【異端ノ魔導師と血ノ奴隷】

嵩都 靖一朗

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第六章◆精霊王ノ瞳

精霊王ノ瞳~Ⅸ

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はしらにはほうめられているよう。
そのおもてにはいんつづあおひかりが、あらわれてはえ。
そこそこ体格たいかく大人おとな男一人おとこひとりを、易々やすやすしばけていたのだ。

やや見上みあげるかたちでつめたい視線しせんおくる少年が、
彼にあざむかれたと知ったのは、つい先頃さきごろのこと。

王党派おうとうは地下施設ちかしせつかこんでいた魔薬まやくはこは、現在げんざい行方不明ゆくえふめい
少年は、ウルクアがれ出しがしたと思っている。

それが事実じじつなら、詐欺さぎ同然どうぜん
ウルクアは遠退とおの意識いしきつなめ、こう釈明しゃくめいした。

騒動そうどう最中さなか ... 私が到着とうちゃくした時 ... ... すでに ... 〈彼女かのじょ〉の姿すがたは、なかった ... 」

ところが少年は拒絶きょぜつする。

「聞きたくありませんね。見えいたうそには、もう飽き 々 あきあきしました。
 そもそも、フェレンスをあざむ必要ひつようはないと言ったはずです。
 あえて不合理ふごうりおかしたのには何か理由りゆうがあるのでしょう?
 おおたが信用しんようする気が無いのに、初めから無理むりがありましたね」

交渉こうしょう決裂けつれつだ。

「それでも ... 貴方あなたは、私を ... ... 始末しまつするわけにはいかない ... ... 」

「ええ。否定ひていしません」

分かり切っていた。

「魔力を宿やどす血には瘴気しょうきともない、あらゆる態系たいけいどくしますから。
 このもり例外れいがいではなく、事が起きては、制御せいぎょさわりがしょうじてしまう。
 何もかも、おさっしのとおりです」

だからこそ、一度は譲歩じょうほしたという理由わけだ。

「しかし貴方あなたのぞんだ交渉こうしょうが、目的もくてきではなく手段しゅだんである以上いじょう
 貴方の生体せいたいたましい記憶きおくいたるまで警戒けいかいせざるをない」

王党派おうとうは魔導兵まどうへいねら機会きかいと、
施設しせつはこび手の排除はいじょをより確実かくじつおこなさくは、
やはりおとり手引てびきだったよう。

「フェレンスも気付きづいていたはずです。
 この状況下じょうきょうか重要じゅうよう場面ばめん居合いあわせた者の中にはかならず、
 精霊王せいれいおうからひとみうばった魔女ノ末裔まじょのまつえいましたから。
 
 魔導兵まどうへいかまえての捕縛作戦ほばくさくせんばかりか。
 魔薬まやくはこ追跡ついせきするにいたるまで。
 見切みきり応対おうたいぎる気はしますが、何か事情じじょうがあるのでしょうね。

 ... さいわい、魔薬まやくほうは魔導兵に投与とうよされたようなので、問題ありませんが。

 やれやれ。変わってしまった彼の機嫌きげんそこねないようひかえめにするのにも、ほねれます。
 誘導ゆうどうのため操作そうさした擬態ぎたいに、招待状しょうたいじょう仕込しこんでおいてかった」
 
少年がけ、そのあとにしたのは、ウルクアのいきあさくなりはじめたころ

られ下を向く彼の上半身上半身は、鬱血うっけつまり切っている。
浮腫むくみもひどい。

血がかたより、このままうしなってしまったなら、二度と目覚めざめることは無い。
それが普通ふつうだ。
しかし彼は、かさずころさず、なぶられるだろう。

本人ほんにんも、分かっている。
だが、彼は笑った。

祭壇さいだんこうへと消え入る少年の姿すがたを、かろううじて見送みおくりながら。
意識いしき途絶とだえる間際まぎわに。

「異端ノ ... 魔導師 ... 。うわさたがわぬ ... 賢才けんさい ... ... 
 じつに ... 協力的きょうりょくてきで、たすかる ... ... 」

