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二人で再出発です⁉︎
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《伊織side》
「……ん?」
気が付いたら、僕とさえちゃんの二人だけになっていました。僕とさえちゃんを囲んで、円状に地面が盛り上がっているだけで、何も残っていませんでした。
「さえ……ちゃん?」
「……ん。いおり」
「これ……。どうなってるのかな……」
「多分、大賢者の魔法。マーリンは……死んだと思う」
え?さえちゃん、今なんて言った……?
「今なんて……?」
「……マーリンは、多分死んだ」
「え……?そんな、嘘だよ!マーリンさんが死ぬはずない!」
嘘だ。マーリンさんは絶対生きてる……。
「この規模の爆発で、生きているはずがない」
さえちゃんがそう言うなら間違っていないだろうけど……。信じたくない。マーリンさんが死んだ……?
「ほんとに……?」
「あぁ、本当さ」
背後からマーリンさんの声がしました。やっぱり、マーリンさんが僕達をからかっていただけなんだ。良かった……。
「……ぇ」
「ぇ?」
振り返って、僕達は言葉を失いました。
「マーリさん、どこ……?」
マーリンさんがどこにもいませんでした。それでも、声だけは聞こえてきます。
「梓ちゃんの言う通り、僕はチカの魔法で死んだよ」
「マーリンさん……、どこ?僕達をからかうのはやめてよ……」
「からかってなんかないさ。僕は死んだんだ。今は死ぬ瞬間に施したコネクティングで話しているんだ」
「どういうこと……?」
「今僕はここにいないだろう?死後の世界からこっちに、電話みたいなものを繋げているのさ。それももう長くはないかな。簡潔に話そう、君達に謝らないといけないことがあるんだ」
「……ん。手短にお願い」
「相変わらず梓ちゃんはきついなぁ」
マーリンさんはいつもの笑うような、困ったような声で言いました。
「二人とも、僕が二人に近付いた理由を隠していてごめん。今思えば、隠すような内容でもなかったんだけどね」
「……全くだ」
「死人にくらい優しくしておくれよ……。話は変わるけど、僕は、あいつが魔法を放つ直前、君達を生かすために渾身の防御魔法を施したんだ。死んでなくて良かったよ……」
「僕達なんて見殺しにして、マーリンさんが生きれば良かったのに……」
「そうはいかないんだよ、伊織。実際問題、僕という存在は、この世界にとっては厄介だったんだ。何百年も生きていればね。ここで死ぬべきだったんだ」
「……」
「そんなことない!」
「あるんだよ。割り切りなさい」
「う……。で、でも!」
「この世界に「でも」はないんだ。僕は君達のために死ねて良かったよ」
「……ん。マーリン」
「なんだい、梓ちゃん?」
「いおりを守ってくれてありがとう」
「お構いなく」
「マーリンさん……」
「伊織。師匠なんていなくても、君は強くなれる。誇りを持ちなさい」
「でも……」
「僕がマーリンさんを殺したんだぁ。なんて戯言はしまっておきなさい。君はまだ若いんだ。生きて、魔法で未来を創りなさい」
「……うん」
「攻撃魔法は使うなよ。魔法は、傷つける道具じゃない。未来への架け橋は、その使われ方を望まない。どうしても使わなきゃいけない時は、そうだな……。梓ちゃんを守る時と、チカを倒す時だ。【タイムストップ】だけ使えれば事足りるはずさ」
「うん、わかった」
「チカが君に魔法の刃を向けた時、『大賢者の卵』は失われた。代わりに、『正賢者の遺志』を授けてやった。気楽にこの世界を旅しなさい。困った人を見たら助けるんだぞ」
「うん……」
「梓ちゃんも、いおりを頼むね」
「……言われなくても守り抜く」
「いい心意気だ。伊織、男なんだからしっかりしろよ?梓ちゃんを守れるのは君だけだ」
「わかってるよ!マーリンさんに言われなくても、さえちゃんは僕が守るよ!」
「うん。二人とも、最期の数日間を一緒に過ごしてくれてありがとう」
「……ん」
「……うん」
「僕は、君達が大好きだ」
その言葉を最後に、声は聞こえなくなりました。
「……ん?」
気が付いたら、僕とさえちゃんの二人だけになっていました。僕とさえちゃんを囲んで、円状に地面が盛り上がっているだけで、何も残っていませんでした。
「さえ……ちゃん?」
「……ん。いおり」
「これ……。どうなってるのかな……」
「多分、大賢者の魔法。マーリンは……死んだと思う」
え?さえちゃん、今なんて言った……?
