世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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「――だらぁっ!」

 短い声と共に振りかざした拳を魔物の一匹に叩きつける。

 ゴリラのような容姿を持つ大型の魔物。その顔面に拳がめり込むと、頭が粉微塵に破裂し、残された身体が地面に倒れた。

「……これで、何匹目だ!?」

 辺りに視線を向ければ、目に入るのは俺がこれまで倒してきた魔物の屍の数々だ。

 先程のゴリラタイプのものから、幻想世界特有の不気味な姿をした化け物だったりと。多種多様の屍が転がっている。

 その全てに共通するものがあるとするなら、全てどこかしら身体の一部が欠落していることだろうか。まぁ、犯人は俺なんだけども。

「――お前らも必死だな? そんなに人間が食いたいのかよ?」

 もうすでに数十匹は倒した気がするが、未だに森からは魔物が姿を現してきている。

 牙を剥き出し、爪を立てて威嚇する姿は動物とそう変わらない。獲物を前にした肉食獣とでもいえる警戒模様だが、その割にはあまりにも無鉄砲すぎる気もする。

「他の魔物が倒されているっていうのに、まるで勢いがやまない。まるで、特攻部隊を相手にしているような気分だな」

 相当動いたおかげで程よく身体も暖まり汗が流れ出る。

 顎まで流れてきた汗を拭うと、俺は両腕を前に突き出して静止。それから魔力をかき集めて脳内でマッチで灯された小さな火をイメージ。

 そうして『火炎』を手のひらから放出しようとしたんだが、その瞬間森の中から一匹の魔物が凄まじいスピードで飛び出してきた。

「――なッ!?」

 見た感じは小さなウサギのような魔物だ。だが、いくら小さかろうと魔物は魔物。脅威には違いないと標的に定めて『火炎』を放った。

 放出された火炎放射は瞬く間にウサギ型の魔物を焼き尽くすのだが、そいつに気を取られたせいで先程のゴリラタイプの魔物の接近を許してしまう。

「――ちぃ!」

 迫る拳を身を屈めることで紙一重でかわして回避。地面を転がって距離を作ると同時に立ち上がると、背中を伝う冷や汗に苦笑する。

「……かなり厄介だとは思ってたけど、まさかここまでとはな……。正直、すごくキツいかもしれない……」

 本気で魔法を使えば大したことのない相手ではあるだろう。

 いくら集団で攻め込んでこようとも、それを潰すだけの力は持ち合わせているつもりなのだ。だが、加減を間違えるとこの辺り一帯を消し飛ばしかねない。

 集中して火力を練るだけの時間があれば話は別だけど、相手さんはそれすら与えてくれそうにない。

「加減しまくった魔法なら上手くいくんだけどな……」

 魔法と言うのは想像力が大事というのが俺の見解だ。イメージしたものを放出する気分でやれば大抵はなんとかなる。

 だが、俺の場合はイメージ以上のものが出てくるから厄介極まりないんだよな。

「こんなことなら、『微最強』とかの方が良かったか?」

 なんて愚痴をこぼしながらも、向かってきた魔物の一匹を殴り飛ばして葬る。

 未だに特攻隊よろしく、無策で突撃してくる戦闘スタイルは変わらない。だが、多数を相手取る際に俺が苦しそうなことに気づいているらしく、数匹で仲良く突っ込んでくる魔物が多くなりだした。

