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五章 一幕:お伽噺と魔王の正体
五章 一幕 6話-5 ※※
しおりを挟むルヴィウスは、少し唇を尖らせるような不満顔で、小さく呟いた。
「愛してるって言ってくれたら、許してあげる」
ルヴィウスの愛らしい要求に、レオンハルトは目を瞬かせたあと、本当に嬉しそうに笑った。
「そんなことで許してくれるの?」
「そんなことじゃないよ。大事なことだもん。それに、今日はまだ言ってもらってない」
「そうだったな、ごめん」
「そんな言葉聞きたくない。だいたい、レオに触れながら言ってもらうのは半年ぶりなんだよ。だから、僕にとっては―――っ」
ちゅっ、とルヴィウスの唇が鳴った。レオンハルトが音を鳴らしてキスをしたのだ。もう黙って。そう言いたいのだと、ルヴィウスは分かってしまった。
愛おしそうにルヴィウスを見つめるレオンハルトの蒼い瞳が、柔らかく弧を描いている。もうこのまま、この瞳の蒼に吸い込まれてしまいたい。
「ルゥ、愛してる。誰よりも何よりも、世界で一番愛してる」
そう言い、レオンハルトはルヴィウスの腰と背に腕を回し、しっかりと抱き留めて唇を重ねた。
最初は、啄ばむような軽い口づけ。角度を変えて何度も繰り返し、そのうち食むように濡れたキスを交わす。混じり合う吐息は、あっという間に甘く熱を持った。
まるで触れあえなかった日々を埋めるかのように、二人は唇を重ね続けた。
舌を絡ませ、唾液を混じり合わせて、息をすることさえも惜しむほどに吐息を重ね合う。そうして口づけが深くなっていくと同時に、抱きしめる腕の強さも増した。
離れたくない。もっとぎゅっと抱き締めたい。僅かな隙間すらも許せない。もっと、もっと、もっと、強く重なり合いたい。
時が止まり、世界から切り離されたかのような感覚が多幸感を生み、もっと一つになりたい想いが二人を包み込む。
甘く痺れるような時間に終止符を打ったのは、レオンハルトだった。やや無理やりに唇を離し、宥めるようにルヴィウスの背中をさする。
「ルゥ、これ以上は欲しくなるから」
そう至近距離で囁いたレオンハルトの蒼い瞳には、情欲が溢れている。
ルヴィウスは彫刻のように鍛え上げられたレオンハルトの腹部に右の人差し指を押し付けると、そのまま、つっ、と上へと撫で上げた。
「ルゥ……っ、こら……―――んっ」
ぞくり、とレオンハルトの肌が粟立つ。鎖骨まで肌を撫で上げたルヴィウスは、レオンハルトの首筋へとゆったりと顔を近づけ、唇を押し当てた。
そのまま、誘うようにレオンハルトの胸元へと手を滑らせながら、ルヴィウスは彼の首筋に、ちゅぅっ、と吸い付く。
「ルゥ……っ、ぁ……っ」
所有の痕を付けられたのだと分かり、レオンハルトの吐息が甘く熱を持った。このままでは理性が飛ぶ。そう感じたレオンハルトは、胸元を滑るルヴィウスの手を掴み、誘惑の行為を押し止めた。
「これ以上は、だめ」
そう言うレオンハルトの声は、普段よりずっと甘く、艶めいている。その小さな変化を見逃さなかったルヴィウスは、自分の手を掴んでいるレオンハルトの左手を、自身の下腹部へと導いた。
「ねぇ、レオ。ここ、覚えてる?」
ルヴィウスの銀月色の瞳も、情欲に濡れて潤んでいた。
ルヴィウスの下腹部へと誘われたレオンハルトの手の下には、彼が刻んだ紋がある。レオンハルトの侵入だけを許し、レオンハルトの愛撫で胎の中を濡らし、レオンハルトを受け入れる準備をするための魔術陣。
さきほど交わした深い口づけで、すでに紋は熱を帯び、ルヴィウスの胎にレオンハルトを受け入れる準備を始めている。
「レオが刻んでくれたここに、魔力遮断の陣を重ね掛けして?」
「いや、でも……」
レオンハルトの意志が理性と欲望の間で揺れ動く。
ルヴィウスを抱きたい。だが、大きすぎる魔力が彼を傷つけるかもしれない。
紋に魔力遮断の術を追加すれば理論上は問題ないが、情交は体内へ干渉する行為。万が一を考えると簡単には頷けない。
「レオ、大丈夫だから。痛かったらすぐに言うから。ね?」
「痛さを感じた時点でダメだと思うぞ……」
そうだ、痛みが出たらやめればいいという問題ではない。よかった、理性が仕事をした。そう納得し、レオンハルトは頭をもたげてきた欲望を無理やりに押し込める。
しかし、ルヴィウスは甘え上手だ。レオンハルトに対してだけは、特別に。しかも、レオンハルトはそういうルヴィウスにとても弱い。
「今日、僕の誕生日だよ。誕生日の王様の言うこと聞いてよ」
「聞いてあげたいのはやまやまだけど……」
何か説得する材料はないだろうか。思考を巡らせたレオンハルトは、はっと気づく。
「ほら、久しぶりだからルゥの準備にも時間かかるし、な?」
よし、これでルヴィウスも諦めてくれるはず。レオンハルトはそう考えたのだが、そこは一枚上を行くルヴィウスが切り返してくる。
「ちゃんとしてきたから」
「は?」
「後ろ、ちゃんと準備してきた」
なんだろう、この既視感……。いや、一年前もこの場所で同じ流れになったではないか。やはりルヴィウスは可愛らしい顔をして誘い上手というか―――いやいやいや、感心している場合ではない。