そう、ささやいて。


彼が最後に思いかえしたのは、少年がつらねた話脈わみゃく一部いちぶ


〈 さいわい、魔薬まやくほうは魔導兵に投与とうよされたようなので、問題ありませんし ... ... 〉


やがてうしなった彼の身体からだしずかによこたえるは、水か光か。
あお清流せいりゅうごと飛来ひらいする心魂しんこん

少年は気付きづかなかった。

この策謀さくぼうじょうじて、人知ひとしれずウルクアを手助てだすけした者がいることに。
興味きょうみ衰退すいたい原因げんいんだろう。

何せ、どうでもいい。
そんな気がしていた。

〈  るをさしわいとし、めぐもたらしめよ ... 〉

だれかが、そんなことを言っていたような気もするが。

〈  れにおける格言かくげん覚真かくしん智慧ちえと言わしめ さとし、みちびけ ... 〉

みちびくべきたみなど、もう ... ... この〈世界〉には存在そんざいしない。

うばわれたのだ。

かつて豪族ごうぞくひきいた ... 地上ノ王ちじょうのおうに。


今は祖国そこくおもえば、
まつわる郷愁きょうしゅう心性しんせいにごす。


少年について。


告知こくちけたのは、作戦決行さくせんけっこう数日前すうじつまえだった。

静かにかたるフェレンスの表情ひょうじょうは、いつにもしてかたいように思う。
一方いっぽうのクロイツは顔の前で手指しゅしみ、清聴せいちょうした。

『私がはじめてもり息吹いぶきを感じ取ったのは、三世紀さんせいきほど前。

 帝国の専門機関せんもんきかん配属はいぞくされた当初とうしょは、残存ざんぞんする叡智えいち開示かいじするため、
 祖粒子そりゅうしまつわる魔導理化学まどうりかがく境界幾何学きょうかいきかがくをはじめとする、
 高次元学問こうじげんがくもん信託しんたく運用うんよう監修かんしゅうする立場たちばかれた。

 そのために。

 遺物いぶつ探査たんさ参加さんか協力きょうりょくすることもあって。
 帝国がおもに、硝子ノ宮がらすのみや残滓ざんし対象たいしょうとし、
 採掘さいくつ調査ちょうさすすめてきたことを知っている。

 補足ほそくすると。

 崩壊ほうかいしたシャンテの都市としちゅう散乱さんらんし、
 そのほとんどが大陸たいりくちるか、海洋かいようしずんだはずなので。

 浮遊島ふゆうじまとなり、この世界のそら彷徨さまよつづけているのは、ほんの一部いちぶぎず。
 崩落ほうらくしたのちもれてしまった遺跡いせきの方が、圧倒的あっとうてきに多いのが実情しつじょう

  ... にもかかわらず、何故なぜか。

 悪条件あくじょうけんと言える海洋かいようでのげに立ちうことも、少なくなかった』

もと状態じょうたいを知るがゆえかされたのだから、当然とうぜん ... 気付きづきはするのだ。
いくら長い年月をているとは言え、見込みこみにたいしてられる物量ぶつりょうすくなすぎると。

先取さきどりされていたと言うことか』

するとクロイツがかさねてう。

貴様きさまというやつは ... このんで、
 なおも知らぬ素振そぶりりを続けてきたと言うわけだな。 ... 何故なぜだ?』

フェレンスにかぎって、調しらべる手段しゅだんが無かったはずは無し。
確信かくしんてないなんて、生温なまぬるい考えにとどまるようなたまでもないのだから。
あきらかに〈れることをけてきた〉 ... そう断言だんげんせざるをないのだ。

ところがクロイツはぐに、たずねた事を後悔こうかいする。

両者りょうしゃひざの上にひらいていた古書こしょかい、対話たいわしていた。

右のページには、相手あいて言葉ことばが。
左のページには、相手あいて動作どうさが。

それぞれ文章ぶんしょうあらわれる。
フェレンスの魔法まほうめられた古書こしょだ。

っているあいだに、いや予感よかんはしたけれど。
クロイツにしてはめずらしく、顔に出さぬようつとめていたらしい。

それなのに。

左側ひだりがわ墨汁インクにじんで靄々モヤモヤただよったかと思えば。
ページ一面いちめんてのひらふさいだ絵図えずらかぶ。

手相てそうでもしいのか ... ... ?

そんなわけあるか ... ... ?

