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四章 二幕:望まぬ神の代理人
四章 二幕 8話 ※※
しおりを挟むグラヴィスとノアール、アレンとガイルを見送り、レーベンドルフ伯爵家の晩餐会に出席するカトレアとハロルドを送り出したあと、レオンハルトとルヴィウスは、そのまま黄金宮でヒースクリフ、イーリス、エドヴァルドと晩餐をとった。
久しぶりの家族での晩餐は、レオンハルトが第二王子として王宮でとる最後の晩餐だ。
ルヴィウスはレオンハルトたちがなるべくたくさんの会話が出来るよう、話には積極的には加わらず、相槌をするに留めることを心がけて、食事を進めた。
晩餐後は歓談室に移動して、尽きない昔話を楽しんだ。
ルヴィウスが知らない幼少期のレオンハルトのことも聞けた。会う回数を減らしていた期間の様子も、改めて知ることができた。
レオンハルトは恥ずかしそうにしていたが、ルヴィウスにとっては、心が満ち足りた時間になった。
藍玉宮のレオンハルトの私室へ着いた時には、二十三時を回っており、使用人たちは全員下がった後だった。レオンハルトが「待たなくていい」と通達していたからでもある。
「ルゥ、お風呂入る?」
「入る」
くいっ、とルヴィウスの腰を抱き寄せたレオンハルトは、小さなキスをする。
「一緒に入る?」
「入りたい、一緒に」
ルヴィウスの返答に、入浴以外の意味も含まれていると分かっているレオンハルトは、彼の耳元でそっと囁いた。
「風呂とベッド、どっちがいい?」
しばらく考えたルヴィウスが、レオンハルトの耳元で囁き返す。
「どっちもって言ったら、はしたない?」
くすぐったさに笑ったレオンハルトは、ルヴィウスを抱きしめて「じゃあ、どっちでもしよう」と答えて唇を重ねた。
ルヴィウスを軽々抱き上げたレオンハルトは、バスルームへと向かう。その間、ルヴィウスはレオンハルトの頬や唇、首筋や鎖骨にキスをした。
少しも離れたくなくて、口づけを繰り返しながら互いの服を脱がしていく。
素肌に手を滑らせると、余計に離れがたくなった。
レオンハルトはルヴィウスを掻き抱き、ルヴィウスはそれに応えるようにレオンハルトの背中を強く抱きしめる。
深く、深く口づけて、舌を絡め合わせ、無意識に互いの下腹部を擦り合わせると、そこは徐々に熱を持ち、立ち上がる。
「あ、」
ルヴィウスが何かを思い出したかのように声を上げる。
「薬、飲んでない」
互いに目を見合わせ、小さく笑い合う。
レオンハルトがすぐに魔法で避妊ポーションを召喚し、ルヴィウスに口移しで飲ませた。
この甘い味が始まりの合図だと、もうすでに脳に刷り込まれている。
そのあとは済し崩しのように抱き合った。
シャワーを浴びながらレオンハルトが後ろから突いて、ルヴィウスが喘ぐ。
そのあと、敏感になった体に泡を纏わせ、互いに弄り合って達した。
三度目は、レオンハルトが指先を鳴らして溜めた湯船の中で、向かい合わせに抱き合った。
そして現在、レオンハルトの熱を胎に挿れたまま、ルヴィウスは、くたり、と彼にもたれ掛かっている。
「も……、茹っちゃう……」
その可愛らしい訴えに、レオンハルトは小さく笑った。
「じゃあ、もう出よう。立てそう?」
そう聞くと、ルヴィウスは、ゆるゆると頭を横に振り、レオンハルトの首に腕を回した。
そうすると胎の中のレオンハルトの熱がさらに奥へと入り込む。ルヴィウスが「んっ」と甘く反応した。
「一回抜くよ?」
