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交わした約束(2)
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午後十時。俺は約束通り茉莉の家に着いた。
「ちゃんと来たわね。じゃあ、行きましょうか」
「おう」
目的地は二駅先にある展望台。電車で三十分ほどの場所に、ひっそりと建っているらしい。
「よくそんな所知ってるな」
「こういうのは下調べが大事なのよ」
茉莉は自慢げに言う。いつの間に調べたのだろうか。真っ暗な道をライトで照らしながら、俺たちは駅まで歩いた。
電車に乗ると、茉莉は早々に寝てしまった。課題を終わらせるのに体力を使い切ったようで、簡単には起きそうにない。
「疲れてるのに、無理して来なくても良かったんだけどな」
とはいえ、茉莉と何かをしたり、どこかに出かけたりするのは楽しい。彼女がやりたいことはできる限り実現させてあげたいのが、俺の願いでもある。
少し上から目線な気もするが、他に言葉が見つからないのも事実。とにかく、俺は茉莉と一緒にいられるなら、何でも良い。
いつの間にか、目的の駅に着く直前まで来ていた。
「茉莉、もうすぐ着くぞ」
無駄だとは思ったが、一応彼女の方を揺らす。
案の定茉莉は起きないまま、駅に着いてしまった。仕方がないので、俺は茉莉をおんぶして電車を降りた。
歩いているうちに、茉莉は目を覚ました。
「ん……。ここは?」
「さっき電車を降りて、展望台まで歩いているところだぞ」
「私、いつから寝てた?」
「電車に乗ってすぐかな」
「そっかぁ。ねえ」
「ん、どうした?」
「もうちょっと、このままでもいい?」
「あぁ、良いよ」
茉莉をおぶったまま、俺は街頭の並ぶ道を歩いた。
程なくして、木造の建物が見えてきた。
「あ、ここね。ここからは自分で歩くわ」
「そうか。分かった」
茉莉を下ろすと、彼女は小走りで展望台まで駆け寄っていった。
「早く早く、遅れるわよ!」
「そんなに急がなくても、流星群は逃げないだろ」
「何言ってるのよ。早くしないと一番いい瞬間が見れないかもしれないじゃない!」
そう言って、茉莉は俺の元まで来て、手を握る。俺も、彼女の歩幅に合わせて展望台の階段を登った。
十二時を過ぎた。雲ひとつない星空の下、俺たちは流星群を待っている。
「来ないわね」
「……そうだな」
「せっかくお願い事しようと思ったのに、これじゃできないじゃないの」
「お願い事?」
「知らないの?流れ星が消えるまでに三回心の中で願い事すると、その願いが叶うのよ」
さも当然だと言わんばかりに、茉莉は首を傾げる。
「へえ、そうなのか。知らなかったな」
「あんた、勉強はできてもどこか抜けてるわね」
「うるさい。勉強できるから良いんだよ」
馬鹿にされたのに少しムッとして、俺は茉莉の頭を軽く小突く。彼女は痛ぁいとおどけて見せた。
「純は、どんなお願いするの?」
「言ったら叶わなくなりそうだな」
「酷い。そんな事ないわよ」
「じゃあ、茉莉の願いを聞かせてくれよ」
「私の?えぇ、別に良いけど」
「けど?」
「言ったら叶わなくなりそうね」
「なんだよそりゃ」
お互いの顔を見合わせて笑った。こんな時間が、ずっと続けば良いのにと、俺は心の中で願った。
口に出したら、永遠に叶わなくなりそうだったから。
「私の願いは、『純とずっと一緒にいたい』かな」
茉莉が、真剣な顔で呟く。彼女も同じ事を考えていることを知って、少し嬉しくなった。
「……そうか」
「ちょっと、反応薄くない?」
「いや、俺も同じ気持ちだなって思って」
「ほんと?それはよかった」
茉莉は嬉しそうにはにかむ。そんな彼女がたまらなく愛しくなり、俺は彼女の体に腕を回した。
「……いきなりはびっくりするよ」
「……ごめん」
「別に、怒ってないよ」
「そっか」
「ねえ、純」
「どうした?」
「ひとつ、約束しよっか」
「約束?」
「うん、約束。絶対に、結婚しようって」
「……うん。約束しよう」
「ちょっと気が早いかな?」
「全然。愛に時間なんて、必要ないよ」
「そっか。じゃあ、約束。将来絶対に結婚して、私のこと、幸せにしてね」
「うん。絶対に、君を幸せにするよ」
俺たちはキスをした。今までのどのキスより長く、特別な口付け。交わした約束を、忘れないように。
キスが終わると、二人で笑い合った。
傍から見れば、馬鹿馬鹿しくて、なんの効力もないただの口約束。だけど、俺たちにとってはそれで十分だった。
お互いの愛を確かめるのには、その時はまだ、十分すぎる約束だった。
「あ、見て!」
不意に、茉莉が空を指さす。彼女の視線の先には、ただ満点の星空が広がっているだけだ。しかし、何が言いたいのかは伝わった。
「願い事、するか?」
「うん!」
俺も、空を見上げる。気付けば、無数の星が空を流れていた。
夜中の展望台を照らす星は、三十分にわたって、暗闇に降り注ぎ続けた。