真顔まがお古書こしょ見詰みつめるクロイツの様子ようすうかがっていたのは、ノシュウェル一人だけだが。
真顔なのに、そう言いたそうに見えたのだとか。

フェレンスは、どんな顔をしてこたえたのだろう。

想像そうぞうかないけれど。
クロイツが見る古書こしょ右側みぎがわには、小さく、小さく ... こうつづられた。


『 カーツェルのそばに ... ... たかった 』


見てはいけないものを見てしまった気がして。
クロイツのうしろで背伸せのびをしていた覗き見男(ノシュウェル)早々 ス ス ス ... る。

終始しゅうし真顔まがおくずさなかったクロイツも、流石さすがだまってしまった。
指先ゆびさき眉間みけんつまみ、絶句ぜっくしていると言った方が良い。

かたやフェレンスの見る古書こしょには、文字化もじかした大きな、大きな ... 溜息ためいきが。

クロイツの立場たちばからすると。

存外ぞんがい素直すなおに答えられたものだから、むしろこまるのだ。
これ以上いじょう馬鹿ばからしいと思うことがあろうかと。

あきかえってものも言えない。
唖然あぜんとするをとおし、幻滅げんめつした。

シャンテの中枢ちゅうすうつかさどった番人ばんにんか何か知らないが。
これまで散々さんざん無感情むかんじょう利己主義的りこしゅぎてき冷血漢れいけつかんよそおってきた男がだ。

こんな、どうしようもなく単純たんじゅん質素しっそねがいのために。

陰謀渦巻いんぼううずま階級かいきゅうならぬ血統社会けっとうしゃかいという泥沼どろぬまで、
必要ひつようとされるままにめ、ながらえてきたと言う。

すべきを成すためとは、あの化物ばけもの槍玉やりだまになるのをふせぐためか。

なるほど。なるほど。

クロイツは至極しごく納得なっとくした。

やはり亡国ぼうこくは、ほろぶべくしてほろんだのだと。

どんなに優秀ゆうしゅう管理者アドミニストレーターであろうとも。
我欲がよく芽生めばえてしまってはわり。

何もかも、操作そうさできてしまうからだ。

だがそれでは、この世界をうら牛耳ぎゅうじ奴等やつらと変わらないのに。
どのように見方みかたえ、解釈かいしゃくしたらいのやら。

ただでさえイカレタ野郎共やろうどもが ... れたれたなどと、
手段しゅだんわずに天命てんめいけるのか。

落胆らくたんせずにはいられない。

「 ククク ... ... ククク ク ... ... 」

しまいにはわらいといかりがげた。
なのにいていく。

その時。

クロイツのがお青褪あおざめて見えたので。
ノシュウェルはおののき、さらがった。

罵詈雑言ばりぞうごんびせるつもりと思ったのだ。

ところが。

何やらかたちからけていく。
古書こしょを見る目がめていく。

クロイツは思った。

女々めめしくしたいている場合ばあい呆け那須ボケナスめ ... ... 。

不意ふい絵柄えがらを変えたページの左側に見る男が。
ひざの上の古書こしょう異端ノ魔導師が。
余分よぶんあごいているように見えたのだ。

わずかに視線しせんそらして。
ずかしがる子供こどものように。
すこしだけ気不味きまずそうに。

よもや ... 元:帝国魔導師もと:ていこくまどうし上級者シニアクラス比較ひかくし、
那須ナス失礼しつれいだったなどと思いかえす日が来るとは思わなんだが。

気を取りなおすより他無ほかなくて。
なさくて。

言葉にならなかった。

抑々そもそも数世紀すうせいきものあいだ
一貫いっかん黙秘もくひするには、時間じかん理由りゆうわない。

未来みらい予知よちする能力のうりょくでもあるのだろうか。
いや、それは流石さすがい気がする。

行くべき道、けるべき災難さいなんを知る者が、
そこまで徹底てってい周囲しゅうい情報じょうほうらさぬよう必要ひつようがあるのかという話だ。

ぎゃく都合つごういよう発信はっしんし、誘導ゆうどうするに傾倒けいとうする
帝国ていこく奴等やつらちがってづらい。

けれども。

予測よそくするうち、留意りゅういすべき可能性かのうせいとしてはふたつまでしぼれた。

いち、そういった能力者のうりょくしゃほか存在そんざいし ... 啓示けいじけたか。
断定的だんていてきに、そうなると予測よそくされる何らかの出来事できごとが ... 過去かこにあったか。

するとクロイツは、あることいていきむ。

そうか ... アレセルが奴等やつらがわについたのは、いちノ可能性にちか実情じつじょうぎつけたから ... ...
かかわる者がフェレンスにがいさぬかいなか、場合ばあいによっては廃除はいじょするつもりなのだ ... ...

もし、そうなら。

我々われわれがすべきは ... 二ノ可能性にれ、実態じったいを知ること ... ...

