【本編完結】瓦解

星の書庫

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悩み

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 四月。特に何の問題もなく、俺は二年生に進級する事ができた。
青山さんとの関係も順調だ。新学期では同じクラスになる事ができたし、一人ぼっちで過ごす事も少なくなった。
輝樹とは今年も同じクラスになった。彼は二年生になって部活が忙しくなったようで、一緒に過ごす機会が減った。

 進級してすぐに、進路調査の紙を配られた。
進学か就職かを決める簡単な調査だが、俺は未だに決める事ができずにいた。
「うぅむ……」
「島崎くん、どうかした?」
「進路の事で少しね……」
「進路かぁ、難しいもんね」
「うん」
彼女は進路が決まっているのだろうか。しっかりしているし、その辺は抜かりなさそうだが。
「青山さんはどっちにするの?」
「私は進学かなあ。看護系の専門学校に行くつもり」
悩む事なく、彼女はそう答える。
「そうなんだ」
「うん」
流石だなと感心する。高校二年の初めで、もう自分の将来像が見えているのか。
彼女はしっかりしていて、俺とは違うな。
「島崎くんは将来したいことってある?」
「俺が将来したい事?」
不意に、青山さんがそんな質問を投げかけてきた。
「そうそう。やりたい事を見つければ、進路にもつながると思うよ」
「……そっか。ありがとう」
「私でよければ、いつでも力になるからね」
的確なアドバイスをくれた彼女は、満足そうに頷いて、どこかへ行ってしまった。
 俺のやりたい事とは何なのか。自分でもよく分からない。


 俺は幼い頃から、何でも出来た。勉強ではいつも学年で上の方にいたし、運動もやろうと思えば人並みにこなせた。
不自由なく暮らしてきたせいで、何にも興味がなかったのかもしれない。
俺は一人考え、途方に暮れた。中途半端に頭が良くて、中途半端に運動ができる。そんな俺には、何が出来るのだろうか。
考えても分かる気がしなかったので、出来るだけ考えないようにして過ごした。


 担任から呼び出され、調査書を出していないのが俺だけだと言われた。
紙が配布されて一ヶ月が経っているし、逆に出していない方がおかしいのだろう。
そんな事を言われても、俺にはどうすることもできないが……。
「何もやりたい事がないのなら、大学に行ってみても良いんじゃないか?」
「大学ですか……」
教師としては、進学してもらいたいらしい。大学でやりたい事を見つけろとでも言いたいのだろうか。
「島崎の学力なら、少し頑張れば一流大学に手が届くと思うんだ。どうだ、やってみないか?」
「先生は、一流大学に行って欲しいんですか?」
「それが島崎のためになると思ってる」
先生は即答する。確かに、一流大学に行けば俺自身の株も上がるだろう。
「……少し考えます」
「その気になったらいつでも来いよ」


 大学でやりたい事を見つけるのも悪くないのか。そんな思いを抱えながら、俺はまた進路について考えた。
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