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本編

44 オープンシーズン 後編 ※

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 ぎゅっと抱きしめたままで奥に飛沫を放ったランバルトは、そのまま崩れるようにレティレナの上に覆い被さった。力尽きたように荒い呼吸を繰り返す姿に、愛しさがこみ上げてくる。自然と笑みになって、レティレナは大きな背中に腕を回した。
 ランバルトの全身は汗みずくだ。同じくしっとりと汗をかくレティレナの肌に吸い付くようで、心地良い。互いに合わさる胸の早い鼓動が、熱い肌を通して伝わってくる。

 身体だけではない、心の交歓の素晴らしさに、レティレナは満足の溜息を吐いた。

「ふふっ。またお風呂で汗を流さなきゃいけないみたい。でも残念だけど私には、ランバルトを抱いて浴室までいく体力は残ってなさそう」
 そもそも体力万全でも、持ち上げるなんて絶対に無理だ。腕一本だって、レティレナの腕の倍もの重さがありそう。右手でランバルトの左腕を持ち上げてみようとして、すぐに諦めた。

「ああ、ごめんレティ」
 ランバルトが我に返ったように、ぐっと身体を持ち上げて、体重を両腕で支える。
「んっ……へいき。もうちょっと、くっついていたかったのに」
 重さがなくなったのは楽だけれど、離れてしまったのはちょっと惜しい。そんな風に思って、レティレナは笑いかけた。
 弧を描いた唇を、ランバルトの唇が優しく食む。

「んんっ……ぁあんっ」
 そのまま腰を緩やかに揺すられて、レティレナの口から嬌声が上がった。幾分圧迫は収まったものの、硬さを保った屹立が、愛蜜と子種で濡れた蜜壺をゆっくりと攪拌する。しかもひと突きごとに、質量を増していくではないか。

「ぁ……うそ。だって、さっきあんなに……ふぅっあ……」
 あんなにたくさん白濁を零したというのに。

「一度でなんて済むはずないだろ。君に愛してると言われて。ん……手加減できないって、言ったじゃないか。っはあ……大丈夫、浴室には俺が抱えて運ぶから」

 浅いところの感じる部分を何度も擦り、レティレナが惚け、内襞が痙攣をはじめたところで、ランバルトが雄芯を引き抜いた。レティレナの襞が充足感を失って、惜しむようにわななく。

「あうっ……」
 レティレナは、まさか二度目があるなんてと翻弄されながら、潤んだ瞳でランバルトが秘裂から抜け出る瞬間を目にしてしまう。
 抜け出た雄には、白く混ざったレティレナの蜜とランバルトの精が纏わり付き、放つ前と遜色ないほどに勃立している。レティレナの視線を受けて、それはびくんと喜ぶように震えた。

「脚を開きっぱなしは疲れたろう。膝を立てられるかな」
 砕けてしまったような腰をくるりと返されて、うつ伏せにされたかと思うと、膝をつきお尻を持ち上げるような姿勢を取らされる。崩れないようにと、ランバルトがお腹の下に枕を押し込んだ。

「膝って……こう?」
「そう、いい子だ」
「んんぅう……はぁ」

 ご褒美のように双丘を撫でられ、震えた拍子に最奥で受け止めた白濁が秘裂からとろりと伝う。その感覚に腰から痺れが走り、レティレナの秘唇が妖しく痙攣する。
 痴態に興奮を覚えたのか、押しつけられたランバルトの剛直は既に大きく育ちきり、先走りに濡れていた。

「少し激しく動くから、しっかりシーツにつかまって。レティレナ」
 激しくがどんなものかの見当もつかず、お尻を高くあげたあられもない姿勢でレティレナは振り向いた。膝立ちになってレティレナの腰を掴まえ、つるりとした先端を宛がうランバルトと目が合う。
 ぎらぎらと欲を湛え隠しもしない瞳は、先ほどよりもさらに滲み出る艶で、灰色の奥が琥珀に輝いて見える。

 身体を繋げる度に、知らないランバルトを味わっている気がする。この危険なほどの強くて少し強引な姿も、確かにランバルトの一面。
 負けたくないのに、征服されてみたい。倒錯的な心情に、お腹の奥がきゅんと痺れる。

 ぶるりと一度だけ震えて、レティレナは手を伸ばした。お腹に押し込まれたのとは違う固い枕を引き寄せ、両手で掴む。膝を踏ん張り、腰を高く掲げる。ランバルトが動きやすいように。秘裂は新たな蜜を湛えて、震える。はやく空虚を埋めて欲しくて。

 ランバルトは先端のくびれまでを秘裂にゆっくり潜り込ませると、そのまま一気に最奥まで貫いた。

「ああっあああああぁぁあーー!」
 レティレナは悲鳴のような嬌声を上げて、ひと突きで達した。
 膣内はうねり、激しく蠕動する。光の洪水に占拠され、極みに上りつめたというのに、そのまま最奥をずっと押し上げられ下りてこられない。それどころか、いっそう激しくランバルトが腰をぶつけてくる。

