浴びせてみるか?」
「そんなことをしたところで、奴に養分を与えるだけだ。ここは――」
ゾイトがそういって何かしら口にしようとした瞬間。今まで不満気だったフィーリネが、獲物を見つけた豹のように勢いよく飛び出していった。
奴の直前で地面を蹴り跳躍。空中でノコギリ型の大剣を振りかぶると、落下の勢いを保ったまま刀身をオークの王へと叩き付けた。
「フィーリネちゃん。もう攻撃しちゃったけど、大丈夫か?」
「――フィーリネの接近戦に任せるつもりだったから問題はない。ただ、もう少し我慢して欲しかったけどな」
嘆息しながら口にするゾイトの視線を追えば、真っ二つにされた元オークの王が左右に倒れ伏す姿が目に映った。
片足を引き摺り、消えない飢えを満たしたいが為に動くゾンビのように向かってくるその姿は、不気味以外のなにものでもない。
「――あれは、何ですか……?」
「多分、オークの『王』なんだろうな」
さっきのオークが消えると同時に降り注いだ魂魄。あれが、俺たちが倒したオークたちの魂のようなもの――『養分』の塊なのだとしたら、足らない養分を奴らで補って復活したと言うことなんじゃないだろうか。
奴らにとっての『養分』がいったい何なのかは定かじゃないが、少なくとも復活したらしい目の前の『王』の力は凄まじい。
骨と腐肉だけの身体のはずなのに、漂わせる覇気のようなものがそう思わせた。
「とにかく、アイツを野放しにはできないしな。村に辿り着く前に、ここで消し去るぞ」
「分かりました」
短く答えてフィーリネは身体を鎧で包み込む。そうして真っ黒な刺々しい重装備に身を包んだ彼女は、背負った大剣を抜刀。剣先をオークの王に向けて構えた。
「――炎の渦」
ゾイトの声が聞こえると同時にフィーリネの横を燃え盛る火炎が通り過ぎる。
そして、オークの王に着弾。奴を中心にした炎の竜巻をその場に出現させた。
振り向けば、ゾイトが今まさに魔法を放ったらしく、腕を前に伸ばした状態で静止していた。そんな彼女は、俺の視線に気づくと不適に笑い、
「まずは魔法で様子を確認するのが最適だ。接近戦に持ち込むのはその後でもいいだろう?」
「まぁ、そりゃそうだけど……」
フィーリネを見れば、得物の矛先を何処に向ければいいのか分からなくなり、最終的には剣先を地面に刺して腕を組む。微妙にご立腹のようだ。
「まあまあ。落ち着けよ、フィーリネちゃん。ゾイトもいきなり接近戦に持ち込むのも危険だからって魔法で様子見しているんだ。あいつなりに、色々考えてるんだよ」
「……!」
指先を炎の竜巻に向けて、何やら強く指摘するフィーリネ。
刺々しい鎧を身に着けた彼女の寡黙具合は相変わらずで、何を伝えたいのか良く分からない。
そんな彼女にゾイトは苦笑すると
「心配しなくても、フィーリネの出番はすぐに来る」
「……?」
小首をかしげるフィーリネ。あれは何を言いたいのか分かっていない仕草だ。
というか、俺もゾイトの言いたいことが分からない。どういう意味だと彼女を見据えてみれば、ゾイトは真っ直ぐ渦を見据えたまま
「あの程度では、やつは消えないと言うことだ」
冷えた彼女の言葉を頷けるように、渦の方向から大きな咆哮が聞こえた。
そちらを確認してみれば、炎の渦に巻かれる中央で仁王立ちするオークの王の姿。上を見据え、獅子のように咆哮する姿は雄雄しさを感じるが、注目すべきはそこではない。
「何、だと……?」
俺の見間違いでなければ、奴の大きく開かれた口の中に炎が吸い込まれている。
降り注ぐ雨を飲み込むかのような仕草で炎を飲み込んでいくオークの王。そして、驚くべきはそれと同時に、少しずつ奴の身体が再生していっていることだ。
炎で焼かれていく身体の様を逆再生しているかのような。
少しずつ再生されていく肉体。炎の中にいるとは思えない光景は、奴が渦を全て飲み干すまで続いた。
「……げぷっ」
「ボクの魔法を美味そうに飲み干すとはな。気に食わん」
「それだけ美味かったってことだ。――まぁ、おかげでアイツは回復してしまったみたいだけどな」
炎に焼かれたはずの身体からは、煙は出ているものの火傷を受けた様子は見られない。
再生した黒い体毛を生やし、他のオークに比べて随分と大柄な姿をした姿は、普通の固体に比べて一回り大きな二足歩行型のイノシシだろうか。
『……足り、ない』
そんなイノシシは、かすれた声を上げると俺たちを見据える。
ゾイトの放った魔法のおかげで多少は再生された身体だが、治癒しきれていないのだろう。こっちを向いた奴の顔は酷くグロテスクだ。
再生し切れていない肉と、微妙に生えた黒い体毛、剥き出しになった大きな牙や歯の生えた口からは、よだれが垂れ流しだ。
はっきり言って、気持ちの悪い姿だよ。
『足り、ない……。エネ、ルギー……。人間の……悲しみ、怒り、痛み……全てが足りない』
かすれ声のまま呟くと、オークの王は覚束ない足取りでこちらに歩みを伸ばしてくる。腕を前に伸ばし、得物に向かって迫る姿は本当にゾンビのようだ。
『よこせ……貴様らの……力……苦しみ……全て……!』
「あんなこと言ってるけど、どうする? また、アイツに魔法を浴びせてみるか?」
「そんなことをしたところで、奴に養分を与えるだけだ。ここは――」
ゾイトがそういって何かしら口にしようとした瞬間。今まで不満気だったフィーリネが、獲物を見つけた豹のように勢いよく飛び出していった。
奴の直前で地面を蹴り跳躍。空中でノコギリ型の大剣を振りかぶると、落下の勢いを保ったまま刀身をオークの王へと叩き付けた。
「フィーリネちゃん。もう攻撃しちゃったけど、大丈夫か?」
「――フィーリネの接近戦に任せるつもりだったから問題はない。ただ、もう少し我慢して欲しかったけどな」
嘆息しながら口にするゾイトの視線を追えば、真っ二つにされた元オークの王が左右に倒れ伏す姿が目に映った。
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