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第3章
78.本当は思ってくれるだけで
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「ここのラズベリーケーキがとてもおいしいんです」
「そうなのですか……」
始終笑顔でメニューを開きながら私にそう伝える彼のことを、メニューを盾にちらちらと様子を伺う。
やっぱり気のせいなんかじゃない。
先ほどからいつも以上に今日は上機嫌だ。
その理由が全く思いつかず、困惑するばかり。
「注文、決まりましたか?」
「え? ええっと」
どうしよう、なにも決めてなかった。
彼の反応ばかりを見つめてしまっていたせいで、まだなにも決めていないことに気が付く。
相手を待たせるのは大の苦手だ。
しかも、待たせた分だけ罪悪感を募らせる私はすぐさま注文を決めようと今度こそ羅列したメニューを見つめるが、そう思う分だけ焦リがつのる。
メニューを見つめる視線はあちこち泳いでしまい、決めるに決められない。
そんな私を見て、何か思ったのかヴァリタスはスッと手を上げるとウェイターを呼んだ。
な、なんで⁈ なんで呼んじゃうの!
ま、待って。私まだ何頼むか決めてない!
焦ってメニューに視線を巡らせる私を後目に、彼に呼ばれるのを待っていたかのようにすぐさまウェイターが私たちの席にやってきた。
「お待たせいたしました。お伺いいたします」
待たせてない、待たせてない。
というかそんなすぐ来なくて良かったってば!
もう、ヴァリタスったらなんのよ!
気が利かなさすぎじゃない?
ヴェリタスへの恨みを心の中で叫びながら、しかし今だ頼むものは決められず。
そんな私を気にすることもなく、ヴァリタスはそそくさと注文してしまった。
「こちらのラズベリーケーキと、おすすめの紅茶を2つお願いします」
「かしこまりました」
ウェイターはヴァリタスの注文を受け取ると、一礼して去ってしまった。
あれ? 私まだ注文してないよ?
っていうか今ヴァリタスさらっと2つ分注文してた?
一瞬ぽかんとしてしまったが、彼の言った言葉を理解すると途端にジトっとした怒りが湧いてくる。
これは私、揶揄われたわけね。
「は、はじめからこうするおつもりでしたのね……」
「エスティは一度迷うと決めるのに時間が掛かりますからね。来る前から注文するものをこちらで決めていたのです」
ニコニコと笑う彼に少しだけ拗ねる。
だが、確かに私が優柔不断なのは事実だ。
だから否定はできないし、小言を言うこともできない。
しかし正直それでヴァリタスを待たせずに済んだから助かったのだけれど……。
でもなんだか、腑に落ちないわ。
まさかヴァリタスにこうして遊ばれてしまうとは思わなかった。
昔は婚約破棄計画のために散々私が振りまわしていたのに。
あれ? まさかこれってそういうアレコレの仕返し?
そうして百面相している私をなおもニコニコとしながら見つめる。
そんな彼の視線に気づき、なんだか恥ずかしくなってしまった。
このままでは彼の良い遊び道具になりかねない。
そう思うと途端に恥ずかしくなり、無理やり話題を変えることにした。
「でも、よくこんな素敵なカフェをご存じでしたね」
「ええ……」
調子をがらりと変え彼に問いかけると、なぜだか急にヴァリタスの歯切れが悪くなる。
なに? 私そんな変なこと言ってないはずなのだけど。
私の言った事と彼の反応があまりにも食い違っていて、ついじっと見つめてしまう。
すると、私に視線を逸らしたままの彼の頬が赤く染まっていく。
「実は兄上に言われたのです。男たるもの女性を喜ばせられる店の1つや2つ知っておくべきだって」
何を教えているんだあの兄は。
純情な弟にそんなキザな事を教えるなんて。
「ここへ来たのも、もう3度目なんです。こういう場所が好きかどうか自信がなくてかわからなくて……。でも、きっとエスティも気に入ってくれるだろうと思って」
「え?」
頬を赤くしながらも、そう伝える彼の思いの強さに心が揺れる。
いつも何事にも卒なくこなす彼が、そんなことで悩む姿など想像できない。
だから、そんな彼の姿にドキリと心臓が反応してしまった。
だって、認めたくはないがそれを嬉しいと思ってしまう自分がいたから。
それって私の事を思ってくれていたってことでしょう?