「今なんて……?」
「……マーリンは、多分死んだ」
「え……?そんな、嘘だよ!マーリンさんが死ぬはずない!」
嘘だ。マーリンさんは絶対生きてる……。
「この規模の爆発で、生きているはずがない」
さえちゃんがそう言うなら間違っていないだろうけど……。信じたくない。マーリンさんが死んだ……?
「ほんとに……?」
「あぁ、本当さ」
背後からマーリンさんの声がしました。やっぱり、マーリンさんが僕達をからかっていただけなんだ。良かった……。
「……ぇ」
「ぇ?」
振り返って、僕達は言葉を失いました。
「マーリさん、どこ……?」
マーリンさんがどこにもいませんでした。それでも、声だけは聞こえてきます。
「梓ちゃんの言う通り、僕はチカの魔法で死んだよ」
「マーリンさん……、どこ?僕達をからかうのはやめてよ……」
「からかってなんかないさ。僕は死んだんだ。今は死ぬ瞬間に施したコネクティングで話しているんだ」
「どういうこと……?」
「今僕はここにいないだろう?死後の世界からこっちに、電話みたいなものを繋げているのさ。それももう長くはないかな。簡潔に話そう、君達に謝らないといけないことがあるんだ」
「……ん。手短にお願い」
「相変わらず梓ちゃんはきついなぁ」
マーリンさんはいつもの笑うような、困ったような声で言いました。
「二人とも、僕が二人に近付いた理由を隠していてごめん。今思えば、隠すような内容でもなかったんだけどね」
「……全くだ」
「死人にくらい優しくしておくれよ……。話は変わるけど、僕は、あいつが魔法を放つ直前、君達を生かすために渾身の防御魔法を施したんだ。死んでなくて良かったよ……」
「僕達なんて見殺しにして、マーリンさんが生きれば良かったのに……」
「そうはいかないんだよ、伊織。実際問題、僕という存在は、この世界にとっては厄介だったんだ。何百年も生きていればね。ここで死ぬべきだったんだ」
「……」
「そんなことない!」
「あるんだよ。割り切りなさい」
「う……。で、でも!」
「この世界に「でも」はないんだ。僕は君達のために死ねて良かったよ」
「……ん。マーリン」
「なんだい、梓ちゃん?」
「いおりを守ってくれてありがとう」
「お構いなく」
「マーリンさん……」
「伊織。師匠なんていなくても、君は強くなれる。誇りを持ちなさい」
「でも……」
「僕がマーリンさんを殺したんだぁ。なんて戯言はしまっておきなさい。君はまだ若いんだ。生きて、魔法で未来を創りなさい」
「……うん」
「攻撃魔法は使うなよ。魔法は、傷つける道具じゃない。未来への架け橋は、その使われ方を望まない。どうしても使わなきゃいけない時は、そうだな……。梓ちゃんを守る時と、チカを倒す時だ。【タイムストップ】だけ使えれば事足りるはずさ」
「うん、わかった」
「チカが君に魔法の刃を向けた時、『大賢者の卵』は失われた。代わりに、『正賢者の遺志』を授けてやった。気楽にこの世界を旅しなさい。困った人を見たら助けるんだぞ」
「うん……」
「梓ちゃんも、いおりを頼むね」
「……言われなくても守り抜く」
「いい心意気だ。伊織、男なんだからしっかりしろよ?梓ちゃんを守れるのは君だけだ」
「わかってるよ!マーリンさんに言われなくても、さえちゃんは僕が守るよ!」
「うん。二人とも、最期の数日間を一緒に過ごしてくれてありがとう」
「……ん」
「……うん」
「僕は、君達が大好きだ」
その言葉を最後に、声は聞こえなくなりました。
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