世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

文字の大きさ
38 / 43

4-9

しおりを挟む
 小さな身体に腐肉を付着させ、頭蓋骨の中に残った光を映していない眼球。見るからにゾンビのような姿をした化け物は、ゆっくりとこちらへと迫ってきた。

 片足を引き摺り、消えない飢えを満たしたいが為に動くゾンビのように向かってくるその姿は、不気味以外のなにものでもない。

「――あれは、何ですか……?」

「多分、オークの『王』なんだろうな」

 さっきのオークが消えると同時に降り注いだ魂魄。あれが、俺たちが倒したオークたちの魂のようなもの――『養分』の塊なのだとしたら、足らない養分を奴らで補って復活したと言うことなんじゃないだろうか。

 奴らにとっての『養分』がいったい何なのかは定かじゃないが、少なくとも復活したらしい目の前の『王』の力は凄まじい。
 骨と腐肉だけの身体のはずなのに、漂わせる覇気のようなものがそう思わせた。

「とにかく、アイツを野放しにはできないしな。村に辿り着く前に、ここで消し去るぞ」

「分かりました」

 短く答えてフィーリネは身体を鎧で包み込む。そうして真っ黒な刺々しい重装備に身を包んだ彼女は、背負った大剣を抜刀。剣先をオークの王に向けて構えた。

「――炎の渦」

 ゾイトの声が聞こえると同時にフィーリネの横を燃え盛る火炎が通り過ぎる。

 そして、オークの王に着弾。奴を中心にした炎の竜巻をその場に出現させた。

 振り向けば、ゾイトが今まさに魔法を放ったらしく、腕を前に伸ばした状態で静止していた。そんな彼女は、俺の視線に気づくと不適に笑い、

「まずは魔法で様子を確認するのが最適だ。接近戦に持ち込むのはその後でもいいだろう?」

「まぁ、そりゃそうだけど……」

 フィーリネを見れば、得物の矛先を何処に向ければいいのか分からなくなり、最終的には剣先を地面に刺して腕を組む。微妙にご立腹のようだ。

「まあまあ。落ち着けよ、フィーリネちゃん。ゾイトもいきなり接近戦に持ち込むのも危険だからって魔法で様子見しているんだ。あいつなりに、色々考えてるんだよ」

「……!」

 指先を炎の竜巻に向けて、何やら強く指摘するフィーリネ。
 刺々しい鎧を身に着けた彼女の寡黙具合は相変わらずで、何を伝えたいのか良く分からない。

 そんな彼女にゾイトは苦笑すると

「心配しなくても、フィーリネの出番はすぐに来る」

「……?」

 小首をかしげるフィーリネ。あれは何を言いたいのか分かっていない仕草だ。
 というか、俺もゾイトの言いたいことが分からない。どういう意味だと彼女を見据えてみれば、ゾイトは真っ直ぐ渦を見据えたまま

「あの程度では、やつは消えないと言うことだ」

 冷えた彼女の言葉を頷けるように、渦の方向から大きな咆哮が聞こえた。

 そちらを確認してみれば、炎の渦に巻かれる中央で仁王立ちするオークの王の姿。上を見据え、獅子のように咆哮する姿は雄雄しさを感じるが、注目すべきはそこではない。

「何、だと……?」

 俺の見間違いでなければ、奴の大きく開かれた口の中に炎が吸い込まれている。

 降り注ぐ雨を飲み込むかのような仕草で炎を飲み込んでいくオークの王。そして、驚くべきはそれと同時に、少しずつ奴の身体が再生していっていることだ。

 炎で焼かれていく身体の様を逆再生しているかのような。
 少しずつ再生されていく肉体。炎の中にいるとは思えない光景は、奴が渦を全て飲み干すまで続いた。

「……げぷっ」

「ボクの魔法を美味そうに飲み干すとはな。気に食わん」

「それだけ美味かったってことだ。――まぁ、おかげでアイツは回復してしまったみたいだけどな」

 炎に焼かれたはずの身体からは、煙は出ているものの火傷を受けた様子は見られない。

 再生した黒い体毛を生やし、他のオークに比べて随分と大柄な姿をした姿は、普通の固体に比べて一回り大きな二足歩行型のイノシシだろうか。

『……足り、ない』

 そんなイノシシは、かすれた声を上げると俺たちを見据える。
 ゾイトの放った魔法のおかげで多少は再生された身体だが、治癒しきれていないのだろう。こっちを向いた奴の顔は酷くグロテスクだ。

 再生し切れていない肉と、微妙に生えた黒い体毛、剥き出しになった大きな牙や歯の生えた口からは、よだれが垂れ流しだ。

 はっきり言って、気持ちの悪い姿だよ。

『足り、ない……。エネ、ルギー……。人間の……悲しみ、怒り、痛み……全てが足りない』

 かすれ声のまま呟くと、オークの王は覚束ない足取りでこちらに歩みを伸ばしてくる。腕を前に伸ばし、得物に向かって迫る姿は本当にゾンビのようだ。

『よこせ……貴様らの……力……苦しみ……全て……!』

「あんなこと言ってるけど、どうする? また、アイツに魔法を浴びせてみるか?」

「そんなことをしたところで、奴に養分を与えるだけだ。ここは――」

 ゾイトがそういって何かしら口にしようとした瞬間。今まで不満気だったフィーリネが、獲物を見つけた豹のように勢いよく飛び出していった。

 奴の直前で地面を蹴り跳躍。空中でノコギリ型の大剣を振りかぶると、落下の勢いを保ったまま刀身をオークの王へと叩き付けた。

「フィーリネちゃん。もう攻撃しちゃったけど、大丈夫か?」

「――フィーリネの接近戦に任せるつもりだったから問題はない。ただ、もう少し我慢して欲しかったけどな」

 嘆息しながら口にするゾイトの視線を追えば、真っ二つにされた元オークの王が左右に倒れ伏す姿が目に映った。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

処理中です...