「――クソッ! こいつらには恐怖はないのかよ!?」

 感情というのは生き物である以上持ち合わせているはずだ。

 なのに、コイツらときたら、まるで恐怖という感情そのものが欠落しているかのように、何匹倒そうとも怯むことすらしない。

 『異常』――そんな言葉が似合う化け物何じゃないかと思い始めていたとき、対峙していた魔物たちの表情に違和感を感じて俺は首を傾げた。

「強張っている、のか……」

 視線の先にいたのはオオカミのような姿をした魔物だ。

 黒い体毛に赤い瞳を持つその魔物の顔は、人間の俺でも分かるほどに強張っているのが見て取れた。さらに言うなら、身体も何かに怯えるように震えているように見える。

 視線を巡らせて他の魔物を見てみるが、やはりというかすべての魔物が同じ様子だ。

「威嚇しているのかと思ってたけど……これじゃあまるで」

「――恐怖を感じてるみたい、だよね!」

 自分の中で出た結論は、真っ暗闇に包まれた不気味な場所には不釣り合い過ぎる明るい声によって代弁される。

 見れば、木の枝に腰かけて微笑むウリ坊――もとい、オークの姿が確認出来た。

「あっ、お前! 生きてたのかよ!?」

「あははっ! 僕たちはそう簡単にはやられないんです――と言っても、かなり危なかったですけど」

 そう言って微笑むウリ坊は木の枝から飛び降りる。

 瞬間聞こえたのは、生き物が地面に降り立った音とは思えない音。

 まるで、肉塊のように柔らかなものを地面に叩きつけたような『グシャッ』という音は、不思議を通り越して不気味だ。

「お前たちのおかげで僕たちは不完全な状態で再生されたの! ほら、この通り……」

「――ッ!?」

 せーのとでも言いたげな掛け声とともに、オークは自分の頭を両手で持ち上げた。

 そう。持ち上げたんだ。

 まるで、人形がひとりでに自分の頭を持ち上げたような感じだろうか。――物凄く異様というか、気色悪いというか……。

 良く見れば、先頭のオークの背後には数十匹くらい同じ奴が見える気がする。

「僕たちはこの通り、アンデットオークとして蘇ったの!」

「……つまり、そこの魔物たちはお前らに恐怖を覚えているから、こんな特攻じみた戦いを仕掛けてくるのかよ!?」

「少し惜しいです! みんな恐怖を覚えているのは事実だけど、それは僕達じゃないんです。何故なら、僕達もその恐怖に怯えていますから!」

「明るい口調で言うようなことじゃないだろ!?」

 言われてみれば、確かにオークの身体が小刻みに震えているようにも見えなくはない。

「と言うことは、お前らが恐怖を覚えている相手は別にいるということか!」

「その問いには答えられません! 『あの方』が復活し、さらなる力を求めているから村を壊滅させろと脅されたなんて、絶対言えないの!」

「……言ってんじゃん」

 指摘してみれば、今更気づいたらしく息を呑むオーク。

「お、おのれ! 僕から情報を得るために誘導尋問だなんて! 人間はやっぱりやることが汚いの!」

「いや、今のはお前が勝手に自爆しただけだろ……」

 口にした言葉は空気中を舞うものの、オークの元までは届かなかったらしい。

 奴はその場で振り返ると、拳を天に掲げて叫ぶ。

「『あの方』の完全復活のために、あの人間を殺すよー?」

「「はーい!」」

「……可愛い声してえげつない言葉を発するのは相変わらずだな」

 などと小さく漏らすと同時に、凄まじい速さで何かが突っ込んできた。

 見れば、顔が半分ほど白骨化したようなオークの姿。振りかぶった巨木が、今にも俺の顔面に叩きつけられそうな勢いである。

「死ねぇっ!」

「そう簡単に死ねるかッ!」

 振るわれた巨木をブリッチして避けると、そのままバク転するようにして足を上げる。その際、オークを蹴り飛ばすことを忘れない。

「まだまだ行くよー!」

「「「キャハハハハハハハッ!」」」

「怖わっ!」

 押し寄せるオークの波。その全てが奇声ともいえる笑い声を上げながら迫ってくる姿は、恐怖以外の何物でもない。

 あの波にだけは飲まれたくない。素直にそう思えるけれど、残念ながら俺に後退は許されていない。

 迎え撃つしかないと覚悟を決めて腰を落とす。しっかりと地面を踏みしめて足場を確保すると、右手を開いて前方へ。その手首に左手を添えて力を籠める。

「そうやって集団で固まったのは愚策だったな!」

「「「――えっ!?」」」

「一気に燃やしてくれって言ってるようなものだぞ! 『火炎』!」

 イメージするのは未だに小さな炎だが、今回はマッチ棒ではなくライターでの炎だ。

 微妙な変化でしかないが、その火力は向かってきていたオーク全てを包み込むには十分の火力だった。
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みんなの感想(35件)

アカツキ
2019.10.08 アカツキ

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スモモ@砂糖味

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