【本編完結】瓦解

星の書庫

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 二時。俺は神林茉莉を待っていた。
 「あいつ、自分で時間指定しておいて遅刻かよ……。ん?」
 彼女の自分勝手さに頭を抱えていると、当の本人から電話がかかってきた。
『もしもし。もう駅前に着いてる?』
「あぁ、今到着したところだが。自分で時間指定して遅刻とは、舐めたマネしてくれるな」
『違うのよ。道に迷っちゃって、助けてくれない?』
「助けるって言ったって、どうやってだよ」
『今、私はここら辺で1番高いビルの横にいるわ』
「はぁ?……あ、おい!」
茉莉は、自分の大体の場所を伝えて、電話を切った。
分かるのは、大きなビルの近くということだけ。
「あいつ、絶対楽しんでるな」
おおかた、近くで俺の事を見ているのだろう。辺りを見回すと、道を挟んだ向かい側に、高いビルがあった。
その前には、俺がよく知る人物が立っている。
「まったく、何をやってるんだよ……」
すると、また彼女から電話がかかってきた。
『見つけたなら、早くこっちに来なさいよ』
「はぁ、分かったよ」
『あんた、私服ダサいわね』
「別に、普通だろ」
『そう?』
 俺の服装はダサいのだろうか……。

 ようやく茉莉と合流し、俺たちはショッピングモールへと足を運んだ。
「まずはあんたの服ね」
「お、おう」
やっぱり、俺の服はダサいのか……。
一人落ち込む俺を見て、茉莉はフォローしてくれた。
「ダサくはないけど、もうちょっとオシャレしても良いと思うのよね。そのままだと少し、陰キャラっぽいわ」
それって、暗にダサいと言っているようなものじゃないか。
「細かいことは気にしないの。ほら、入るわよ」
俺達は、いつの間にか、高そうな服を売っている店の前まで来ていた。俺がいつも行っているユ〇クロとは大違いだ。
「最近の若者は、こんな所で服を買うのか……?」
挙動不審気味の俺を横目に見ながら、茉莉は女の店員に話しかけた。
「すみません。この人に合いそうなのを何着か見たいんですが」
「かしこまりました。少々お待ちください」
彼女は俺を一瞬だけ見て、嫌そうな顔をした後、すぐに営業スマイルを浮かべて服を見繕い始めた。するといきなり、その店員から爆弾発言が飛び出した。
「彼氏さんですか?」
「だ、誰がこんな奴と!」
どうやら話しかけられたのは茉莉らしい。いきなりの事で俺も驚いたが、彼女はそれ以上に動揺していた。
「そうなんですねぇ。失礼しました」
店員は薄ら笑いを浮かべながら、納得したように頷いた。
何がおかしい。俺の顔に何か着いてるのか?
「では、彼氏さん。この服を持って試着室へどうぞ」
「あ、はい」 
「だ、だから違うって!あんたからも何か言いなさいよ!」
「お、おう……」
そこまで全力で否定されたら、俺も少し悲しくなるのだが……。
「し、失礼しました……。この服なんかどうですか?お似合いだと思いますよ」
店員は笑顔をひくつかせながら、俺に合いそうな服を選んでくれた。
「ありがとうございます。試着しますね」

そう言って、俺は試着室へと入っていった。
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