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第3章
53.密会
高等科の進学祝いとしてプレゼントを用意したから宮殿に出向いてほしいとヴァリタスから連絡があり、会うことになった。
自分だって同じところに進学するのにプレゼントを用意したなんて一体どういうことかと半ば呆れながら宮殿へ赴く。
宮殿へ着くとヴァリタスといつも会う応接室とは異なる部屋へとまっすぐ向かう。
3年前から始まったこの習慣に慣れてしまっている自分に少しばかり哀しくなった。
いつも通りその密会室の扉を開けると、彼はすでにそこにいた。
足を組み偉そうに座っている姿は様になっていて、もう姿も見たし扉を閉めて帰りたくなるがそうもいかない。
「やぁ、久しいね」
「ベリエル殿下。お久しぶりでございます」
「まぁ、そう固くなるなよ。僕らの仲じゃないか」
いや、どういう仲よ。
ヴァリタスと会うことがあるときは、大抵ベリエル殿下と落ち合う約束をしている。
だから約束の時間よりも1時間以上も早く来て、この密会室に出向いているのだ。
ヴァリタスとの婚約破棄のための作戦会議のために。
「それにしても、ヴァリタスからプレゼントがあるから来いと言われてのこのこ来るなんて。君、本気で婚約破棄する気あるのかい?」
容赦のない嫌味にも慣れたが、相変わらず失礼な人だ。
しかしこの口の利き方、王子でなければ大問題ではないのか?
まぁ自分が王子という立場だからやっているのだろうけど。
「仕方ないではないですか、断ってもあちらから出向きそうなんですもの。それにこのような用事がなければ外に出られませんし、ベリエル殿下ともこうして会って相談もできませんでしょう?」
本当であればこの王子兄弟とは会いたくもないのだけれど、渋々こちらに来ているのだ。
そこらへん、きちんと認識していただかなければ。
「分かった、分かった。揶揄って悪かったよ」
尚もいやらしく笑う彼には詫びる感情など一切なさそうではあるが、一応これでも私に謝っているのだろう。
私に対し全く素直に接してくれないから、怒りの感情を抑えこちらが意図をくみ取って穏便に済まさなければならないのがまた面倒なところだ。
「それで本題だが。どうだいヴァリタスとの仲は? なにか進展があったかい?」
いつも通り、私とヴァリタスの仲にどのような変化があったのか一番初めに確認する。
この進展とは、一般的に婚約者同士に対して使う「仲良くなったかい?」の意味ではなく、「仲が悪くなっているかい?」の意味の進展だ。
とはいえ、今のところ前者の意味で進展してしまっているのだが。
「申し訳ありません。それがまだ……」
「はぁ、まったく。いや、プレゼントを用意して君を呼び出すぐらいだからそうだろうとは思っていたが……。君、本当にヴァリタスに嫌われる気があるのか?」
ため息をつきあきれ果てたベリエル殿下を直視できずに視線を外す。
全くその通りで反論できない。
でも、だって彼は酷いのだ。
魔法も一切使えなければ、前世が農民の娘である私になぜだが入れ込んでいるし。
ナタリーから得た農民知識をフル稼働させて面白くない会話にしようとしている私の努力を無残にも粉々にしながら興味深々に話に聞き入るし。
ベリエル殿下から彼の嫌いな食べ物である辛いものを、我儘を言って会食の際に出しても表情1つ変えずに完食してしまうし、しかも最後に美味しかったですねと笑顔で言い放った。
ならば嫌いな虫はどうかと思ったが、そもそも私が虫を嫌いだから作戦を立てられなかったし、しかも私が虫が苦手だと情報が漏れ、なぜだが彼が虫嫌いを克服してしまった。
中等科の間は殆ど顔を合わせられないためこれぐらいしかできなかったが、そもそもそんな状況で会ったら会ったで嫌がらせをしてくるような女にどうしてまだ好意を持てているのかが分からない。
「一体どうすれば嫌われるのでしょうか……」
思い出したら落ち込んできた。
下を向き考えながら落ち込む私をみて、さすがにこれ以上攻めるのは不憫だと思ったのか、ベリエル殿下も同じように考えを巡らせている。
「うーん。こうなったら違うアプローチをしたらどうだ?」
「違うアプローチ? どういうことですか?」
嫌われるようなことをしない、ということだろうか?
しかし、それではどうやって婚約破棄に持っていくのだろう。
もしかしてベルフェリト公爵家の名声を落とす、とか?