レオンハルトが言いながらルヴィウスの腰を持ち上げようとすると、再び、ゆるゆると頭を横に振られた。
「……ぃ、で」
「ん? なに?」
「抜か、な、ぃで……っ、このまま…っ、ぁっ、ん……っ」
ルヴィウスの淫らで甘いお強請りに、レオンハルトの背中が悦びでざわつく。
「掴まってて」
ルヴィウスを抱え湯船から立ち上がったレオンハルトは、熱杭を抜かないままバスルームから出る。
歩くたびに振動が快楽を生んで、ルヴィウスは必死にしがみ付きながら甘く喘いでは、レオンハルトの名を呼んだ。
ベッドに倒れこむのと同時に、レオンハルトが魔法で体や髪を乾かす。なんとも便利な使い方だ。
唇を重ねて、深くまさぐり合う。
ルヴィウスの上あごをレオンハルトの舌が這った。
敏感になっている体が、快楽を拾い、胎の中を締め付ける。
唇を離したレオンハルトは、ルヴィウスの首筋に赤い痕を付け、鎖骨にもう一つ付け、そして、弄られすぎて赤く膨らんだ胸の尖りに吸い付いた。同時に、腰を前後にゆったりと揺らす。
「あぁっ、ァっ、んっ」
痺れるような快楽が止まらず、ルヴィウスは甘く達し続けている。
先端からは薄まった色の体液が溢れるばかりで、今夜は何度絶頂を味わったか覚えていない。
レオンハルトが腰の動きを大きくした。ルヴィウスの胎の中にある“イイところ”を強く擦る。
ルヴィウスは堪らず、涙を零した。
「ぁ…、ァんっ、ゃ…っ、そこっ、やぁ……っ、あぁっ、ん!」
「ルゥ、可愛い、俺のルゥ」
揺さぶられ、熱に穿たれながら、ルヴィウスは感覚の端に追いやっていた僅かな意識で、レオンハルトの表情に見惚れる。
汗が伝う頬、濡れた甘い吐息と、自分を呼ぶ唇、そして熱に浮かされたかのように潤んだ蒼い瞳が、ルヴィウスだけを見つめている。
こうして全身で自分を求めてくれるレオンハルトを、組み敷かれながら見上げるのが好きだ。
世界で二人きりになれた気がして、それでも、もっと一つになりたくて、痛くてもいいから乱暴に抱いてほしいと願ってしまう。
「ルゥ、考え事してる?」
「ァ…ッ、ンぅ…っ、して、な、ぃ…っ―――アァっ」
ぐりっ、と弱いところに熱の先端を擦りつけられて、一瞬、星が目の前に散った。
胎の中はうねり、レオンハルトの熱を締め付ける。つま先が丸まって、体が、びくり、と震えた。
レオンハルトは、ぺろっ、と舌なめずりし、ルヴィウスの膝裏に腕を回すと、ぐっ、と前に押し広げ、そのあと深くルヴィウスに口づける。
「んぅ……っ」
広げられた足が、レオンハルトの二の腕に固定され、折り曲げられた体が苦しいのに、密着度が増して胎の奥が悦んでいる。
「考え事する余裕があるなら―――」
―――もっと奥まで挿れようか
耳元で囁かれた直後、ルヴィウスの背中が期待と悦びで粟立った。
その表情を見逃さなかったレオンハルトは、再び深く口づけ、ギリギリまで引き抜いた自身の熱を勢いよくルヴィウスに穿つ。
「んんーッ、んっ、んぅ……っ、んっ、んっ、んーっ!」
口を塞がれているルヴィウスが、言葉に出来ない声で喘ぐ。
肌がぶつかる音と、混ざり合った体液と汗が滑つき、濡れた音が卑猥に響く。
ゆっくり抜かれ、すぐに力いっぱいぶつけるように穿たれる行為を繰り返しされるなか、はち切れそうに膨張し硬くなった熱に蹂躙されながら、ルヴィウスはレオンハルトの腕にしがみ付き、爪を立てて快楽の深みに身を委ねる。
「ルゥ…っ、すご、く、うねってるっ」
「あっ、ん、アァッ! やぁっ、もっ、だめ、ぇ…っ、ィっ、く…っ、ァ…、んっ!」
「いいよ、いっしょに、イこ?」