私をそこまで思ってくれる人なんて、きっとミリアとナタリーぐらいだ。
いつか終わってしまう関係だとしても、それを嬉しいと思ってしまうのは仕方のないことだと思う。
しかし、こうして少しずつ女性をエスコートできるような人になっていく彼になんだか淋しさを感じてしまう。
まるで子供だと思っていた相手が、少しずつ大人になっていくのを見守るような、そんな淋しさ。
「お待たせいたしました。こちら本日の紅茶、ロイヤルミルクティーにございます」
一人で勝手にしんみりしはじめたわたしと今だ恥ずかしそうに下を向くヴァリタスの目の前に静かに紅茶が置かれる。
この空気に耐えられなくなり始めた私は、彼の断りもなしにそれを口に運んだ。
口に広がる芳醇な紅茶とそれを包み込む柔らかなミルク。
その2つが絶妙に組み合わさり、口の中を楽しませてくれた。
もう一口含み、自然と笑みが零れる。
先ほどまで落ち込んでいたものがいつの間にかスッと消えていた。
「良かった。口に合ったみたいですね」
ほっと胸を撫でおろしたように言うとヴァリタスも紅茶を一口含んだ。
「本当においしいですね」
そう言って笑う彼は、先ほどまでのどこか作ったような笑みではなくいつも見せるような砕けた微笑みだった。
「ヴァリタス様もロイヤルミルクティーは初めてだったのですか?」
「ええ、紅茶にミルクを入れるのは実は苦手で……。でもこれはすごく紅茶に合っていておいしいです」
そう言って喜ぶ彼を見ていると、こちらまで嬉しくなってしまう。
やはり彼は特別な人間なのだ。
彼を嫌いな私をここまで魅了するのだから。
しばらくそうやって紅茶を堪能していた。
しかし、私たちはここにお茶しに来たのではない。
少し落ち着いた頃を見計らい、彼の目をまっすぐ見つめた。
「ではヴァリタス様、私のお話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「そうなのですか……」
始終笑顔でメニューを開きながら私にそう伝える彼のことを、メニューを盾にちらちらと様子を伺う。
やっぱり気のせいなんかじゃない。
先ほどからいつも以上に今日は上機嫌だ。
その理由が全く思いつかず、困惑するばかり。
「注文、決まりましたか?」
「え? ええっと」
どうしよう、なにも決めてなかった。
彼の反応ばかりを見つめてしまっていたせいで、まだなにも決めていないことに気が付く。
相手を待たせるのは大の苦手だ。
しかも、待たせた分だけ罪悪感を募らせる私はすぐさま注文を決めようと今度こそ羅列したメニューを見つめるが、そう思う分だけ焦リがつのる。
メニューを見つめる視線はあちこち泳いでしまい、決めるに決められない。
そんな私を見て、何か思ったのかヴァリタスはスッと手を上げるとウェイターを呼んだ。
な、なんで⁈ なんで呼んじゃうの!
ま、待って。私まだ何頼むか決めてない!
焦ってメニューに視線を巡らせる私を後目に、彼に呼ばれるのを待っていたかのようにすぐさまウェイターが私たちの席にやってきた。
「お待たせいたしました。お伺いいたします」
待たせてない、待たせてない。
というかそんなすぐ来なくて良かったってば!
もう、ヴァリタスったらなんのよ!
気が利かなさすぎじゃない?
ヴェリタスへの恨みを心の中で叫びながら、しかし今だ頼むものは決められず。
そんな私を気にすることもなく、ヴァリタスはそそくさと注文してしまった。
「こちらのラズベリーケーキと、おすすめの紅茶を2つお願いします」
「かしこまりました」
ウェイターはヴァリタスの注文を受け取ると、一礼して去ってしまった。
あれ? 私まだ注文してないよ?
っていうか今ヴァリタスさらっと2つ分注文してた?
