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三章 二幕:呪いと時の神の翼
三章 二幕 2話-4
しおりを挟む「いやっ、あれはレオが悪いでしょっ!」
どこから手に入れてくるんだ、あんな如何わしいモノ! 信じられないっ! と、また枕を殴る。
聖女問題が何も解決していないのに、こんな爛れていていいのだろうか。
「もう……、レオのばか……」
『ごめん、ばかで』
「わあぁっ!」
突然レオンハルトの声がして、ルヴィウスは飛び起きた。
『ごめん、びっくりした、ルゥ?』
「急に通信魔法つなげてくるのやめてっ?」
『だって…、ルゥの声が聴きたくて……』
「つなげる時はバングルを震わせてって言ったよね?」
『したよ。ルゥ、気づかなかった?』
「気づか……」枕を殴ってたから、気づか「―――なかった……ごめん……」
『何かあった?』
「何もないよ」
『本当に? もしかして、この前のこと―――』
「そうですっ、この前のこと思い出して一人でバタバタしてました!」
ルヴィウスは素直に認めて顔を赤らめた。隠したところで揶揄われるのは目に見えている。
『なにそれ、バタバタしてるルゥ、見てみたい』
「見なくていいよっ」
『えー、絶対かわいい』
「かわいくないよっ。そんなことより! レオは大丈夫? 聖女に絡まれてない?」
『今日は公爵が絡まれてたよ』
「あー、うん、父上が疲れ切って帰ってきた」
『だろうな。みんなよくやってくれてる。ルゥは明日、大丈夫か? キャンセルしてもいいんだぞ。それとも、俺が公爵邸に行こうか?』
「大丈夫だよ。名ばかりでも一応は国賓として来てるのに、王子の婚約者が一度も王宮に顔を出さないのもおかしいでしょ。相変わらず過保護なんだから」
『ルゥが大事なの』
「僕だってレオが大事だよ。レオだけ無茶するのはやめて」
『それはルゥもだよ。約束して、何かあったらすぐに俺に言うって』
「分かってる」
『バングルも外さないで。いい?』
「外さない。約束する」
『絶対?』
「しつこいよ、レオ。絶対、約束する」
『それならいい。じゃあ……、明日』
「うん、明日ね」
そう返したルヴィウスだったが、通信魔法が切れる直前、「レオ」と無意識に名前を呼んでしまった。
『どうした?』
「えっと……ううん、なんでもない。また明日ね」
そう言い、右手首のバングルを握りしめた。レオンハルトの返事を待ったが、彼の声は帰ってこなかった。その代わりに、暖かな温もりに背中から抱きしめられる。
「ルゥ、そんな声出されたら、心配になっちゃうよ」
レオンハルトの温もりと香りが、ルヴィウスを包み込む。
ルヴィウスの異変を察知したレオンハルトが、王宮から転移してきてくれたのだ。
「レオ……」
ルヴィウスが振り返ると、レオンハルトは少し腕の力を緩めた。
ルヴィウスは体の向きを変えて、レオンハルトを抱きしめる。レオンハルトもルヴィウスを優しく抱きしめ返した。
「レオ、大好き。ずっと傍にいさせて」
「俺もルゥが大好きだよ。ずっと傍にいて」
出会ってからずっと、お互いのこの温もりが支えだった。今は、愛おしくて仕方ない。
離れない。離れたくない。何を犠牲にしても共にありたい。例え、他人の目に不幸に映ろうとも、二人でいられたらそれでいい。そう強く願ってしまうのは、恋をしているからだろうか。
二人は時間が許す限り抱きしめ合い、互いの心臓の音を聞きながら、温もりの心地よさに身を委ねた。
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