【本編完結】瓦解

星の書庫

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青山玲の気持ち(2)

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 修学旅行も四日目に入った。今日の東京観光が終われば、あとは地元に帰るだけ。長いようで短い旅行だった。
今日は、青山さんと一緒に観光することになっている。待ち合わせ場所の東京駅は人が多く、迷子になりそうな場所だ。
約束の時間より早く到着した俺は、付近の有名な場所を調べる。
 三十分ほどして、青山さんの姿が見えた。彼女は俺を見つけると、小走りで近寄ってくる。
「ごめんなさい、待ちましたか?」
「僕も今来たところ」
「そうですか、良かったぁ」
付き合いたての恋人同士のような、他愛もない会話をして、俺たちは歩き出した。
「島崎さんは、どこか行きたい所はありますか?」
「そうだな……俺は特にないし、青山さんが行きたい場所で良いよ」
一応調べはしたが、女の人と行くのに最適な場所が思い当たらないので、彼女に任せることにした。
「そうですか。じゃあ、フルーツパフェを食べたいんですけど……良いですか?」


 東京駅のすぐ近くにある商業施設内。キッチンストリートと呼ばれるエリアの中に、その店はあった。
「うわぁ……おっきい」
運ばれてきたものを見て、青山さんは感嘆の声を漏らす。旬のフルーツをふんだんに使った迫力のある大きさのパフェは、女子一人で食べられる大きさではないように見える。
「これ、一人で食べるの?」
「もちろんです!」
「へ、へぇ……」
 青山さんは、パフェをあっという間に平らげてしまった。俺が残した分まで、綺麗さっぱりと。
「美味しかったです……」
満足したと言うように、彼女は笑う。次はどこに行きたいかと尋ねると、落ち着ける場所と答えた。
「じゃあ、公園にでも行こうか」
「それが良いですね」
俺達は噴水のある公園に足を運んだ。休日の昼間だと言うこともあり、人はまばらだ。
「ベンチがありますね。ちょっと座りませんか?」
「う、うん」
俺達は空いているベンチに座ると、綺麗な噴水を眺めた。
「噴水、すごいですね」
「そうだね」
「田舎にはこんな立派なもの、ありませんよね」
「作られもしないだろうね」
「ここの噴水って、夜になったらライトアップされるらしいですよ」
「そうなんだ、知らなかったな」
「……」
「……」
会話が続かず、二人して黙ってしまった。気まずい空間が出来上がる。
 沈黙を破ったのは、青山さんだった。
「島崎さんは私の事、どう思ってますか?」
「……どうって?」
「私を恋愛対象として、見れますか?」
「……多分」
「まだ、神林さんの方が大きいですか?」
「……うん」
「そうですか……」
彼女はどう思うのだろうか。自分より死んだ恋人を優先するのは、嫌だろうに。それでも、俺の事が好きなのだろうか。
「私は、島崎さんが好きです。好きな人は絶対に諦めたくありません」
「……でも」
「神林さんの話を聞いた時、すごく驚きました。そんな悲しい過去を背負っていたなんて知らなくて、デリカシーのない事をしてしまったと、反省もしました」
「うん」
「あなたにとっての神林さんのように、私にとってあなたはとても大事な人なんです。
一目惚れで、まだあなたの事を何も知らないけれど、想いの強さは誰にも負けません。誰にも負けたくないです。
今はまだ、神林さんが一番でも良い。いつか絶対に、私が一番になります。
島崎さん」
「は、はい」
「私と付き合ってください」
青山さんの目には、強い意志が宿っていた。俺の過去を聞いてもなお、俺の事を好いてくれる人。この人となら、幸せになれるのかなと、そう感じた。
賭けてみるのも良いかもしれない。新しい一歩を踏み出すために、彼女に賭けてみよう。青山さんは、そう思える人だ。
「僕からも、よろしくお願いします」


 島崎純は、神林茉莉のために大きな一歩を踏み出した。
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