一瞬ぽかんとしてしまったが、彼の言った言葉を理解すると途端にジトっとした怒りが湧いてくる。
これは私、揶揄われたわけね。
「は、はじめからこうするおつもりでしたのね……」
「エスティは一度迷うと決めるのに時間が掛かりますからね。来る前から注文するものをこちらで決めていたのです」
ニコニコと笑う彼に少しだけ拗ねる。
だが、確かに私が優柔不断なのは事実だ。
だから否定はできないし、小言を言うこともできない。
しかし正直それでヴァリタスを待たせずに済んだから助かったのだけれど……。
でもなんだか、腑に落ちないわ。
まさかヴァリタスにこうして遊ばれてしまうとは思わなかった。
昔は婚約破棄計画のために散々私が振りまわしていたのに。
あれ? まさかこれってそういうアレコレの仕返し?
そうして百面相している私をなおもニコニコとしながら見つめる。
そんな彼の視線に気づき、なんだか恥ずかしくなってしまった。
このままでは彼の良い遊び道具になりかねない。
そう思うと途端に恥ずかしくなり、無理やり話題を変えることにした。
「でも、よくこんな素敵なカフェをご存じでしたね」
「ええ……」
調子をがらりと変え彼に問いかけると、なぜだか急にヴァリタスの歯切れが悪くなる。
なに? 私そんな変なこと言ってないはずなのだけど。
私の言った事と彼の反応があまりにも食い違っていて、ついじっと見つめてしまう。
すると、私に視線を逸らしたままの彼の頬が赤く染まっていく。
「実は兄上に言われたのです。男たるもの女性を喜ばせられる店の1つや2つ知っておくべきだって」
何を教えているんだあの兄は。
純情な弟にそんなキザな事を教えるなんて。
「ここへ来たのも、もう3度目なんです。こういう場所が好きかどうか自信がなくてかわからなくて……。でも、きっとエスティも気に入ってくれるだろうと思って」
「え?」
頬を赤くしながらも、そう伝える彼の思いの強さに心が揺れる。
いつも何事にも卒なくこなす彼が、そんなことで悩む姿など想像できない。
だから、そんな彼の姿にドキリと心臓が反応してしまった。
だって、認めたくはないがそれを嬉しいと思ってしまう自分がいたから。
それって私の事を思ってくれていたってことでしょう?
私をそこまで思ってくれる人なんて、きっとミリアとナタリーぐらいだ。
いつか終わってしまう関係だとしても、それを嬉しいと思ってしまうのは仕方のないことだと思う。
しかし、こうして少しずつ女性をエスコートできるような人になっていく彼になんだか淋しさを感じてしまう。
まるで子供だと思っていた相手が、少しずつ大人になっていくのを見守るような、そんな淋しさ。
「お待たせいたしました。こちら本日の紅茶、ロイヤルミルクティーにございます」
一人で勝手にしんみりしはじめたわたしと今だ恥ずかしそうに下を向くヴァリタスの目の前に静かに紅茶が置かれる。
この空気に耐えられなくなり始めた私は、彼の断りもなしにそれを口に運んだ。
口に広がる芳醇な紅茶とそれを包み込む柔らかなミルク。
その2つが絶妙に組み合わさり、口の中を楽しませてくれた。
もう一口含み、自然と笑みが零れる。
先ほどまで落ち込んでいたものがいつの間にかスッと消えていた。
「良かった。口に合ったみたいですね」
ほっと胸を撫でおろしたように言うとヴァリタスも紅茶を一口含んだ。
「本当においしいですね」
そう言って笑う彼は、先ほどまでのどこか作ったような笑みではなくいつも見せるような砕けた微笑みだった。
「ヴァリタス様もロイヤルミルクティーは初めてだったのですか?」
「ええ、紅茶にミルクを入れるのは実は苦手で……。でもこれはすごく紅茶に合っていておいしいです」
そう言って喜ぶ彼を見ていると、こちらまで嬉しくなってしまう。
やはり彼は特別な人間なのだ。
彼を嫌いな私をここまで魅了するのだから。
しばらくそうやって紅茶を堪能していた。
しかし、私たちはここにお茶しに来たのではない。
少し落ち着いた頃を見計らい、彼の目をまっすぐ見つめた。
「ではヴァリタス様、私のお話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
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