「LGBT」というレッテルを貼られて。

千石杏香

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運動に踏みにじられたレズビアン。

5.「LGBT」から「L」を外せ!

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性自認主義は、レズビアンや女性を抹殺する。

性玩弄や性暴力を女性が受けるのは、自認が女性だからではない――女性の身体があるからだ。その他の多くの女性差別も同じである。賃金格差や雇用格差でさえ、男女の身体を基準とした差別と言える。

「私は女だ」と男性が言ったら、その人は男性から性的視線を受けるようになるだろうか?

「私は男だ」と女性が言ったら、その人は男性と同じ賃金を得られるようになるだろうか?

そんなわけがない。

もし「性別」を「自認」のことにすれば、男女の間に存在する問題が見えなくなる。自称「女性」の存在が統計を狂わせ、「女性」による性犯罪率は上がり、見かけだけは賃金格差も少なくなるだろう。女性を保護するための制度や施設も彼らに奪われる。

当然、レズビアンにも著しい不利益が出る。

何しろ、異性愛男性がレズビアンを名乗るのだ。

先のエピソードでも述べた通り、男性向けポルノが作ったイメージにレズビアンたちはあらがってきた。

殊に男性は、レズビアンに対して性的好奇心を寄せる傾向にある。レズビアンが男性にカミングアウトしたとき、性に関することを言われがちだという――しかもポルノ的な偏見の入り混じった。

それを払拭することを、レズビアンの運動は目指してきた。しかし、達成し切れずLGBTに吸収される。

もしも「性別」が自称になれば、事態は深刻化する――なぜなら、「嫁以外の裸を合法的に見たい」と言ってる自称MtF(男→女)や、「女子高生を金で買いたい」と言っている「Xジェンダー」の男性まで「レズビアン」になるのだから。考えられる限り最悪の事態だ。

しかも「LGBT先進国」では、「女性を自認している」と言えば、レイプ犯でも「女性」となる――「レズビアン」になるのだ。そんな彼らは女子刑務所に送られている。――レズビアンにとって、これ以上の侮辱があるだろうか?

だが、そんな自称「レズビアン」にも、レズビアンたちは配慮しなければならなくなっている。

二〇一八年八月――バンクーバーで女性当事者行進ダイク゠マーチが行なわれた。このとき、一部の参加者が運営から注意を受ける。「♀」を二つ重ねた記号(⚢)や、女性の性染色体であるXX、子宮の図柄が書かれたプラカードや衣装が、「トランスを排除している」と言われ、取り下げるよう指示されたのだ。

参加者は抗議し、それらのアイコンを掲げたまま行進した。すると、主催者・役員・ボランティア・その支持者たちが彼女らを取り囲む。そして、「TERFの偏屈者」「女性当事者行進ダイク゠マーチに憎しみはいらない」「クソTERF」と口々に罵声を浴びせた。

そんな彼女らを守るように他の参加者たちが割って入る。盾となった人々は最終的に五十人近くなり、彼女たちは目的地まで辿り着くことができた。

他にも、ニュージーランドの首都・ウェリントンで行なわれたパレードでの出来事もある。このとき、レズビアン団体・レズビアン゠ライツ゠アライランス゠アオテアオアが、「トランスを包括していない」という理由で行進を禁止されたのだ。

性自認主義に反撥する女性当事者は多い。

そんな中、”Get The L Out"(「LGBT」から「L」を外せ)と呼ばれる運動が始まる。

二〇一八年――ロンドンのゲイパレードにデモ隊が割り込んだ。そして、「レズビアンは変態クィアではない」「レズビアン=女性フィーメイルの同性愛者」「性自認主義はレズビアンを消す」などの横断幕を掲げる。

これこそ "Get The L Out" の初めての行動だった。

"Get The L Out" に対し、ロンドン市長のサディク゠カーンは「トランス差別だ」と非難する。欧州最大のLGBT団体「ストーンウォール」も非難声明を出した。しかし、彼らの非難は「トランスのみを逆に優先している」と返り討ちに遭ってしまう。

"Get The L Out" はホームページで次のように宣言している。

「我々は、草の根レズビアン゠フェミニスト活動家グループである。男性の欲望や幻想に支配されない自立したレズビアン゠コミュニティと、レズビアンの妥協なき可視性の創造を目指す。」

「我々は強く主張する――反レズビアン主義を終わらせる唯一の方法は、『GBTコミュニティ』からLを外し、男性支配と女性抑圧を終わらせる意思を持つ全てのレズビアンやフェミニストと女性中心の同盟関係を築くことであると。」
(略)
「我々は、性自認主義がいかに、レズビアンたちを抹殺し、声を上げようとするレズビアンたちを沈黙させ、悪者に仕立て上げているかを目の当たりにしている。

!」
https://www.gettheloutuk.com/

加えて言えば――レズビアンの安全を脅かすのは、「レズビアン」を自称する男だけではない。

前章のエピソード「『トランスジェンダー』にされる子供たち」を思い出してほしい。そこでは、同性愛者に対してポジティヴなイメージを持っていなかったレズビアンの少女が、越境性差トランスジェンダーだと思い込んで乳房を切除した事例を紹介した。

次章で詳しく述べるが、同じ出来事は欧米諸国で――それどころか日本でも――頻繁している。

レズビアンであることを否定的に思う人も未だ多い。そんな彼女たちを越境性差トランスジェンダーだと洗脳する人がいる。結果、「貴女は男性なのだ」と言われて、身体改造や投薬治療を受ける人々が続出しているのだ。

これに対しても "Get The L Out" は強く批判する。

「レズビアンへの医学的改造を推進させ、完全に健康な身体に対する不必要な医療行為や、有害な薬物(未試験のホルモン阻害剤――ルプロンなど)を押しつける――これらは、レズビアンに対する女性差別的医療虐待の一形態である。」
https://www.gettheloutuk.com/blog/why-get-the-l-out-2.html

#GetTheLOut のハッシュタグで検索すると、英語はもちろん、その他の欧州の言語や、日本語や韓国語でも多くのツイートがヒットする。

それらは、自称「レズビアン」の男性の横暴に対する批判であったり、男性中心主義のLGBT運動への批判であったり、「Qクィア」を称してパレードで変態行為をする男への批判であったりする。

今や欧米や日本だけではない――世界中のレズビアンが激怒しているのだ。
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