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四章 一幕:管理者と筥の秘密
四章 一幕 4話-3 ※※
しおりを挟む絶頂を迎えて果てたルヴィウスを押しつぶさないよう、上から覆いかぶさったレオンハルトは、食むように口づけをする。
何度もそうしているうちに、ルヴィウスの意識が僅かにレオンハルトを捉えた。
「れ、ぉ……」
「ん、ここにいる」
「す、き……」
「うん、俺も」
何度も口づけを交わしているうちに、ルヴィウスは胎の中が切なくなってきてしまった。
先ほどの快楽の余韻が、もっと強い刺激と、もっと分かりやすい愛情を求めて、後口をヒクつかせる。
するり、とレオンハルトの手がルヴィウスの体の線をなぞりながら、下へと降りていく。それを追うように、レオンハルト自身も、ルヴィウスの体に所有の痕を残しながら下へと移動した。
最後に内腿に赤い痕を付けると、ルヴィウスの膝裏へ手を当て、ぐっと前へ押しだす。
熱く硬く反り立った熱杭の先端を、ルヴィウスの後口に触れさせると、そこが期待できゅっと蠢いた。
「ルゥ、痛かったらすぐ言って」
額に汗を浮かべ、情欲に瞳を潤ませながらも、本能に抗って自分を気遣ってくれるレオンハルトを、ルヴィウスは愛おしく思った。
こくん、と小さく頷き、無意識にシーツを握りしめる。
レオンハルトが、ぐっと腰を押し進め始めると、熱杭の先端がルヴィウスの後口を押し広げながら、挿入っていく。指とは比べものにならない熱と質量に、ルヴィウスの喉が仰け反り、シーツを握りしめる手に力が入る。。
「ん、ぅ……っ」
「苦しい?」
ルヴィウスは、ふるふる、と力なく頭を振る。
苦しくはない。でも、もどかしい。そんなに大事にしてくれなくていいから、早く奥の奥まで、レオンハルトの熱を挿れてほしい。
「れお…っ、もっと……っ」
眦に溜まった涙を、ぽろり、と零しながら、ルヴィウスは甘く強請った。
レオンハルトは奥歯を、ぎりっ、と噛んで、僅かに残った理性をなんとか保つため、ふぅ、と一つ息を吐く。
そうしてから、ルヴィウスの細い腰を掴み、再びゆっくりと腰を押し進めた。
「ぁっ、んっ、んっ、んん……っ」
少しずつ中を押し広げ、時々腰を揺さぶって、レオンハルトは時間を掛けて、ルヴィウスの中に熱を納めていく。
ぐぷっ、とある程度まで入り切ったところで、レオンハルトはルヴィウスに口づけをした。
「少し、馴染むまでこのままでいよう」
レオンハルトはありったけの優しさを込めてそう言い、ルヴィウスの髪を撫でた。
もう一度やわらかく口付けて、大切な宝物を包み込むように、ルヴィウスを抱きしめる。
ルヴィウスは無意識のうちに、レオンハルトの腰に脚を絡みつかせ、その逞しい背中を抱きしめた。
手に入れた。やっと、そのすべてを自分のものに出来た。
レオンハルトは狂おしいほどの強烈な幸福感に、胸が痛くなるのを感じ、目頭が熱くなるのを感じた。
「れ、ぉ……っ」
ルヴィウスが耳元で囁き、体を甘く震わせながらしがみついてくる。
「苦しい? 抜こうか?」
そう聞くと、ルヴィウスは力なく首を横に振る。
そうじゃない。そう伝えたいのに、上手く言葉にならない。
「れぉ、の……」
「うん?」
「れぉ、の、で……っ、ぉ、なか……の、なか……ッ」
「苦しいよな、ごめんな」
「ちが……ぅ……っ、なか……、れぉ、で……ぃっぱ、い……ッ」
「ルゥ……」
「ぅれ、しぃ……ッ」
ルヴィウスがなんとか気持ちを言葉に乗せ終えると、レオンハルトはわずかに体を起こした。
ルヴィウスを見下ろす蒼い瞳が、揺れている。「れぉ?」と名前を呼ぶと、その蒼い瞳から、ルヴィウスの頬に涙がこぼれ落ちた。
レオンハルトはルヴィウスの頬を濡らした自分の涙を拭い、そのまま指の背で撫であげる。
「ルゥ、俺のルゥ、可愛い、ルゥ、ぜんぶ、俺の」
まるで甘えるように囁くレオンハルトがどこか可愛くて、ルヴィウスは彼の背中に腕を回した。
そのまま抱きすくめられたため、脚をしっかりとレオンハルトの腰に絡ませる。そのうちに、ゆらゆらと体が揺すぶられ始めた。
動き始めたレオンハルトの熱が、胎の中の内壁を擦り上げていく。
「ぁっ、あぁっ、んっ、ァっ、アァッ」
今まで指でしか触れられることのなかった所を、太くて硬くて熱いものが擦り上げていく。
そして、指では届かなかった奥の奥に、レオンハルトの熱の先端がぶつかる。それは得も言われぬ快楽で、ルヴィウスは何もかもを攫われていく感覚に陥った。