確かにこの婚約はベルフェリト公爵が国民に人気があるということで交わされたようなものだし、その人気が落ちてしまえば王室にとって無理に婚姻する必要のない相手になってしまうが……。
それに後1年という短期間で人気を没落させるなんてできるだろうか。
いや、できるにはできる。
手っ取り早く私が浮気してしまえば……。
いやいや駄目よ。
そんなことしたら私の求める平穏な日常が永遠に来なくなってしまう。
憤慨したヴァリタスや両親に殺されてしまいかねないではないか。
今でさえ両親からベルフェリト家の恥だと言われて毎日殺気の籠った視線を浴びているのだから、あの両親ならきっとやりかねない。
「君の考えていることなどたかが知れているから敢えて聞かないが……。安心したまえ、君に不利益は生じない方法だ」
「はぁ……」
では一体どんな方法なのだろう。
私に不利益が生じないのなら是非とも全力で支援したいものだけれど。
自分だって同じところに進学するのにプレゼントを用意したなんて一体どういうことかと半ば呆れながら宮殿へ赴く。
宮殿へ着くとヴァリタスといつも会う応接室とは異なる部屋へとまっすぐ向かう。
3年前から始まったこの習慣に慣れてしまっている自分に少しばかり哀しくなった。
いつも通りその密会室の扉を開けると、彼はすでにそこにいた。
足を組み偉そうに座っている姿は様になっていて、もう姿も見たし扉を閉めて帰りたくなるがそうもいかない。
「やぁ、久しいね」
「ベリエル殿下。お久しぶりでございます」
「まぁ、そう固くなるなよ。僕らの仲じゃないか」
いや、どういう仲よ。
ヴァリタスと会うことがあるときは、大抵ベリエル殿下と落ち合う約束をしている。
だから約束の時間よりも1時間以上も早く来て、この密会室に出向いているのだ。
ヴァリタスとの婚約破棄のための作戦会議のために。
「それにしても、ヴァリタスからプレゼントがあるから来いと言われてのこのこ来るなんて。君、本気で婚約破棄する気あるのかい?」
容赦のない嫌味にも慣れたが、相変わらず失礼な人だ。
しかしこの口の利き方、王子でなければ大問題ではないのか?
まぁ自分が王子という立場だからやっているのだろうけど。
「仕方ないではないですか、断ってもあちらから出向きそうなんですもの。それにこのような用事がなければ外に出られませんし、ベリエル殿下ともこうして会って相談もできませんでしょう?」
本当であればこの王子兄弟とは会いたくもないのだけれど、渋々こちらに来ているのだ。
そこらへん、きちんと認識していただかなければ。
「分かった、分かった。揶揄って悪かったよ」
尚もいやらしく笑う彼には詫びる感情など一切なさそうではあるが、一応これでも私に謝っているのだろう。
私に対し全く素直に接してくれないから、怒りの感情を抑えこちらが意図をくみ取って穏便に済まさなければならないのがまた面倒なところだ。
「それで本題だが。どうだいヴァリタスとの仲は? なにか進展があったかい?」
いつも通り、私とヴァリタスの仲にどのような変化があったのか一番初めに確認する。
この進展とは、一般的に婚約者同士に対して使う「仲良くなったかい?」の意味ではなく、「仲が悪くなっているかい?」の意味の進展だ。
とはいえ、今のところ前者の意味で進展してしまっているのだが。
「申し訳ありません。それがまだ……」
「はぁ、まったく。いや、プレゼントを用意して君を呼び出すぐらいだからそうだろうとは思っていたが……。君、本当にヴァリタスに嫌われる気があるのか?」
ため息をつきあきれ果てたベリエル殿下を直視できずに視線を外す。
全くその通りで反論できない。
でも、だって彼は酷いのだ。
魔法も一切使えなければ、前世が農民の娘である私になぜだが入れ込んでいるし。
ナタリーから得た農民知識をフル稼働させて面白くない会話にしようとしている私の努力を無残にも粉々にしながら興味深々に話に聞き入るし。
ベリエル殿下から彼の嫌いな食べ物である辛いものを、我儘を言って会食の際に出しても表情1つ変えずに完食してしまうし、しかも最後に美味しかったですねと笑顔で言い放った。
ならば嫌いな虫はどうかと思ったが、そもそも私が虫を嫌いだから作戦を立てられなかったし、しかも私が虫が苦手だと情報が漏れ、なぜだが彼が虫嫌いを克服してしまった。
中等科の間は殆ど顔を合わせられないためこれぐらいしかできなかったが、そもそもそんな状況で会ったら会ったで嫌がらせをしてくるような女にどうしてまだ好意を持てているのかが分からない。
「一体どうすれば嫌われるのでしょうか……」
思い出したら落ち込んできた。
下を向き考えながら落ち込む私をみて、さすがにこれ以上攻めるのは不憫だと思ったのか、ベリエル殿下も同じように考えを巡らせている。
「うーん。こうなったら違うアプローチをしたらどうだ?」
「違うアプローチ? どういうことですか?」
嫌われるようなことをしない、ということだろうか?
しかし、それではどうやって婚約破棄に持っていくのだろう。
もしかしてベルフェリト公爵家の名声を落とす、とか?
確かにこの婚約はベルフェリト公爵が国民に人気があるということで交わされたようなものだし、その人気が落ちてしまえば王室にとって無理に婚姻する必要のない相手になってしまうが……。
それに後1年という短期間で人気を没落させるなんてできるだろうか。
いや、できるにはできる。
手っ取り早く私が浮気してしまえば……。
いやいや駄目よ。
そんなことしたら私の求める平穏な日常が永遠に来なくなってしまう。
憤慨したヴァリタスや両親に殺されてしまいかねないではないか。
今でさえ両親からベルフェリト家の恥だと言われて毎日殺気の籠った視線を浴びているのだから、あの両親ならきっとやりかねない。
「君の考えていることなどたかが知れているから敢えて聞かないが……。安心したまえ、君に不利益は生じない方法だ」
「はぁ……」
では一体どんな方法なのだろう。
私に不利益が生じないのなら是非とも全力で支援したいものだけれど。
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