砂糖な彼氏と塩な彼女の異世界冒険記!

星の書庫

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いざ、王都へ

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《梓side》
    「僕は、君達が大好きだ」
    マーリンの声は、その言葉を最後に聞こえなくなった。さっきまで私達と冗談を言い合っていた大賢者は、本当にこの世からいなくなったんだ。
「マーリンさん……。死んじゃったんだよね?」
「……ん」
「もう、この世にはいないんだよね……」
「……ん」
「そっか……。人が死ぬってこういう事なんだね」
「……ん」
「知ってる人が死ぬのってこんなに悲しいんだね……。こんなの初めてだから、相当辛いや」
「……ん。私達のせいで死んだ」
「そうだね……。仇……取らないとね」
「……ん」
「王都戦だっけ……?どうしようか……」
「出る」
「さえちゃんも出たい?」
「ん」
「そっか。じゃあ、出よう。王都戦で大賢者を倒すんだ……!」
「……ん」
    私と伊織はその場を後にした。チカの魔法で辺りが消し飛び、視界を邪魔する様なものは何もなかった。
「さえちゃん、王都ってあそこに見えるおっきい壁かなぁ」
「……ん?」
私の目には壁なんて見えない。怪訝そうにいおりを見ると、いおりの目が蒼く光っていた。
「いおり……その目」
「目?僕の目がどうかした?」
「蒼い……」
「え ︎それは大変だ!病気かなぁ……」
「魔法……使ったの?」
「えっ?……えへへ。バレちゃった?」
「……ん」
「さえちゃんにはかなわないなぁ。千里眼って言う魔法を作ってみたんだ。向いている方角の遠くが見えるって言う……。どう?」
「凄い……」
「ほんと ︎やったぁ!」
「……ん」
「さえちゃんに褒められたぁ……えへへ」
「……ん。それより王都は……」
「あ!そうだね!えっとねぇ……ここから北に八キロくらいかなぁ」
「……ん」
「行こっか!」
「ん……」
千里眼か……。いおりが自主的に魔法を使ったのには驚いた。この子も、成長している証なのかなぁ……。
    王都まで約八キロの、何もない平坦な道を私たち二人は歩いた。途中で二度、魔物の群れと遭遇したけど、私が全て片付けた。
「さえちゃんごめんね。あんまり、動物を傷つけるのは好きじゃないんだ……」
「……ん」
いおりは攻撃魔法が使えないことに負い目を感じているけれど、二度の魔物との戦いで私を助けてくれた。敵の接近に気づいたのも、私に強化魔法をかけてくれたのもいおりだ。それだけで助かっているのに……。
「僕がしっかりしないといけないのに……。ごめんね」
「大丈夫。そのままで」
いおりが相手になると、どうしても上手に喋ることができない。……早くどうにかしたい。
「そっか!ありがとう!」
「……ん」
「じゃあ、もうちょっとで王都に着くし頑張ろう!」
「……ん」
《伊織side》
    マーリンさんが死んだと分かった時は、とてもショックでした。この世界に来て僕達を救ってくれた恩人。僕に魔法を教えてくれた師匠。そんな人が殺されたんです。一緒に過ごした時間は短くても、僕とさえちゃんにとっては家族と同じように大切な存在だった筈です。
    だから、僕は許しません。マーリンさんを殺した大賢者さんを……。絶対に許せないです!王都戦であの技を使って……。絶対に大賢者さんを倒します!
「いおり?」
「あ、うん!どうしたのさえちゃん ︎」
「着いたよ、王都」
「うん!そうだね!楽しみだなぁ……」
さえちゃんには明るく振る舞わないと。怖いって思われちゃうかなぁ……。
「大丈夫、私も同じ気持ち」
「ふぇ……?」
「絶対、チカを倒そう」
「う、うん!」
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