【本編完結】瓦解

星の書庫

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お泊まり会

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 ある金曜日の夜。俺はクラスメイトの女子の家に泊まることになった。
 家の主である神林茉莉は、落ち着かない様子で、立ち座りを繰り返している。落ち着かないのは俺も同じで、二人して何も手につかないような状態が、ずっと続いている。
「べ、勉強は後でいいから、あんた先にお風呂入ってきなさいよ」
「い、いや……。家主のお前が先に入るものだろう?お、お前こそ先に入ってきたらどうだ?」
お互いに勉強道具を広げているが、勉強なんて少しも進んでいない。ずっと同じような会話が続いている。
 微妙な雰囲気が漂う小さい部屋の中、ようやく救いの手が差し伸べられた。
「こんこーん。二人とも、ご飯ができたわよ~。ってあら?お取り込み中だったかしら?」
「そんな事ないのくらい見ればわかるでしょ!あーお腹すいた!ほら、早くご飯食べましょう!」
 史乃さんが部屋に入ってきたのを好機と捉えたのか、茉莉はすごい勢いで部屋を出て行った。
「あらら……。あの子もウブねぇ。我が娘ながら可愛いわね」
そう言って微笑む史乃さんを見て、少しだけ、空気の読めない彼女に救われた気がした。

 史乃さんの手料理は絶品だった。料理のできない茉莉からは考えられないほどだ。俺が史乃さんの料理を絶賛すると、なぜか茉莉が嬉しそうにしていた。仲の良い親子なら当たり前なのだろうか。

 夕食を食べ終えると、茉莉はそそくさと風呂場へかけて行った。当然、俺は史乃さんと二人きりになるわけで、色々なことを質問された。
「純くんは、まつりちゃんのどこが好きなのかな?」
「ちょ、何言ってるんですか!俺と茉莉はそんな仲じゃありませんって!第一、彼女は俺の事を相当嫌っているみたいですし……」
「そうかしら?まつりちゃんは『嫌いな人とは絶対に話さない!』って子だから、純くんの事は嫌っていないと思うけれど……」
「でも、本人の口から聞いてますし」
「あの子ね、私に一人の男の子の事を熱心に語るのよ。頭が良いだとか、私の馬鹿話に付き合ってくれるだとか。その男の子って、誰のことかしらね?」
史乃さんは小さく笑って、台所に行ってしまった。それは、茉莉に想い人がいるという事だろうか。だとしたら、俺がこうして彼女の家に泊まるのは、大きな誤解を生む気がするが……。まあいいか。
「あ、洗い物ならお手伝いしますよ」
「気を使わなくて良いのよ。若い子は若い子とお話しでもしてなさい」
手伝おうと席を立つと、彼女にやんわりと断られてしまった。
「着替えは脱衣所にお父さんのを出してあるから、あの子が上がったら早めに入っちゃいなさ~い」
「はい、ありがとうございます」
「ふふっ、いえいえ~」
 それにしても、史乃さんのさっきの言葉はどういう意味だろうか。茉莉に好きな人がいるなら、俺は泊まらずに帰るべきだと思うが……。風呂にでも入ってゆっくり考えるか。
 俺は肝心なことを忘れたまま、風呂場へと足を運んでいた。少し考えれば思い出せることだったが、そんな事を思い出せないまでに、俺は考え事に没入していた。
「えっ……」
脱衣所のドアを開けた瞬間、小さな悲鳴が俺の耳に入ってくる。その瞬間、俺は自分がしたことを悟った。
「え……あっ」
 目の前には、ことの中心である神林茉莉の、小ぶりの胸を曝け出した姿があった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
 家中を、彼女の悲鳴が響き渡った。
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