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第2杯 ②
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「男前な方が藤井慎一くん――」
こっちを向いてから私服の男性が、あたしに頭だけで軽く会釈してくれた。
「俺は203号室の住人。こちらこそこれからよろしく」
次は制服の男の子を指さすと、さっきより雑な感じで岡島さんがあたしに紹介してくれる。
「このいかにもあほ面なのが、本田洋輔」
「って、なんで俺だけそんな紹介なんだよっ」
「っん? 特に意味はない」
「んっだよ、それ」
納得できない感じの顔が不満そうな様子。かと思えば、今度は皆に向けて自信たっぷりな口振りで言う。
「ってか、俺の方が男前じゃなくねっ」
「あんた……それ自分で言ってたら世話ないね」
本田くんは自分の事を一蹴した岡島さんを恨めしそうな顔でみている。
そこへ頷きながら藤井くんがとどめを刺す一言。
「確かに――」
3人の掛け合いにあたしはクスクスと小さく笑う。そんな本田くんは納得できないのか、まだまだ食い下がる模様。
「ってかふたり共、目が腐ってんじゃね?」
岡島さんは顔を横に振りながら、否定。
「腐ってない、腐ってない」
「ちょっ――即答って、マス姉ひどくね」
「――はいはい、それより自己紹介なんだから言う事あるだろ?」
「ああ、そっか。改めて202号室の本田洋輔。高3、よろしく」
「よろしくね、あたしの1つ下なんだ」
あたしの話から藤井くんが歳を計算したようで、ポツリと口を開く。
「じゃあ、宮野さんは大学1年って事か。俺の1つ下か」
「そそ。だから3人共歳近いから話合うんじゃない?」
「――――かな」
ポツリとまた答える藤井くん。
「で、結局何の話してたんだっけ?」
「誰が洋輔に勉強を教えるかって、話ですね」
「ああ、そそ。でどうなの、董子ちゃん?」
「――――――うーん」
あたしが答えあぐねて漏れた声に、藤井くんは見兼ねてか、もうひと押しとばかりに一言。
「それなら、俺もバイトがなければ、勉強みるし、ね?」
「――――あたしがわかる範囲でなら……」
「よかったじゃん、洋輔」
「まぁな。これも日頃の行いがいいからだろ」
冷たい視線の岡島さんがシラっと本田くんへ釘をさす。
「日頃の行いがいいから――じゃなく、董子ちゃん達が優しいからだろ」
岡島さんの言葉にタジタジな様子の本田くんは自分の顔を人差し指でかいている。
「まぁ、そうとも言うな」
「じゃあ、俺はそろそろ時間なんで、バイトに行きますね」
「頑張っていって来い、勤労学生君」
「じゃあな、慎一」
「いってらっしゃい、藤井くん」
みんなが見ている中、藤井くんはCafeを出て行った。
隣に立っていた本田洋輔くんはというと、あたしの隣に腰掛けた後、調子よく軽い感じに声をかけてきた。
「とりあえずよろしくっ董子」
「なっ呼び捨て……」
「ん――なんか問題でもあんの?」
「問題ないけど――」
「俺も洋輔でいいし」
「あっ董子ちゃん、あたしもマス姉でいいよ」
「じゃあ、ふたりの事はそう呼ばしてもらうね」
ひと通り喋りつくしたあたし達。
少し間が空いた所に洋輔とは違う男性の声。
「おやおや、お話おわりましたか?」
「だね。やっと落ち着いてコーヒーが飲めそう、マスター」
声の主は大家さん。
マス姉がため息まじりで彼に答えた後、あたしの隣にいる洋輔の方へわかり易く視線を送っている。
「えっ俺のせい?」
こちらを驚き見ている洋輔。そこへあたしもマス姉に習って、ダメ押しの一言を言ってみる。
「あたし達、まだ1杯も飲めてないんだからね」
「董子ちゃんも意外と言うな~」
「あたしも言うときは、言いますよ」
左側のマス姉に自信のある態度で答えたあたし。
大家さんはその会話が終わるのを待っていたらしく、スッとコーヒーをあたし達3人の前に並べてくれる。
「じゃあ、今日は3人共にこれでもお出ししようかな」
バニラアイスクリームのような甘い香りが3人の鼻をくすぐっている。
「これ――――バニラアイスのにおいじゃなくね?」
「うん――バニラの薫りだっ」
「洋輔の言うとおり、甘い香りがコーヒーからしてるなぁ」
「だろ? マス姉」
「わかりましたか、みなさん」
コーヒーをドリップしていた大家さんがこちらをみて満足そうに微笑んでいる。
「これはどんなレシピで作られるんですか?」
3人を代表してあたしが聞くと、ますます得意げな顔をする。顔のしわが深くなった大家さんのくしゃくしゃにした表情がうれしそうにみえる。
「んーそうだね、名前を言うとすぐにわかりますよ」
「名前にヒントがあるのか~」
少し考えた感じのマス姉がつぶやいた。
それに続けて洋輔が大家さんの答えを急かす。
「じゃあ、その名前早く教えてくれよ」
「いいですよ、バニラバターカフェオレです」
「へぇ、バターが入ってるんだぁ~」
関心するあたし、驚きの言葉におもわずため息がまじった。
「みなさん、飲んでみてください」
大家さんのすすめでコーヒーにそれぞれ口をつけた。
口の中には甘い香りとバターの濃くが口いっぱいに広がって、無意識の内にうなり声があたしからはもれていた。
「ん~おいしい」
「うん、コーヒーにコクがあってうまいっ」
「うめぇーな、これ」
「よかった、気に入って頂けて」
コーヒーを飲んで、ホーっと一息ついて、ゆったりと時間が流れていく感じ。
この瞬間があたし――――――ものすごく好き。
☆コーヒーレシピ
バニラバターコーヒー材料 ( 1人分)
インスタントコーヒー 小さじ1
砂糖 小さじ2
湯 50cc
牛乳 100cc
バター 5g
バニラエッセンス 2、3滴
1
マグカップにインスタントコーヒーと砂糖と湯を入れてよく混ぜ、牛乳を入れて更によく混ぜる。
2
電子レンジの「牛乳」コースで温めてから、バターとバニラエッセンスを入れてかき混ぜて出来上がり。
3
バター5gの目安として、「きれてるバター」1切れが10gなので、その半分が5gです。
こっちを向いてから私服の男性が、あたしに頭だけで軽く会釈してくれた。
「俺は203号室の住人。こちらこそこれからよろしく」
次は制服の男の子を指さすと、さっきより雑な感じで岡島さんがあたしに紹介してくれる。
「このいかにもあほ面なのが、本田洋輔」
「って、なんで俺だけそんな紹介なんだよっ」
「っん? 特に意味はない」
「んっだよ、それ」
納得できない感じの顔が不満そうな様子。かと思えば、今度は皆に向けて自信たっぷりな口振りで言う。
「ってか、俺の方が男前じゃなくねっ」
「あんた……それ自分で言ってたら世話ないね」
本田くんは自分の事を一蹴した岡島さんを恨めしそうな顔でみている。
そこへ頷きながら藤井くんがとどめを刺す一言。
「確かに――」
3人の掛け合いにあたしはクスクスと小さく笑う。そんな本田くんは納得できないのか、まだまだ食い下がる模様。
「ってかふたり共、目が腐ってんじゃね?」
岡島さんは顔を横に振りながら、否定。
「腐ってない、腐ってない」
「ちょっ――即答って、マス姉ひどくね」
「――はいはい、それより自己紹介なんだから言う事あるだろ?」
「ああ、そっか。改めて202号室の本田洋輔。高3、よろしく」
「よろしくね、あたしの1つ下なんだ」
あたしの話から藤井くんが歳を計算したようで、ポツリと口を開く。
「じゃあ、宮野さんは大学1年って事か。俺の1つ下か」
「そそ。だから3人共歳近いから話合うんじゃない?」
「――――かな」
ポツリとまた答える藤井くん。
「で、結局何の話してたんだっけ?」
「誰が洋輔に勉強を教えるかって、話ですね」
「ああ、そそ。でどうなの、董子ちゃん?」
「――――――うーん」
あたしが答えあぐねて漏れた声に、藤井くんは見兼ねてか、もうひと押しとばかりに一言。
「それなら、俺もバイトがなければ、勉強みるし、ね?」
「――――あたしがわかる範囲でなら……」
「よかったじゃん、洋輔」
「まぁな。これも日頃の行いがいいからだろ」
