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過ち
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入学式の日。俺は正門前で野海愛花と会った。
「あ、おはよう」
「おはよう」
門をくぐってしばらくしたところで、違和感に気付く。
「お前、入学式は……?」
「……私が見えてないの?」
能海は何を言っているんだこいつはというような目で、俺をまじまじと見つめる。
「受かってただろ、あの大学」
「……聞いてたんだ」
能海はバツが悪いといった様子で、俯いた。
「なんでここにいるんだよ」
「あっちの合格、蹴っちゃったから」
「……は?」
俺は能海に怒りが湧いた。俺がどれだけ頑張っても手が届かなかった目標を、いつの間にか彼女はいとも簡単に投げ捨てていたのだ。
「蹴ったって……なんでだよ」
俺は能海を怒鳴りつけたい感情を必死に押し殺しながら、理由を聞く。
「……島崎がいないと、楽しくないから」
彼女から出た言葉はあまりにも幼稚で、自分勝手だった。
「はぁ……もういいや、怒る気にもならないわ」
俺はそれだけ言うと、能海を置いてさっさと会場まで足を運んだ。
どれだけ振り払っても、能海は俺についてきた。それは式が終わってからも続き、終いには俺の暮らすアパートの前までやってきた。
「あのなぁ……いつまでついてくる気だよ」
いい加減に嫌気が差して、俺はそれまで無視していた能海の方を振り返った。いきなりの事だったので驚いたのだろう。彼女の肩が縦に大きく弾んだ。
「……邪魔だった?」
「当たり前だ」
目を潤ませた能海の質問に、俺は食い気味に答える。
「そっか……」
迷惑じゃないとでも思っていたのだろうか。だとすれば、彼女は底なしのバカだ。
「だいたい、お前は何がしたいんだよ。俺に付き纏う理由を教えてくれ……でないと、俺はお前をストーカーとして警察に突き出す」
早く帰ってほしくて、俺は半ば強引に能海に詰め寄る。こう言えば、諦めて帰ってくれるだろう。そう思っていた。
「……きだから」
「え?」
いつも小さい能海の声だが、いつにもまして小さかったので思わず聞き返してしまった。
「島崎が好きだから……っ!」
その声は、今まで聞いてきた彼女のものの中で一番大きかった。
空が薄暗くなってきた時間帯。辺りには買い物帰りの主婦や、仕事で疲れて帰ってきたサラリーマンなど、様々な人が歩いている。能海がその声を発した瞬間、そのほぼ全員の目がこちらに集中していた。
能海は周りのことなど一切気にしていないらしく、俺のことをまっすぐ見つめている。
「……頼むから周りを見て言ってくれ」
「私……なんてことを……」
能海が膝を抱えて蹲った瞬間、それまで物音一つなかったその道路に、いつも通りの日常が戻った。まだこちらを見ている人もいるが、すぐに興味を失って自分たちの世界に入っていく。
「はぁ……ここで話してても埒が明かないし、とりあえず部屋に上がれ」
俺は玲よりも先に、能海を自分の部屋に招き入れた。
「あ、おはよう」
「おはよう」
門をくぐってしばらくしたところで、違和感に気付く。
「お前、入学式は……?」
「……私が見えてないの?」
能海は何を言っているんだこいつはというような目で、俺をまじまじと見つめる。
「受かってただろ、あの大学」
「……聞いてたんだ」
能海はバツが悪いといった様子で、俯いた。
「なんでここにいるんだよ」
「あっちの合格、蹴っちゃったから」
「……は?」
俺は能海に怒りが湧いた。俺がどれだけ頑張っても手が届かなかった目標を、いつの間にか彼女はいとも簡単に投げ捨てていたのだ。
「蹴ったって……なんでだよ」
俺は能海を怒鳴りつけたい感情を必死に押し殺しながら、理由を聞く。
「……島崎がいないと、楽しくないから」
彼女から出た言葉はあまりにも幼稚で、自分勝手だった。
「はぁ……もういいや、怒る気にもならないわ」
俺はそれだけ言うと、能海を置いてさっさと会場まで足を運んだ。
どれだけ振り払っても、能海は俺についてきた。それは式が終わってからも続き、終いには俺の暮らすアパートの前までやってきた。
「あのなぁ……いつまでついてくる気だよ」
いい加減に嫌気が差して、俺はそれまで無視していた能海の方を振り返った。いきなりの事だったので驚いたのだろう。彼女の肩が縦に大きく弾んだ。
「……邪魔だった?」
「当たり前だ」
目を潤ませた能海の質問に、俺は食い気味に答える。
「そっか……」
迷惑じゃないとでも思っていたのだろうか。だとすれば、彼女は底なしのバカだ。
「だいたい、お前は何がしたいんだよ。俺に付き纏う理由を教えてくれ……でないと、俺はお前をストーカーとして警察に突き出す」
早く帰ってほしくて、俺は半ば強引に能海に詰め寄る。こう言えば、諦めて帰ってくれるだろう。そう思っていた。
「……きだから」
「え?」
いつも小さい能海の声だが、いつにもまして小さかったので思わず聞き返してしまった。
「島崎が好きだから……っ!」
その声は、今まで聞いてきた彼女のものの中で一番大きかった。
空が薄暗くなってきた時間帯。辺りには買い物帰りの主婦や、仕事で疲れて帰ってきたサラリーマンなど、様々な人が歩いている。能海がその声を発した瞬間、そのほぼ全員の目がこちらに集中していた。
能海は周りのことなど一切気にしていないらしく、俺のことをまっすぐ見つめている。
「……頼むから周りを見て言ってくれ」
「私……なんてことを……」
能海が膝を抱えて蹲った瞬間、それまで物音一つなかったその道路に、いつも通りの日常が戻った。まだこちらを見ている人もいるが、すぐに興味を失って自分たちの世界に入っていく。
「はぁ……ここで話してても埒が明かないし、とりあえず部屋に上がれ」
俺は玲よりも先に、能海を自分の部屋に招き入れた。
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