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本編
7 魔法学園 中編
しおりを挟む「まったく姉上にも困ったものね。…………便秘かしら?」
破壊力抜群なベルの感想にずっこけそうになる。誰もが見惚れそうな憂い顔なのに発言がね……。
「プリンセスが便秘とか言わないでください。周りのみんなの夢が壊れますから」
あとうちの兄の初恋幻想フィルターも壊れる。いや、このくらいじゃ壊れないかな。何せ片思い歴八年目突入だしね。
「じゃあ下……」
「それ以上はいかん!」
何故下関係から離れてくれないのか。
ベルも立派に踏み外し系の姫だよ。
まあ、私の親友って時点で普通ではない。ロイヤルプリンセススマイルは、営業用かつ有料らしいですから。
ササミラ姫はここ最近、評判を下げている。
第一王子も、第二王女のベルも、分け隔てなく生徒たちと交流をしているのに対し、彼女の交友関係が偏ってきているのだ。
話しかけられても、興味のある人間以外はスパッと無視をするだとか。男子生徒をヒールで踏んで高笑いしてた、なんて恐ろしい噂まで出回っている。
興味のない人間がその場に存在しない風に振る舞うとか、権力を持つ者としてはありがちな対応とも言える。けれど、上と下の兄妹がフランクなだけに、彼女一人が浮いている。
こんな方じゃなかったと思うんだけどな。
それを言ったら、私もベルもこんなキャラじゃなかったかも。
あとひとつ、私としては非常にもやっとする件があります。
ヒューだ。
最近のヒューはちょっと調子に乗っている。
同級生から下級生、女教師に至るまで、あらゆる女性から秋波を送られているのだ。
そりゃあね、一回生の時から四回生の今までずっと座学も実技も主席で、王子と次期侯爵さえぶっちぎる魔術の素養を持っているってなったら、モテますよね。しかも身分的にもお手軽! あくまでシヴァーリ兄様の従者ですから。
貴族令嬢からは、学園の中だけでひと時の恋の駆け引きを味わうお相手として。その他の女性からは手の届く優良物件として。
しかもヒューは優しい。
立場もあるのだろうけれど、彼が誰かを無碍にした所を私は見たことがない。だから、いつも周りには女性が鈴なりだ。
いや、良いんですよ。
うちの実兄と違って親しみやすく人気だなんて、妹分としては鼻が高い。
ちなみにシヴァーリ兄様の方は、見えないバリアを張ってる系男子なので、観賞用として重宝されているようです。
でもさ、ちょっとだけ、自分は妹枠として特別扱いだと高を括っていた鼻柱を折られて、胸の奥がもやっとする。
そんな自分が恥ずかしいやら、やっぱりムカつくやらで、毎朝起こしに来てくれるヒューを無言で蹴飛ばす日が続いています。
憂さ晴らしに、ベルへの告白にやってくる男子生徒に難癖を付けて、決闘でけちょんけちょんにする毎日だ。
そもそもいくらフランクだからって、一国の王女に告白に来るのもどうかと思うんだけど。私が決闘して追い返さないと、本物の護衛騎士に半殺されるよ? 彼ら、マジだよ?
「さすが私の騎士様ですわっ」
「愛する姫の為ならば、どんな屈強な戦士でも倒してみせましょう」
ベルお気に入りの恋愛小説の一節を二人で諳んじながら、熱い抱擁をする。ベタさ増量でお送りしております。
足元には決闘相手がいい感じにのびてて、背景になっている。
面白がる友人が私たちの周りに風魔法で薔薇を散らし、別の友人は光魔法を操って天使の梯子をかける。……みんな無駄に本気である。
そろそろ音楽担当をうちの劇団に加えたいなあ。
で、駆け付けた兄がギリギリ臍を噛むって所までがワンセット。
お決まりとして、生徒会長特権という強権を振るう兄に、騒ぎを起こした罰として拳骨を貰って終わります。私のみ。私のみが!
――あれ、結局はけっこう楽しいみたい。
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