ようするに今、本人ほんにんから聞き出せば良い。
簡単かんたん簡単かんたん
いや、うそだ。

本当は ... ... ちゅーぱー激烈げきれつ面倒めんどくちゃい ... ...

何がかなしくて、
〈 訳有な番ワケアリ カップル関係かんけいこじれた経緯けいいを聞き出す 〉
みたいなことをせねばならぬのかと。

クロイツが脱力だつりょく項垂うなだれた時。
瀬戸際せとぎわさっし、ノシュウェルは覚悟かくごする。

何しろ、あの策士さくしが。
あのクロイツが、眉間みけんおさえながら白目しろめいていたのだ。

ようするにこわれかけている。
こればっかりは見過みすごすわけにはいかない。

こうなりゃ俺が一発いっぱつ蹴飛けとばされてまるおさめるしか ... ...

しかし、どうしよう。
いざ考えると気がいた。

異端ノ魔導師と決別けつべつしてしまっては、われる立場たちば脱却だっきゃくするためのみちざされてしまう。
どうにかしてクロイツを正気しょうきもどさねばならない。

すると思い立つ。

彼の手元てもとには、し入れそこなった葉ノ湯はのゆ
それも、すっかりめてしまっている ... が、かまってなどいられない。

意気込いきごむノシュウェルは颯爽さっそうみ出した。
けれども、いざとなると手がふるえる。

〈 カタカタカタカタ ... ... 〉

差し出した茶陶ティーカップ受皿ソーサー小刻こきざみにる。

ですよね。

だって怖いもん ... ...

れどあとには引けぬ。
やるしかない。

クロイツがフェレンスにたいしブチキレてしまわないよう。
いかりの矛先ほこさきえるために。

そう思った。

名付なづけて ... ... いつか行った女中喫茶メイドきっさの女の子を、全力ぜんりょく真似まねしてみる作戦さくせん

何のこっちゃ ... ...

ノシュウェルが、自問自答じもんじとうしはじめたのは、
きっと、恐怖きょうふわれわすれているせい。

すっかりとやくに入った彼は言う。

「ご注文ちゅうもんのおちゃを、おちしましたぁ!
 そしてそしてぇ! 何だか元気げんきのな~い、ご主人様しゅじんさまのために~!
 わたし、ノシュウェルが! 萌々もえもえ魔法まほうをかけちゃいまぁ~す!」

いや、これ、大丈夫だいじょうぶか ... ...

ノシュウェルのよこで、フラリ ... 立ち上がるクロイツは無言むごんだ。

「いっくよぉ~!」

やめとけ ... ...

われながら度胸どきょうをしていると思うが。
中途半端ちゅうとはんぱめたところで、どうせめられるので。

「せぇのぉ!」

やりきろう ... そう思った ... が。

あまかった ... ... 

おに形相ぎょうそういたクロイツと目が合ったのは、
魔法まほう呪文じゅもんとなえる二秒前にびょうまえ

「ノシュノシュ♥ ウェルウェル♥
 ミラクル ラブラ~ブ パワ~! ちゅ~~~にゅ゛う゛ふぉ゛!!」

そうしてはじまったのが、左鉤打ひだりフックと、りの応酬おうしゅうだ。

〈ドスッ〉

「 ウ ザ イ !!」

〈ガシッ〉

「 長 い !!」

〈ドシッ〉

「 気  色  悪き し ょ く わ る い !!」

〈バキッ〉

つづく。

軽快リズミカルののしられながら何度なんどつぶされたことか。
気をうしな寸前すんぜんのところでゆかびているノシュウェルには、知るよしも無い。

ただ、どうせなら最後さいごまで言わせてしかったなぁ ... ...

なんて、っすらと考えていたような。
クロイツも、そこそこ気遣きづか手加減てかげんしてやったらしい。
それはそれで、とんでも作戦さくせんこうそうしたか。

まったく ... どいつもこいつも ... ...

発散はっさん調子ちょうしもどしたクロイツは、
先程さきほどちゃ一飲ひとのみにして、せきもどった。

すると、げ出していた古書こしょの右ぺーじ
ペラペラと音を振動しんどうしているように見える。

まさかと思い手に取ると。

あんじょう、フェレンスがいきころわらっていた。
ひくく、うなるような声でクロイツは言う。

『 貴様 き ー さ ー ま ー  』 

その一方いっぽう困惑こんわくしたのは、それまでのやり取りを聞かされているがわだ。
もうしわけ程度ていどびるフェレンスは、それでもまだ笑い声をらしている。

『 フ ... ああ、すまない ... ...  フフ ... 』

たいして。

フフ じゃねーよ ... ...