ずちゅっ、ずちゅっ、と濡れた音が響くたび、ルヴィウスが甘く鳴いた。そのうち濡れた音は、肌と肌がぶつかる音になり、ルヴィウスの喉は絶え間なく嬌声を上げる。
無我夢中になって貪り合ううちに、レオンハルトの熱を締め上げるように、ルヴィウスの胎の中が波打ち始めた。
もう、何も考えられない。
熱と、気持ちよさと、温もりと、快楽とが混ざり合い、多幸感に包まれたまま、どこかへ連れていかれそうになる。
「ルゥっ、ルゥ……っ」
ばちゅん、ばちゅん、と熱を打ち付けられ、ルヴィウスはレオンハルトに引っ張られるように快楽の絶頂へと導かれていく。
「アァッ、んっ、アッ―――……っ!」
ひと際強い刺激を感じてルヴィウスが仰け反った瞬間、胎の中でレオンハルトの熱が大きく脈打った。
ルヴィウスは内壁を蠕動させながら、胎の中に広がる温かさを搾り取る。レオンハルトもその動きに合わせ、奥へと種付けするかのように何度か腰を前後に動かした。
「ルゥ……」
愛おしそうに名を呼んだレオンハルトが、汗で張り付いた髪を避けてくれる。
「れ、ぉ……」
離れがたくて、まだ出ていってほしくなくて、ルヴィウスは力の入らない腕をレオンハルトの首へと回す。労わるような優しい口づけに、なぜだか涙が零れた。
「あいしてるよ、ルゥ」
「も、ぃっかい、いって……」
可愛い我が儘に、レオンハルトが小さく笑う。
「愛してる、ルゥ」
それは、今までの“愛してる”とは違う、ルヴィウスが生まれて初めて感じる絶対的な愛だった。だから、同じくらいの愛を返したくなった。
「れお、あいしてる」
離さないで。そう伝えるつもりで、レオンハルトを抱き寄せ口づけをせがんだ。
レオンハルトはルヴィウスを抱き締めなおすと、唇に、目じりに、額に、首筋に、たくさんのキスを降らせる。
そうするうちに熱が引いてきて、ベッドに二人で体を横たえた。
ルヴィウスが多幸感に包まれ、甘えてレオンハルトの胸元にすり寄る頃には、いつの間にか体が綺麗になって、心なし体のだるさも遠のいていた。
そのことに気づいたルヴィウスが、抱きしめられた腕の中からレオンハルトを上目遣いに見遣る。
「どうかした?」
「ううん、呼吸するように魔法を使うんだなって、改めて思って……」
ルヴィウスの感心しているようでどこか呆れているかのような言い草に、レオンハルトは苦笑いする。
「俺はちょっと特殊だから」
「そういう言い方は、どうかと思うけど」
「事実だよ。それより、ルゥ」
「ん?」
瞬きしたルヴィウスを怖がらせないよう、レオンハルトは腕枕をするような体勢になって、なるべく穏やかで柔らかい声で問うた。
「ルゥ、俺に話しておきたいこと、あるんじゃない?」
そっと髪を撫でながら、責めているんじゃないと伝えるつもりで問いかける。
ルヴィウスの腕がレオンハルトの背中に回った。
すりっと擦り寄られ、愛おしさが増して、抱き締めなおす。
きっと、いまここで聞かなくてもいいのに、と思っているに違いない。でも、いまこのタイミングだからこそ、お互いに誤魔化すことが難しい。
「ルゥ、魔法が使えるようになっただろう?」
長い、長い沈黙。
お互いの心臓の音だけが響いている。
レオンハルトは、辛抱強く待った。
「……うん」
やっと答えたルヴィウスに、レオンハルトは「そっか」と相槌をし、少し腕を緩めて顔を覗きこむ。
「じゃあ、練習しなくちゃ」
「黙ってて、ごめんね……」
「いいよ。なんか悩んでるなって気づいてた。言ってくるまで黙っておこうかなって思ったけど、会うたびにどこか辛そうだったから」
「そんな変な顔してた?」
「変って」つい、笑ってしまう。「どんな顔のルゥも可愛いよ。でも、悲しいとか苦しいとか、そういうのは見てられないから。ルゥも、俺がそうだったら見てるだけじゃ嫌だろう?」
「……うん」
「じゃあ、朝になったら話そうか。俺もルゥに話しておきたいことがあるし」
「朝? 今じゃなくて?」
ルヴィウスが二度、瞬きをする。
「今は話すよりも、」レオンハルトはルヴィウスを抱きしめたまま、体を転がす。「もう一回しよ、ルゥ」
上から覗き込まれたルヴィウスは、頬を赤らめ、少しだけ考えて、頷いた。
はじめての夜だろうとなんだろうと、何度でもレオンハルトがほしいし、彼に何度でも求められたい。
どちらからともなく、口づけを交わす。それは、長い夜の始まりの合図。
二人が満ち足りた気だるさと互いの体温を抱きしめて眠りに落ちたのは、月も星も薄くなった明け方のことだった。
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