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交わした約束
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八月も下旬に差し掛かった頃。俺は茉莉の家で、課題のテキストに目を通していた。
そのテキストには一文字も手書きの文字がなく、まっさらな状態だ。これは俺のではなく、目の前でぐったりしている茉莉のものだった。
「今、何日だ?」
「……二十四日」
「後何日で夏休みが終わると思う?」
「……七日」
「七日でこのテキスト、全部終わるか?」
「……終わりません」
片手に持った白紙のテキストを茉莉に渡して、俺はその場に座る。
「後で苦しむの、分かってただろ」
「だって……」
「言い訳か?」
「純と一緒の時間が楽しくて」
上目遣いでそう言う茉莉は、許してと言わんばかりに目で訴えてくる。
可愛くて許してしまいそうになるが、ここは茉莉のためにも我慢が必要だ。
「そんなこと言ったって、俺のテキストは見せないぞ」
「ちぇっ」
「舌打ちする暇があったら一ページでも進めなさい」
「はぁい……。純のけちんぼ」
「言ってろ」
困っている茉莉を見ると、少し心が痛む。だがここは彼女のためだと思って、心を鬼にする。
「俺も手伝ってやるから、頑張って終わらせるぞ」
「ほんと!?さすが私の彼氏!優しいところもあるじゃないの!」
「そうやってすぐ調子に乗ってると、後で痛い目を見るぞ」
「うぅ、はぁい」
ようやく、まっさらだったテキストに文字を書く時が来た。
俺が手伝っているからか、テキストはどんどん進んでいく。簡単な問題ばかりなので、容量を覚えた茉莉の進捗具合は、早かった。
「純は教えるのが上手いわね」
「そうか?俺はただ問題の根本を教えてるだけで、答えは教えてないぞ」
「それを教えるのが上手いって言うのよ」
「そういうものなのか」
「そいうものよ」
茉莉は満足げに頷く。
「将来は教師にでもなるの?」
……将来か。考えたことなかったな。人に教えるのは嫌いじゃないし、教師という道も悪くないかもしれない。
「……可能性はあるな」
「ふぅん。良いじゃん」
楽しそうに笑う茉莉を見て、いつかこの人を養っていくのだろうかと考える。
……気が早すぎたか。
「今、私と結婚したら……とか考えてたでしょ」
茉莉が、俺の心の中でも見透かしたように聞いてくる。
「なっ!」
「もしかして図星だった?」
そう言って笑う彼女は、からかうような視線で俺を見る。
「ま、まぁ……。当たってないこともないな」
「ほんと?実は、私も同じ事考えてたよ」
茉莉は恥ずかしそうに笑う。
なんだこの可愛い生き物。今すぐにでも抱きしめたくなる。
「はいはい。冗談はいいから早く課題を……」
「大好きだよ、純」
茉莉は、課題なんてどうでもいいと言うように、俺に抱きついてきた。
「……俺もだよ」
もう、課題なんてどうでもいいや。そのまま俺と茉莉は二人だけの甘い空間を、存分に楽しんだ。
結局、俺は彼女に厳しくできない性格だな。
八月三十一日。茉莉は泣きながらテキストを進めている。
「うぅぅぅぅぅぅぅ…………」
「今回ばかりは俺も悪かったと思ってる」
「だったら答えくらい見せてよ!」
「そんなことしたら茉莉のためにならないだろ」
「優しいのか鬼なのかどっちかにしてよ!」
「飴と鞭だ」
使い方を間違っている気がするが、それっぽく言っておけば茉莉は納得するだろう。
「むぅ……」
「口じゃなくて手と頭を動かせよ」
「分かってるわよ!」
俺は、頑張る彼女を横目に携帯をいじる。
ふと、一つのニュースに目が止まった。
「流星群、か……」
それは今夜、夜中に見えるらしい。できれば茉莉と見に行きたいと思ったのだが、本人が課題に追われているうちは黙っていよう。……と思い、携帯の電源を落とした時だった。
「流星群!?いつ!?」
「……」
独り言を聞かれてしまっていたようだ。まぁ、二人きりの空間で聞こえない方がおかしいか。
俺はため息混じりに茉莉の質問に返事する。
「……今夜だよ」
「今夜!?行きたい!」
「だめだ」
「なんでよ!」
「課題はどうするんだ?」
「ぐ……。それは、その……」
「夜までに全部終われば、見にくのを許可しても良いんだけどな……」
次の瞬間、茉莉はものすごい勢いでテキストを解き始めた。
「さっきまでとは大違いだな……」
「話しかけないで。今集中してるから」
さっきまでやりたくないと駄々をこねていた人とは思えない。とはいえ、せっかくやる気を出してくれたのだから、俺は黙って応援することにしよう。
二時間後。午後七時。凄まじい集中力を見せた茉莉は、本当にテキストを終わらせてしまった。
「すごいな……」
「でしょ!純と流星群を見たいから、頑張ったのよ!」
褒めて褒めてと、茉莉は俺に頭を擦り寄せてくる。
「……頑張ったな」
「えへへぇ。ありがとぉ」
できれば、いつもそのくらい集中してほしいのだが……。言いかけたが、せっかく彼女の機嫌が良いので、言う前に留めた。
「まあ、課題は全て終わらせたし。……一緒に見に行くか?」
茉莉はその言葉を聞いて、目を輝かせた。
「本当に!?行く!絶対行く!今からでも行く!」
「……今からだと時間が空きすぎるから、十時にまた迎えにくるよ」
「分かった!!!それまでに色々済ませておくわね!」