この日交わした約束を、俺は絶対に忘れないだろう。横にいる茉莉を、俺は絶対に幸せにすると心に決めた。
「ちゃんと来たわね。じゃあ、行きましょうか」
「おう」
目的地は二駅先にある展望台。電車で三十分ほどの場所に、ひっそりと建っているらしい。
「よくそんな所知ってるな」
「こういうのは下調べが大事なのよ」
茉莉は自慢げに言う。いつの間に調べたのだろうか。真っ暗な道をライトで照らしながら、俺たちは駅まで歩いた。
電車に乗ると、茉莉は早々に寝てしまった。課題を終わらせるのに体力を使い切ったようで、簡単には起きそうにない。
「疲れてるのに、無理して来なくても良かったんだけどな」
とはいえ、茉莉と何かをしたり、どこかに出かけたりするのは楽しい。彼女がやりたいことはできる限り実現させてあげたいのが、俺の願いでもある。
少し上から目線な気もするが、他に言葉が見つからないのも事実。とにかく、俺は茉莉と一緒にいられるなら、何でも良い。
いつの間にか、目的の駅に着く直前まで来ていた。
「茉莉、もうすぐ着くぞ」
無駄だとは思ったが、一応彼女の方を揺らす。
案の定茉莉は起きないまま、駅に着いてしまった。仕方がないので、俺は茉莉をおんぶして電車を降りた。
歩いているうちに、茉莉は目を覚ました。
「ん……。ここは?」
「さっき電車を降りて、展望台まで歩いているところだぞ」
「私、いつから寝てた?」
「電車に乗ってすぐかな」
「そっかぁ。ねえ」
「ん、どうした?」
「もうちょっと、このままでもいい?」
「あぁ、良いよ」
茉莉をおぶったまま、俺は街頭の並ぶ道を歩いた。
程なくして、木造の建物が見えてきた。
「あ、ここね。ここからは自分で歩くわ」
「そうか。分かった」
茉莉を下ろすと、彼女は小走りで展望台まで駆け寄っていった。
「早く早く、遅れるわよ!」
「そんなに急がなくても、流星群は逃げないだろ」
「何言ってるのよ。早くしないと一番いい瞬間が見れないかもしれないじゃない!」
そう言って、茉莉は俺の元まで来て、手を握る。俺も、彼女の歩幅に合わせて展望台の階段を登った。
十二時を過ぎた。雲ひとつない星空の下、俺たちは流星群を待っている。
「来ないわね」
「……そうだな」
「せっかくお願い事しようと思ったのに、これじゃできないじゃないの」
「お願い事?」
「知らないの?流れ星が消えるまでに三回心の中で願い事すると、その願いが叶うのよ」
さも当然だと言わんばかりに、茉莉は首を傾げる。
「へえ、そうなのか。知らなかったな」
「あんた、勉強はできてもどこか抜けてるわね」
「うるさい。勉強できるから良いんだよ」
馬鹿にされたのに少しムッとして、俺は茉莉の頭を軽く小突く。彼女は痛ぁいとおどけて見せた。
「純は、どんなお願いするの?」
「言ったら叶わなくなりそうだな」
「酷い。そんな事ないわよ」
「じゃあ、茉莉の願いを聞かせてくれよ」
「私の?えぇ、別に良いけど」
「けど?」
「言ったら叶わなくなりそうね」
「なんだよそりゃ」
お互いの顔を見合わせて笑った。こんな時間が、ずっと続けば良いのにと、俺は心の中で願った。
口に出したら、永遠に叶わなくなりそうだったから。
「私の願いは、『純とずっと一緒にいたい』かな」
茉莉が、真剣な顔で呟く。彼女も同じ事を考えていることを知って、少し嬉しくなった。
「……そうか」
「ちょっと、反応薄くない?」
「いや、俺も同じ気持ちだなって思って」
「ほんと?それはよかった」
茉莉は嬉しそうにはにかむ。そんな彼女がたまらなく愛しくなり、俺は彼女の体に腕を回した。
「……いきなりはびっくりするよ」
「……ごめん」
「別に、怒ってないよ」
「そっか」
「ねえ、純」
「どうした?」
「ひとつ、約束しよっか」
「約束?」
「うん、約束。絶対に、結婚しようって」
「……うん。約束しよう」
「ちょっと気が早いかな?」
「全然。愛に時間なんて、必要ないよ」
「そっか。じゃあ、約束。将来絶対に結婚して、私のこと、幸せにしてね」
「うん。絶対に、君を幸せにするよ」
俺たちはキスをした。今までのどのキスより長く、特別な口付け。交わした約束を、忘れないように。
キスが終わると、二人で笑い合った。
傍から見れば、馬鹿馬鹿しくて、なんの効力もないただの口約束。だけど、俺たちにとってはそれで十分だった。
お互いの愛を確かめるのには、その時はまだ、十分すぎる約束だった。
「あ、見て!」
不意に、茉莉が空を指さす。彼女の視線の先には、ただ満点の星空が広がっているだけだ。しかし、何が言いたいのかは伝わった。
「願い事、するか?」
「うん!」
俺も、空を見上げる。気付けば、無数の星が空を流れていた。
夜中の展望台を照らす星は、三十分にわたって、暗闇に降り注ぎ続けた。
この日交わした約束を、俺は絶対に忘れないだろう。横にいる茉莉を、俺は絶対に幸せにすると心に決めた。
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