と、思ったのは、さて誰だろう。

「て言うか、あの人 ... 今ので笑えるってどうなの」
「うん。まぁ。良く言えば、うつわが大きいってこと ... なのかな」

このところで言えば、わりと馴染なじみの二人。
ノシュウェルの元部下もとぶか、ルースとアルウィ、両名りょうめいである。

彼等かれらのもとにとどくのは、解析かいせき必要ひつよう信号しんごうのみ。
だが、フェレンスから事前じぜんっていた魔導具マギアムパーツめられた法則コードにより、
音声おんせいへと変換へんかんし聞くことが出来た。

とは言え、本来ほんらい目的もくてき盗聴とうちょうなどではない。
密偵みっていあぶり出しだ。

どこに仕掛しかけられているかも分からない盗撮機とうさつき発信はっしん傍受ぼうじゅし、分析中ぶんせきちゅう
確認かくにんされた特有とくゆう波導はどうは、
高度こうど錬金術れんきんじゅつもち生産せいさんされる、魔導素子まどうそしのそれと一致いっちしている。

そう。

アイゼリア王党派おうとうは帝国ていこくつながり、そして、
フェレンスに付きまとっていた ... あの老人ろうじんが、
対立派閥たいりつはばつ諜報員ちょうほういんであることを明確めいかくにしたのは彼等かれらだった。

フェレンスとクロイツの動向どうこうつね監視かんしされているうえ。
目を光らせているのは、ウルクアのいきかった男、二人であるからして。

それらの情報じょうほう極内密ごくないみつ精査せいさするためには、
目引めひやくの他、裏方うらかたてなければならず。
適任てきにん見做みなされたらしい。

ただし、フェレンスやクロイツから直接ちょくせつ指示しじがあったわけではない。

行動こうどうすべきと自身じしん判断はんだんし、傍受ぼうじゅこころみていたところ。
思いもらぬ後押しサポートがあったので。

まぁ、そう言うことだろうなと。

魔法のめられた古書こしょはさまれていたしおりを見たクロイツは当初とうしょ
何も言わず彼等かれら手渡てわたした。

まず初めに受け取ったのはアルウィ。
彼はあやうく、それをてかけたが。
咄嗟とっさひろい上げたルースに、ためされているのだとさとされる。

り取りを目でっていたクロイツは満足気まんぞくげ

意図いとさっして、調しらべてみると。
箔押はくおしされた蒼金そうごんかざ模様もよう電磁でんじびており。
機器きき導通どうつうさせるなり解析かいせきコードとして展開てんかいされたのだ。

ねんのため確認かくにんした事と言えば、ウルクア直属ちょくぞく部下ぶかであるエルジオとヴォルトについてのみ。

ところが、両者りょうしゃ疑惑ぎわくなど無い。
クロイツは断言だんげんする。

あの二人は、何かしらとかせ奔放ほんぽうはたらいているだけなのだと。

うらかえせば、体裁ていさいよそおううのに丁度良ちょうどよく。
暗幕あんまくのような役割やくわりをしているようにもれるので。
いっそのこと併用へいようするつもりなのだろうと解釈かいしゃくした。

つまりは、あの二人がウルクアをしんじて行動こうどうすることに意味いみがある ... ... 

フェレンスがしずかに、そうげたのにたいし、クロイツはどうったか。
適格てきかく指揮しきをとり、王党派の密偵みっていらえ。
くすりはこ存在そんざいを知るにいたる。

ウルクアの独断専行どくだんせんこう牽制けんせいするため、
紳士アンドレイ尋問じんもんするまでの流れを確定かくていしたのも、この時だ。

異端ノ魔導師と元帝国軍人もとていこくぐんじんなど、
信用しんようしきれるはずも無いのだから、いた方無かたないとは思うが。

アイゼリアの二大勢力にだいせいりょくが、そろいも揃って、
対立派閥たいりつはばつよりも支援者しえんしゃへの警戒けいかいほうが強いなどとは、理解りかいがたく。
ながらく拮抗きっこうしてきたらしい党争とうそうにも違和感いわかんしかないため。
王党派とウルクアは、あえてたがいを野放のばなしにしているとにらんだよう。


そうしてむかえた ... この日。
素知そしらぬ様子ようすえんじてきたかんなぎ装衣そういて、きたる。
彼ノ魔導師かのまどうしが、動き出した。
 
 
 
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