俺も、一度自分の家まで帰ることにした。夕飯や風呂などを済ませて、また茉莉の家にくると約束し、彼女の家を出た。
そのテキストには一文字も手書きの文字がなく、まっさらな状態だ。これは俺のではなく、目の前でぐったりしている茉莉のものだった。
「今、何日だ?」
「……二十四日」
「後何日で夏休みが終わると思う?」
「……七日」
「七日でこのテキスト、全部終わるか?」
「……終わりません」
片手に持った白紙のテキストを茉莉に渡して、俺はその場に座る。
「後で苦しむの、分かってただろ」
「だって……」
「言い訳か?」
「純と一緒の時間が楽しくて」
上目遣いでそう言う茉莉は、許してと言わんばかりに目で訴えてくる。
可愛くて許してしまいそうになるが、ここは茉莉のためにも我慢が必要だ。
「そんなこと言ったって、俺のテキストは見せないぞ」
「ちぇっ」
「舌打ちする暇があったら一ページでも進めなさい」
「はぁい……。純のけちんぼ」
「言ってろ」
困っている茉莉を見ると、少し心が痛む。だがここは彼女のためだと思って、心を鬼にする。
「俺も手伝ってやるから、頑張って終わらせるぞ」
「ほんと!?さすが私の彼氏!優しいところもあるじゃないの!」
「そうやってすぐ調子に乗ってると、後で痛い目を見るぞ」
「うぅ、はぁい」
ようやく、まっさらだったテキストに文字を書く時が来た。
俺が手伝っているからか、テキストはどんどん進んでいく。簡単な問題ばかりなので、容量を覚えた茉莉の進捗具合は、早かった。
「純は教えるのが上手いわね」
「そうか?俺はただ問題の根本を教えてるだけで、答えは教えてないぞ」
「それを教えるのが上手いって言うのよ」
「そういうものなのか」
「そいうものよ」
茉莉は満足げに頷く。
「将来は教師にでもなるの?」
……将来か。考えたことなかったな。人に教えるのは嫌いじゃないし、教師という道も悪くないかもしれない。
「……可能性はあるな」
「ふぅん。良いじゃん」
楽しそうに笑う茉莉を見て、いつかこの人を養っていくのだろうかと考える。
……気が早すぎたか。
「今、私と結婚したら……とか考えてたでしょ」
茉莉が、俺の心の中でも見透かしたように聞いてくる。
「なっ!」
「もしかして図星だった?」
そう言って笑う彼女は、からかうような視線で俺を見る。
「ま、まぁ……。当たってないこともないな」
「ほんと?実は、私も同じ事考えてたよ」
茉莉は恥ずかしそうに笑う。
なんだこの可愛い生き物。今すぐにでも抱きしめたくなる。
「はいはい。冗談はいいから早く課題を……」
「大好きだよ、純」
茉莉は、課題なんてどうでもいいと言うように、俺に抱きついてきた。
「……俺もだよ」
もう、課題なんてどうでもいいや。そのまま俺と茉莉は二人だけの甘い空間を、存分に楽しんだ。
結局、俺は彼女に厳しくできない性格だな。
八月三十一日。茉莉は泣きながらテキストを進めている。
「うぅぅぅぅぅぅぅ…………」
「今回ばかりは俺も悪かったと思ってる」
「だったら答えくらい見せてよ!」
「そんなことしたら茉莉のためにならないだろ」
「優しいのか鬼なのかどっちかにしてよ!」
「飴と鞭だ」
使い方を間違っている気がするが、それっぽく言っておけば茉莉は納得するだろう。
「むぅ……」
「口じゃなくて手と頭を動かせよ」
「分かってるわよ!」
俺は、頑張る彼女を横目に携帯をいじる。
ふと、一つのニュースに目が止まった。
「流星群、か……」
それは今夜、夜中に見えるらしい。できれば茉莉と見に行きたいと思ったのだが、本人が課題に追われているうちは黙っていよう。……と思い、携帯の電源を落とした時だった。
「流星群!?いつ!?」
「……」
独り言を聞かれてしまっていたようだ。まぁ、二人きりの空間で聞こえない方がおかしいか。
俺はため息混じりに茉莉の質問に返事する。
「……今夜だよ」
「今夜!?行きたい!」
「だめだ」
「なんでよ!」
「課題はどうするんだ?」
「ぐ……。それは、その……」
「夜までに全部終われば、見にくのを許可しても良いんだけどな……」
次の瞬間、茉莉はものすごい勢いでテキストを解き始めた。
「さっきまでとは大違いだな……」
「話しかけないで。今集中してるから」
さっきまでやりたくないと駄々をこねていた人とは思えない。とはいえ、せっかくやる気を出してくれたのだから、俺は黙って応援することにしよう。
二時間後。午後七時。凄まじい集中力を見せた茉莉は、本当にテキストを終わらせてしまった。
「すごいな……」
「でしょ!純と流星群を見たいから、頑張ったのよ!」
褒めて褒めてと、茉莉は俺に頭を擦り寄せてくる。
「……頑張ったな」
「えへへぇ。ありがとぉ」
できれば、いつもそのくらい集中してほしいのだが……。言いかけたが、せっかく彼女の機嫌が良いので、言う前に留めた。
「まあ、課題は全て終わらせたし。……一緒に見に行くか?」
茉莉はその言葉を聞いて、目を輝かせた。
「本当に!?行く!絶対行く!今からでも行く!」
「……今からだと時間が空きすぎるから、十時にまた迎えにくるよ」
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俺も、一度自分の家まで帰ることにした。夕飯や風呂などを済ませて、また茉莉の家にくると約束し、彼女の家を出た。
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