6 / 54
お泊まり会
しおりを挟む
ある金曜日の夜。俺はクラスメイトの女子の家に泊まることになった。
家の主である神林茉莉は、落ち着かない様子で、立ち座りを繰り返している。落ち着かないのは俺も同じで、二人して何も手につかないような状態が、ずっと続いている。
「べ、勉強は後でいいから、あんた先にお風呂入ってきなさいよ」
「い、いや……。家主のお前が先に入るものだろう?お、お前こそ先に入ってきたらどうだ?」
お互いに勉強道具を広げているが、勉強なんて少しも進んでいない。ずっと同じような会話が続いている。
微妙な雰囲気が漂う小さい部屋の中、ようやく救いの手が差し伸べられた。
「こんこーん。二人とも、ご飯ができたわよ~。ってあら?お取り込み中だったかしら?」
「そんな事ないのくらい見ればわかるでしょ!あーお腹すいた!ほら、早くご飯食べましょう!」
史乃さんが部屋に入ってきたのを好機と捉えたのか、茉莉はすごい勢いで部屋を出て行った。
「あらら……。あの子もウブねぇ。我が娘ながら可愛いわね」
そう言って微笑む史乃さんを見て、少しだけ、空気の読めない彼女に救われた気がした。
史乃さんの手料理は絶品だった。料理のできない茉莉からは考えられないほどだ。俺が史乃さんの料理を絶賛すると、なぜか茉莉が嬉しそうにしていた。仲の良い親子なら当たり前なのだろうか。
夕食を食べ終えると、茉莉はそそくさと風呂場へかけて行った。当然、俺は史乃さんと二人きりになるわけで、色々なことを質問された。
「純くんは、まつりちゃんのどこが好きなのかな?」
「ちょ、何言ってるんですか!俺と茉莉はそんな仲じゃありませんって!第一、彼女は俺の事を相当嫌っているみたいですし……」
「そうかしら?まつりちゃんは『嫌いな人とは絶対に話さない!』って子だから、純くんの事は嫌っていないと思うけれど……」
「でも、本人の口から聞いてますし」
「あの子ね、私に一人の男の子の事を熱心に語るのよ。頭が良いだとか、私の馬鹿話に付き合ってくれるだとか。その男の子って、誰のことかしらね?」
史乃さんは小さく笑って、台所に行ってしまった。それは、茉莉に想い人がいるという事だろうか。だとしたら、俺がこうして彼女の家に泊まるのは、大きな誤解を生む気がするが……。まあいいか。
「あ、洗い物ならお手伝いしますよ」
「気を使わなくて良いのよ。若い子は若い子とお話しでもしてなさい」
手伝おうと席を立つと、彼女にやんわりと断られてしまった。
「着替えは脱衣所にお父さんのを出してあるから、あの子が上がったら早めに入っちゃいなさ~い」
「はい、ありがとうございます」
「ふふっ、いえいえ~」
それにしても、史乃さんのさっきの言葉はどういう意味だろうか。茉莉に好きな人がいるなら、俺は泊まらずに帰るべきだと思うが……。風呂にでも入ってゆっくり考えるか。
俺は肝心なことを忘れたまま、風呂場へと足を運んでいた。少し考えれば思い出せることだったが、そんな事を思い出せないまでに、俺は考え事に没入していた。
「えっ……」
脱衣所のドアを開けた瞬間、小さな悲鳴が俺の耳に入ってくる。その瞬間、俺は自分がしたことを悟った。
「え……あっ」
目の前には、ことの中心である神林茉莉の、小ぶりの胸を曝け出した姿があった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
家中を、彼女の悲鳴が響き渡った。
家の主である神林茉莉は、落ち着かない様子で、立ち座りを繰り返している。落ち着かないのは俺も同じで、二人して何も手につかないような状態が、ずっと続いている。
「べ、勉強は後でいいから、あんた先にお風呂入ってきなさいよ」
「い、いや……。家主のお前が先に入るものだろう?お、お前こそ先に入ってきたらどうだ?」
お互いに勉強道具を広げているが、勉強なんて少しも進んでいない。ずっと同じような会話が続いている。
微妙な雰囲気が漂う小さい部屋の中、ようやく救いの手が差し伸べられた。
「こんこーん。二人とも、ご飯ができたわよ~。ってあら?お取り込み中だったかしら?」
「そんな事ないのくらい見ればわかるでしょ!あーお腹すいた!ほら、早くご飯食べましょう!」
史乃さんが部屋に入ってきたのを好機と捉えたのか、茉莉はすごい勢いで部屋を出て行った。
「あらら……。あの子もウブねぇ。我が娘ながら可愛いわね」
そう言って微笑む史乃さんを見て、少しだけ、空気の読めない彼女に救われた気がした。
史乃さんの手料理は絶品だった。料理のできない茉莉からは考えられないほどだ。俺が史乃さんの料理を絶賛すると、なぜか茉莉が嬉しそうにしていた。仲の良い親子なら当たり前なのだろうか。
夕食を食べ終えると、茉莉はそそくさと風呂場へかけて行った。当然、俺は史乃さんと二人きりになるわけで、色々なことを質問された。
「純くんは、まつりちゃんのどこが好きなのかな?」
「ちょ、何言ってるんですか!俺と茉莉はそんな仲じゃありませんって!第一、彼女は俺の事を相当嫌っているみたいですし……」
「そうかしら?まつりちゃんは『嫌いな人とは絶対に話さない!』って子だから、純くんの事は嫌っていないと思うけれど……」
「でも、本人の口から聞いてますし」
「あの子ね、私に一人の男の子の事を熱心に語るのよ。頭が良いだとか、私の馬鹿話に付き合ってくれるだとか。その男の子って、誰のことかしらね?」
史乃さんは小さく笑って、台所に行ってしまった。それは、茉莉に想い人がいるという事だろうか。だとしたら、俺がこうして彼女の家に泊まるのは、大きな誤解を生む気がするが……。まあいいか。
「あ、洗い物ならお手伝いしますよ」
「気を使わなくて良いのよ。若い子は若い子とお話しでもしてなさい」
手伝おうと席を立つと、彼女にやんわりと断られてしまった。
「着替えは脱衣所にお父さんのを出してあるから、あの子が上がったら早めに入っちゃいなさ~い」
「はい、ありがとうございます」
「ふふっ、いえいえ~」
それにしても、史乃さんのさっきの言葉はどういう意味だろうか。茉莉に好きな人がいるなら、俺は泊まらずに帰るべきだと思うが……。風呂にでも入ってゆっくり考えるか。
俺は肝心なことを忘れたまま、風呂場へと足を運んでいた。少し考えれば思い出せることだったが、そんな事を思い出せないまでに、俺は考え事に没入していた。
「えっ……」
脱衣所のドアを開けた瞬間、小さな悲鳴が俺の耳に入ってくる。その瞬間、俺は自分がしたことを悟った。
「え……あっ」
目の前には、ことの中心である神林茉莉の、小ぶりの胸を曝け出した姿があった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
家中を、彼女の悲鳴が響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
簒奪女王と隔絶の果て
紺乃 安
恋愛
穏やかな美青年王子が、即位した途端に冷酷な王に変貌した。そしてそれが、不羈の令嬢ベアトリスの政略結婚相手。
ポストファンタジー宮廷ロマンス小説。
※拙作「山賊王女と楽園の涯」の完結編という位置づけでもありますが、知らなくとも問題ないよう書いてあります。興味があればそちらもお読みください(ただしずいぶんジャンルが違い、とても長いです)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる