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第8杯 ③
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壁際で男は突然に訪れた思わぬ報復に驚いた。
「なななな何、するん、だ」
殴られた顔が痛いのか、男はその場でのたうち回っている。
ふたりの近くにいた哲太さんも、離れた場所にいるあたしたちも、その瞬間、何が起きたのか、理解できなかった。
マス姉は吹っ飛んだ“久賀(くが)さん”に、ソッと手を伸ばす。彼はその手を無防備にも掴もうと、左手を差し出した。困惑する彼の左手のひと指しゆびから、鈍く光るモノを取ると、彼女はハイツの出入口から、力いっぱいどこか遠くへ投げる。
それは車のヘッドライトに反射して、ピカピカとキラメキながら、暗闇の中に消えていくと共に、ドスのきいた声がするのだった。
「ざっけんなっ、クソ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
何かをずっとこらえていた怒りの声は、マス姉のものだ。
「まままま、まさか……ますみ、ききき君が――――ぼぼ僕を?」
「そうだ、あたしが殴った」
やっと理解をした“久賀さん”は、へたり込んだまま動けそうにもないようだ。
「あたしの事はいい、でも……哲太の事や、彼が大切にしてる物を侮辱するな」
マス姉をまるで、初めて見たかのような表情をする“久賀さん”。何も言えずに、無駄に呆けているだけで、まだ奮い立てそうもないようだ。
「もう……ココへは、本当に二度と来ないで」
“久賀さん”は黙ったままただ頷く。間を置いてから、ゆっくりと床に手を突き、立ち上がる。それから、左の人差し指をあるモノを探す為か、さする様に触れるのだった。
「ぼ、ぼ僕のゆゆゆゆ、指輪、は」
「……探せば――――――」
マス姉が冷めた眼差しで言い放ち、ハイツの外の暗闇を指差す。そして、自動ドアをくぐり入ると、1ミリの隙間もなく、自動ドアは何事もなかったように閉まる。彼女はガラスドア越しの“久賀さん”を黙って見つめる。
“久賀さん”はクタクタになった服のような足取りで、力ないヨタヨタした歩き方で、Cafeから去っていくのだった。
あたしたちのCafeから、こうして“クソ野郎”は消えて居なくなった。視線の先にはマス姉と哲太さんのふたりだけが残った。
「ますみさん、俺……」
哲太さんはマス姉にそれ以上何も言えずにいる。それは自分だけが潤んだ彼女の瞳を見たからだった。
「これで、おしまい。何もかも終わったんだ――――――――だから、んな顔するなって……」
複雑な顔をする哲太さんに、マス姉が強がってみせる。無理に笑った彼女の顔を見て、とても苦しそうに自分の胸のあたりの服を、彼はギュッと握り締めるのだった。
「なななな何、するん、だ」
殴られた顔が痛いのか、男はその場でのたうち回っている。
ふたりの近くにいた哲太さんも、離れた場所にいるあたしたちも、その瞬間、何が起きたのか、理解できなかった。
マス姉は吹っ飛んだ“久賀(くが)さん”に、ソッと手を伸ばす。彼はその手を無防備にも掴もうと、左手を差し出した。困惑する彼の左手のひと指しゆびから、鈍く光るモノを取ると、彼女はハイツの出入口から、力いっぱいどこか遠くへ投げる。
それは車のヘッドライトに反射して、ピカピカとキラメキながら、暗闇の中に消えていくと共に、ドスのきいた声がするのだった。
「ざっけんなっ、クソ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
何かをずっとこらえていた怒りの声は、マス姉のものだ。
「まままま、まさか……ますみ、ききき君が――――ぼぼ僕を?」
「そうだ、あたしが殴った」
やっと理解をした“久賀さん”は、へたり込んだまま動けそうにもないようだ。
「あたしの事はいい、でも……哲太の事や、彼が大切にしてる物を侮辱するな」
マス姉をまるで、初めて見たかのような表情をする“久賀さん”。何も言えずに、無駄に呆けているだけで、まだ奮い立てそうもないようだ。
「もう……ココへは、本当に二度と来ないで」
“久賀さん”は黙ったままただ頷く。間を置いてから、ゆっくりと床に手を突き、立ち上がる。それから、左の人差し指をあるモノを探す為か、さする様に触れるのだった。
「ぼ、ぼ僕のゆゆゆゆ、指輪、は」
「……探せば――――――」
マス姉が冷めた眼差しで言い放ち、ハイツの外の暗闇を指差す。そして、自動ドアをくぐり入ると、1ミリの隙間もなく、自動ドアは何事もなかったように閉まる。彼女はガラスドア越しの“久賀さん”を黙って見つめる。
“久賀さん”はクタクタになった服のような足取りで、力ないヨタヨタした歩き方で、Cafeから去っていくのだった。
あたしたちのCafeから、こうして“クソ野郎”は消えて居なくなった。視線の先にはマス姉と哲太さんのふたりだけが残った。
「ますみさん、俺……」
哲太さんはマス姉にそれ以上何も言えずにいる。それは自分だけが潤んだ彼女の瞳を見たからだった。
「これで、おしまい。何もかも終わったんだ――――――――だから、んな顔するなって……」
複雑な顔をする哲太さんに、マス姉が強がってみせる。無理に笑った彼女の顔を見て、とても苦しそうに自分の胸のあたりの服を、彼はギュッと握り締めるのだった。
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