「うっ……! 食いちぎられそうだっ」
 ランバルトはレティレナの臀部を割り開くように遠慮なく掴み、奥の締め付けに抵抗するように、抽挿をはじめる。ぐちゃぐちゃと淫猥極まりない水音に混じって、肌と肌が打ち合う音が、主寝室に響いた。
 口を開くと嬌声しか出てこなくて、動きを緩めてもらうことも出来ない。鮮やかすぎる快感を、全て受け止めるしかない。
 抑えのきかない本能同士のぶつかり合うような行為に、これは獣の交わりのようだと、真っ白な星が弾け続ける中で思う。
 今のランバルトはレティレナを射止めた狩人ではなく、獲物を屠る獣のように荒々しい。戸惑う一方、奥底に眠る本能が目覚めて、喜んでランバルトに肉体を差し出していた。抽挿に合わせ、奥まで届いて欲しいと、自然に腰が揺れ始める。

「強く突くたびに、先端に吸い付いてくる……はあっ……欲しいんだね?」
「んっ……んん……」
 揺すられながら、必死で頷く。長時間乗馬をした後で、こんな風にお尻を打ち付けられたら、赤く腫れてしまいそう。けれど、痛いなんて感覚は吹き飛んでいる。
 それよりも、ランバルトを深く深く受け入れたい。
 必死で余裕のないほどの熱を全て最奥に収めて、閉じ込めてしまいたい。
 本能と心が結びついて、子宮は快感に下り、ランバルトの熱の先端に触れる度に喜んで口づける。
 期待に応えるべくランバルトは抽挿を深くし、先端の張り出したカサの部分で、抜くときにはレティレナの好いところをこそげる。返す刃で最奥まで押し込めば、今度は奥の壁に先に放った精を塗り込めるように、腰を回して子宮口を蕩けさせた。
 浮き立つ血管を感じるほどに、レティレナの膣内で剛直が膨れあがる。
 ランバルトも終わりが近い。
 いきっぱなしのレティレナを、もう一度一緒に舞い上がらせようと、素早く激しく抽挿を繰り返しながら、花芽へと手を伸ばす。滑る芽を指の腹で押しつぶした。

「一緒にいこう、ぐぅっ……また一番奥に注ぐから!」
「んん! ああっ。あああんんんっーーーー」

 レティレナはさらさらとした潮を吹き、さらに高みに達した。雄芯を搾るようにざわめく膣内で、ランバルトが熱い飛沫を何度も吐き出すほとばしりを感じた。最後の一滴まで余さず塗り込めるように、ゆっくりとしたリズムで腰が押しつけられる。
 漸くまともに呼吸が出来るようになった頃、ランバルトがレティレナの乱れた髪を掻き上げ、心配するように顔を覗き込むと、頬に手をあてた。
 灰色の瞳は、優しいいつものランバルトだ。

「すまない。無茶をさせ過ぎたみたいだ」
「いいの、嬉しかった。もっと甘えて、欲しがって? ランバルトが私のものなら、私はランバルトのものだもの」

 レティレナが彼にそうするように、甘えて欲しい。
 優しいランバルトに、我を忘れたような激しいランバルト。
 どちらもレティレナのものだ。
 レティレナがランバルトのものであるように。
 目元を赤く染めるランバルトに、レティレナは艶やかに微笑んだ。



「あっああっ。ランバルト、激しっ……んんっ」
「レティ愛してるっ。んっ奥がまた震えてる……もうすぐいけそうなんだね、いこう一緒に」
「んんんぅ……愛してりゅ……ひゃあんっ……あーーっ!」

 対面座位で突き上げられ、一番奥でまたランバルトの熱を受け止める。
 そのまま肌同士が擦れ合う感覚に翻弄されながら、レティレナも達した。白濁を飲み込むように膣が収縮する。
 くったりと胸にもたれかかったレティレナを、ランバルトがしっかりと受け止める。労るように背や腰を撫でてくれる手は、無骨だけれど優しい。レティレナは、ほぅと気怠い息を吐いた。

 けれど楔は抜いてくれない。どうやら、まだ萎えてもいないらしい。

 あんな激しい交わりの後に、甘えて欲しい、欲しがってとお願いしたのはレティレナだ。レティレナなのだ。
 だがしかし、彼女は元騎士の体力を舐めていた。完全に見誤っていた。
 けれども、舌の根も乾かぬうちに言ったことを取り下げるなんて、レティレナの性分が許さない。

 その結果これが何度目なのか、数えることも放棄している有り様。
 とりあえずもう、日はとっくに沈んでいる。
 合間に果物と水分を取らされ、お風呂にも入れられた。
 浴室から戻るとシーツが交換されていて、羞恥で泣きそうになった。実際はそんな暇はなかったけれど。

 今本音を言うなら、ほんのちょっぴりだけ自分の性格を後悔している。
 けれど溢れるほどに思いの丈を注がれて、満ち足りてもいる。幸せだ。
 ただちょっと、疲労困憊なだけで。

「ランバルト。だいすき」
「俺も愛してる、レティレナ」

 胸元に向けて呟くと、蕩けたような甘い声でランバルトが囁き返してくれる。

 でももう、流石に色々限界のようだ。
 目蓋が重くて仕方ない。呂律もちょっとあやしい。
 ランバルトの膝上で、裸の腕に囲われたまま、レティレナはゆっくりと意識を手放した。

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