【本編完結】瓦解

星の書庫

文字の大きさ
24 / 54

新しい出会い

しおりを挟む
 一月。高校一年の三学期になった。一年生はもうすぐ修学旅行ということもあり、全体的に少しうわついている。
旅行先は長野。四泊五日で、スキーを主に予定されているらしい。
「島崎はスキーやったことあんの?」
同じ班になった川嶋輝樹かわしまてるきは、俺の肩を叩いてそう聞いてくる。
「……あるよ」
グイグイ来られるのは苦手だ。
彼と話すようになってもう三ヶ月以上経つが、未だに距離感が掴めずにいる。なにしろ、川嶋は顔立ちが良く、クラスでも女子からの人気が高い。そんな彼が俺と仲良くしているのだ。当然、俺は周りから嫉妬の目線を向けられる事が多い。
だが、島崎はそんなのお構いなしと言ったように、誰とでも仲良くなる。それは俺に対しても例外ではなかった。
「マジかよ、楽しい?」
「普通。慣れれば楽しいよ」
「そっかー。じゃあさ、俺に滑り方教えてくれよ」
川嶋は友達だろ?と言って半ば強引に約束してくる。サッカー部に所属している彼は運動神経が良いので、放っておけば滑れるようになる気もするが……。まあいいか。俺も修学旅行まで一人でいるのは寂しいし、彼と一緒にいれば暇も潰せるだろう。
「よろしくな、島崎!」
川嶋は上機嫌に俺の肩を叩いて、どこかへ行ってしまった。変なやつだ。


 一週間後。修学旅行初日の朝。その日は雪が降っていた。
学校からバスで駅まで行き、新幹線に乗って移動する。川嶋は俺を見つけると、そのまま俺の横に座った。
「いやあ、楽しみだな」
「……そうでもない」
「なんだよ、つれねえな。スキーだぞ?」
「やったことあるし」
「そんなもんなのか」
「そんなもんだよ」
隣同士で座る俺達を見て、周りが小声で話す声が聞こえる。おおかた、俺が川嶋と行動を共にしているのが気に食わない女子たちだろう。
「川嶋は、俺なんかと話してて良いのか?」
「ん、どういう意味だ?」
「陽キャラの川嶋が陰キャラの俺と話してて、クラスの人は何も思わないのかって言ってるんだよ」
「島崎はいい奴だから関係なくね?」
皮肉まじりに放った言葉を、彼はあっさりと跳ね返してしまった。
「隠キャラとか陽キャラとかよく分からねーんだよな。俺は俺が良いと思った奴と話すのが楽しいし、それを人にとやかく言われる筋合いはねーよ」
「……そうか」
「おう、そうだ」
顔だけじゃなく性格までイケメンらしい。こいつには一生敵わないな。


 長野に着いたのは、その日の昼過ぎだった。ホテルは綺麗で、高校生が宿泊するにはもったいない程の豪華さだ。
「すっげぇ。俺、こんな豪華なホテル見たことねえよ。なあ、島崎?」
「……そうだね」
「そうだ、売店行こうぜ。今日は夜更かしするぞ!」
「あ、ちょっと待てって」
川崎は部屋を飛び出して行った。俺も後を追って部屋を後にする。
 フロント近くにある売店は人が多く、俺には耐えられそうにない空間だった。俺は買い物を川崎に任せ、先に部屋に戻ることにした。
それにしても、川崎はなぜ俺を気に入っているのだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、前に人がいる事に気付かず、ぶつかったしまった。
「きゃっ……」
「いっ……。あ、すみません。大丈夫ですか?」
ぶつかったのは俺と同じ高校の女子生徒だった。俺はなんとか倒れずに済んだが、相手の子は尻餅をついて転んでしまう。
「いてて……。すみません、大丈夫です」
「立てますか?」
そう言って、俺は彼女に手を差し出す。
「ありがとう、ございます……」
彼女は俺の手を借りて立ち上がると、顔を赤くしてそのまま立ち去ってしまった。
「あ、ちょっと……」
あからさまに避けられた気がするが……。仕方ないか。
「あれ、これって……」
肩を落とすと、目の前に生徒手帳が落ちているのを発見した。先程ぶつかった彼女のものだろうか。後で先生に届けておこう。その時、背後からいきなり声をかけられた。
「み~て~た~ぞ~」
「っ!?」
「お前、あんな可愛いこと手繋いじゃってよ。早速女の子を虜にしちゃったか」
「やめてくれよ、そんなんじゃないって」
一部始終を見られてたのか。
俺は恥ずかしくなって、川崎を置いて足早に部屋へと戻った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

ホウセンカ

えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー! 誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。 そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。 目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。 「明確な理由がないと、不安?」 桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは―― ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※イラストは自作です。転載禁止。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

簒奪女王と隔絶の果て

紺乃 安
恋愛
穏やかな美青年王子が、即位した途端に冷酷な王に変貌した。そしてそれが、不羈の令嬢ベアトリスの政略結婚相手。 ポストファンタジー宮廷ロマンス小説。 ※拙作「山賊王女と楽園の涯」の完結編という位置づけでもありますが、知らなくとも問題ないよう書いてあります。興味があればそちらもお読みください(ただしずいぶんジャンルが違い、とても長いです)。

処理中です...