冷たい視線の岡島さんがシラっと本田くんへ釘をさす。
「日頃の行いがいいから――じゃなく、董子ちゃん達が優しいからだろ」
岡島さんの言葉にタジタジな様子の本田くんは自分の顔を人差し指でかいている。
「まぁ、そうとも言うな」
「じゃあ、俺はそろそろ時間なんで、バイトに行きますね」
「頑張っていって来い、勤労学生君」
「じゃあな、慎一」
「いってらっしゃい、藤井くん」
みんなが見ている中、藤井くんはCafeを出て行った。
隣に立っていた本田洋輔くんはというと、あたしの隣に腰掛けた後、調子よく軽い感じに声をかけてきた。
「とりあえずよろしくっ董子」
「なっ呼び捨て……」
「ん――なんか問題でもあんの?」
「問題ないけど――」
「俺も洋輔でいいし」
「あっ董子ちゃん、あたしもマス姉でいいよ」
「じゃあ、ふたりの事はそう呼ばしてもらうね」
ひと通り喋りつくしたあたし達。
少し間が空いた所に洋輔とは違う男性の声。
「おやおや、お話おわりましたか?」
「だね。やっと落ち着いてコーヒーが飲めそう、マスター」
声の主は大家さん。
マス姉がため息まじりで彼に答えた後、あたしの隣にいる洋輔の方へわかり易く視線を送っている。
「えっ俺のせい?」
こちらを驚き見ている洋輔。そこへあたしもマス姉に習って、ダメ押しの一言を言ってみる。
「あたし達、まだ1杯も飲めてないんだからね」
「董子ちゃんも意外と言うな~」
「あたしも言うときは、言いますよ」
左側のマス姉に自信のある態度で答えたあたし。
大家さんはその会話が終わるのを待っていたらしく、スッとコーヒーをあたし達3人の前に並べてくれる。
「じゃあ、今日は3人共にこれでもお出ししようかな」
バニラアイスクリームのような甘い香りが3人の鼻をくすぐっている。
「これ――――バニラアイスのにおいじゃなくね?」
「うん――バニラの薫りだっ」
「洋輔の言うとおり、甘い香りがコーヒーからしてるなぁ」
「だろ? マス姉」
「わかりましたか、みなさん」
コーヒーをドリップしていた大家さんがこちらをみて満足そうに微笑んでいる。
「これはどんなレシピで作られるんですか?」
3人を代表してあたしが聞くと、ますます得意げな顔をする。顔のしわが深くなった大家さんのくしゃくしゃにした表情がうれしそうにみえる。
「んーそうだね、名前を言うとすぐにわかりますよ」
「名前にヒントがあるのか~」
少し考えた感じのマス姉がつぶやいた。
それに続けて洋輔が大家さんの答えを急かす。
「じゃあ、その名前早く教えてくれよ」
「いいですよ、バニラバターカフェオレです」
「へぇ、バターが入ってるんだぁ~」
関心するあたし、驚きの言葉におもわずため息がまじった。
「みなさん、飲んでみてください」
大家さんのすすめでコーヒーにそれぞれ口をつけた。
口の中には甘い香りとバターの濃くが口いっぱいに広がって、無意識の内にうなり声があたしからはもれていた。
「ん~おいしい」
「うん、コーヒーにコクがあってうまいっ」
「うめぇーな、これ」
「よかった、気に入って頂けて」
コーヒーを飲んで、ホーっと一息ついて、ゆったりと時間が流れていく感じ。
この瞬間があたし――――――ものすごく好き。
☆コーヒーレシピ
バニラバターコーヒー材料 ( 1人分)
インスタントコーヒー 小さじ1
砂糖 小さじ2
湯 50cc
牛乳 100cc
バター 5g
バニラエッセンス 2、3滴
1
マグカップにインスタントコーヒーと砂糖と湯を入れてよく混ぜ、牛乳を入れて更によく混ぜる。
2
電子レンジの「牛乳」コースで温めてから、バターとバニラエッセンスを入れてかき混ぜて出来上がり。
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バター5gの目安として、「きれてるバター」1切れが10gなので、その半分が5gです。
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