レオンハルトが僅かに戸惑っている間に、ルヴィウスは見惚れるほど色っぽい仕草でシャツを脱ぎ捨てた。そしてズボンのウェストを下着ごと下げると、レオンハルトが刻んだ百合のような形の紋を見せつける。
「レオ、ちゃんと自分でしてきたから。だから、あとはレオの熱で広げて?」
そう誘い文句を囁きながら、ルヴィウスは髪を纏めていたリボンを解き、レオンハルトを流し見る。
レオンハルトは両手で顔を覆いながら、肩を震わせた。
「ほんと、もう、なんなの……。ルゥは俺の理性をはぎ取る天才だな……」
その反応に小さく笑ったルヴィウスは、レオンハルトの両手を取り、左手を自分の右胸へ、右手を自身の腰の下、双丘へと誘う。
そして先ほど交わした深い口づけの行為で、やんわりと萌し始めていた互いの熱を布越しに擦り合わせた。
「レオ、僕を気持ちよくして?」
甘い吐息で誘われた瞬間、レオンハルトの理性の鎖は粉々に砕けた。
ルヴィウスの腰を抱きかかえるようにして、反対側へと押し倒す。その反動で腰が浮いた隙に、ルヴィウスのズボンを下履きごとずり下げ、口づけている間に足から抜き去った。
あっという間に一糸纏わぬ姿にされたルヴィウスは、レオンハルトの名を口にしながら、熱っぽく下から彼を見上げる。
「れぉ……、すき……」
久しぶりに、下から見上げるレオンハルトの表情。上気した頬、熱を孕んだ瞳、甘い吐息と息遣い。ルヴィウスは堪らず、自身の顔の横に手をついていたレオンハルトの手首に、すりっ、と頬を擦り寄せた。
これから訪れる快楽への期待で、ルヴィウスの白い胸にある薄桃色の頂は、ぷくり、と膨れる。それを見逃さなかったレオンハルトは、背中が甘くざわつくのを感じながら、右の飾りを指で抓み、左の飾りは口に含んだ。
「ァ……ッ、んっ」
久しぶりの愛撫に、ルヴィウスの体は甘く打ち震える。
ずっと、ずっと求めていた熱を与えられ、肌が、吐息が、下腹部の熱が、過剰に反応する。
口に含まれていた左の突起が、軽く甘噛みされた。
「ァ……っ、ぁ…っ、ァっ、ンっ!」
右胸を弄っていたレオンハルトの手が、するり、と腰を撫でおろす。
「ふ……ぁっ、んっ」
胸から離れた唇が、首筋に吸い付く。小さな痛みのあと、舐め上げられた。
「んん……っ」
腰を撫でていた手が、まだ芯を持ち始めたばかりの熱を包み込む。首筋を撫でていた唇は鎖骨へと降り、胸へ、そして腹へと、たくさんの口づけと共に降りていく。そのすべてに、ルヴィウスの体は敏感に反応した。
「あっ、ァっ、んっ、レオ……っ、ァっ、んっ」
レオンハルトの左手が、ルヴィウスの熱を上下に緩く扱く。先端からは先走りが零れ、足の付け根へと流れていく。
レオンハルトの唇が、下腹部の紋を食んだ。ルヴィウスの体が、びくり、と跳ねる。
待ち望んだ熱と、快楽。愛を確かめ合う方法は他にもあるが、二人にとっては、こうして互いの熱を重ね合わせる行為に勝るものはない。
レオンハルトの右手がルヴィウスの双丘の奥、秘部を撫でまわす。そして、入口を見つけると、ゆっくりと指が入り込んできた。
快楽に酔うルヴィウスの反応を拾っていた紋は、すでに蜜を溢れさせている。それが潤滑液の代わりとなり、さらにルヴィウス自身が事前に解していたこともあって、レオンハルトの指はすんなりと奥へと進んだ。
ルヴィウスの右足を肩に引っかけるようにして脚を広げさせたレオンハルトは、中に入れ込んだ指を動かし、強い快楽を生む場所を擦り上げる。
「ァっ、ん…ぅ……っ」
喘ぐルヴィウスが眦から涙を流した。
レオンハルトは、ルヴィウスの体を知り尽くしている。それこそ、ルヴィウス自身よりもずっと。だからこそ、ルヴィウスの体は与えられる愛撫から、素直に快楽を拾う。
「ルゥ、気持ちいい?」
レオンハルトはルヴィウスの右足を肩に引っかけたまま上体を起こし、善がるルヴィウスの表情を見下ろして言った。
「きっ、もちっ、ぃ……ァッ」
ルヴィウスの潤んだ瞳が、もっと、と訴えてくる。
レオンハルトは食らいつくしたい衝動に駆られ、口の端をぺろりと舐めた。
そして、緩急をつけて左手の中にあるルヴィウスの熱を擦り上げ、同時に、後口に入れる指を増やし、内壁を擦りながらバラバラに動かす。
「ぁっ、ん……っ、いっしょ…っ、しちゃっ、だ、めっ、んん…―――っ、アァっ!」
ひと際おおきく啼いたルヴィウスは、喉と背を仰け反らせた。足の指が、きゅっ、と丸まる。与えられる悦びに素直に反応し、硬く膨れた熱の先端からは白濁が飛び散った。
肩に担いでいたルヴィウスの脚を解放したレオンハルトは、吐き出された白濁の体液を下腹部に塗り込めるように伸ばし、そのあと、紋の上で何事かを呟くと、そこから臍までを舐め上げた。
紋が、微かに温かくなる。魔力遮断の術が重ね掛けされたのだと分かったルヴィウスは、待ち焦がれた熱を受け入れられるのだと知り、目じりに溜まっていた涙を頬へと零れさせた。
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