ひと際大きく、深く腰を突き動かしたレオンハルトの動きに合わせるように、ルヴィウスが喉を仰け反らせて体を硬直させる。
レオンハルトの熱がルヴィウスの中で弾ける。胎の中に納まりきらなかった白濁の体液が、ごぷり、とあふれ出した。
上がる息が整うまで、愛おしさすら覚える気だるさに体を揺蕩わせて、寄り添い、抱きしめあってベッドに横たわる。
「ごめん……」
唐突に、レオンハルトが謝る。力が入らないルヴィウスはすぐに応えられず、目線だけ彼に向けた。
「ルゥに、痕いっぱいつけちゃった……」
ルヴィウスの真珠色の肌に残る所有の痕。
首筋に、胸元に、腰に、太ももに、そして背中には赤い痕とともに噛み痕まで。
しゅん、と眉尻を下げるレオンハルトを、ルヴィウスは可愛らしいと感じた。
「いいよ……、僕もレオを引っ掻いちゃったし……」
レオンハルトの二の腕についた爪の傷。そっと手を伸ばすと、その手を握られた。
「だめ、治さないで」
レオンハルトは握りしめたルヴィウスの手にキスをした。ルヴィウスは、ふにゃり、と笑い「じゃあ、僕のも治さないで」と言った。
そうして満ち足りた余韻をゆったりと過ごしたあと、互いの身を清め、整え直したベッドに上がる。
それから、用意していた魔力封じの枷を、ルヴィウスの手でレオンハルトの両手首に付けた。
枷といっても、シンプルな幅広の緩めなバングル型で、魔力が強すぎるレオンハルトにとってみれば、お守り程度のものだ。本気を出せば壊せてしまう。
それでも万が一、禁書庫に無意識に呼ばれるようなことがあれば、ルヴィウスやカトレア、ゲルニカ達が足止めする時間は作れる。
「痛くない?」
「大丈夫。それより、一晩中結界を張ることになるけど、大丈夫か?」
ルヴィウスはレオンハルトに、ちゅ、とキスをした。
「いまレオが魔力を満タンにしてくれたでしょ」散々中に出したのは誰なのか。
「じゃあ、任せた」
「うん、任された」
ふふっと笑ったルヴィウスは、囲いを意味する古代語を呟き、部屋全体に結界を張った。
そこに認識魔法を応用した術式を重ねがけする。ルヴィウスは一人でも出ることが出来るが、レオンハルトは彼の身近にいる者と一緒でなければ部屋の外へ出ることは出来ない。そんな術だ。
これで安心、と笑ったルヴィウスを抱き寄せたレオンハルトは、そのままベッドに横になり上掛けを掛けた。
目を閉じると、楽しかった今日の時間が蘇る。
もう何も不安になるようなことは無い。そう思うのに、邪魔をするかのように、一瞬、レオンハルトの脳裏に禁書の言葉が過ぎった。
―――理は私たちを最後まで試すだろうが、それならそれで挑めばいい。
インクの染みのように広がりかけた嫌な予感を振り払いたくて、レオンハルトはルヴィウスに問いかけた。
「ねぇ、ルゥ」
「ん?」
「いつか、二人だけで世界の果てまで行ってみようか」
ルヴィウスは目を瞬かせたあと、ふわり、と微笑んで鼻先を擦り寄せる。
「うん、いつか一緒に行こ」
そうして、どちらからともなく、口付ける。
「おやすみ、ルゥ」
「おやすみ、レオ」
もう一度小さなキスをして、抱きしめあって目を閉じる。
互いの心臓の音が、眠気を誘う。愛おしさに包まれて、二人はあっという間に意識を手離した。
このまま、夢の中でも一緒にいられるような心地がしていた。
こんな夜が、こらからもずっと続くと思っていた。
この時は信じて疑いもしなかったのだ。
約束した「いつか」は、必ず来るのだと。
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