30年越しの手紙

星の書庫

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ファースト〇〇(3)

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 十二月二十日。時刻は午後四時半。そろそろ授業が終わる頃だろうか。僕は何をするでもなく、ただ漠然と天井を見つめていた。
「動かなくちゃ……」
頭では分かっていても、行動に移すことができない。体が重く感じた。
「……はぁ」
やっとの事で体を起こし、僕は部屋のドアに手をかけた。
「……ん?」
ドアがいつもより重い。
「……疲れてんのかな」
僕は少し強く力を込めた。今度はドアが軽く、勢い良く開いた。同時に、部屋の外で鈍い音がした。
「いったぁい……」
「……え?」
聞こえた声は、彼女のものだった。
「……ハルキのばかぁ」
「な、何してるのさ」
「何って……。お見舞い?」
「なんで疑問形なの?」
「具合悪いのかなぁって」
「……そっか」
二人とも無言のまま、数分が経った。
「……部屋、入ろっか」
「う、うん……」

「体調良くなった?」
「元から悪くないよ」
「えっ⁉︎」
「仮病使った」
「……そっか」
「うん」
「……じゃあ」
彼女は視線を落として、きまり悪そうに聞いてきた。
「私のせい……だよね?」
「……そうじゃないって言えば嘘になるかな」
「やっぱりかぁ……」
彼女はあからさまに肩を落とした。
「……ごめん」
「いやいや!私が悪いんだし!」
「僕のせいでもあるから」
「うー……」

 そしてまた、無言のまま時間だけが流れていく。
「……怒ってる?」
「……別に、怒ってないよ?」
「絶対怒ってるって!」
「怒ってないって!」
「やっぱり怒ってるじゃん!」
「だから怒ってない!」
「うぅ……」
「……」
「……」
 二人の間に、再び沈黙が流れた。

「……ごめんね」
「うん。僕の方こそ、ごめん」
「私があんな事言わなければ……ね?」
「あ……」
彼女は、恥ずかしそうに笑った。
「全然そんな事ないよ。ただ、女の子もそういう事考えるんだなって」
「そんな事言わないでぇ……」
「ごめんごめん」
さっきまでが嘘のように思えてきた。僕たちは、お互いを見て笑い合った。
「なんかさ」
「うん?」
「さっきまで喧嘩してたのが嘘みたいだね」
考えてることがまったく同じで、僕はまた笑ってしまった。
「なんで笑うのー!」
「いや、同じ事考えてたなって」
「そうなの?」
「うん」
「そうなんだ……えへへ」
「なんでニヤニヤしてるのさ」
「面白くって」
そう言って、彼女はにひひと笑った。久しぶりに彼女の笑った顔を見た気がする。
そんな彼女が可愛くて、何よりも愛しかった。
「……ひな」
「んー?」
「……ふぇ⁉︎」
「ごめん。抑えきれない」
 気付くと、彼女を抱きしめていた。彼女は小さくて、柔らかかった。
「キスしても良い?」
「……うん」
二人の唇が重なった。
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