133 / 339
第4章
132.久しぶりの祖父母
しおりを挟む
「久しぶりだねエスティ。元気にしていたかい?」
「はいおじい様。お会いできて光栄です」
大広間に祖父母と向かい合うように私とお兄様は座った。
最後に会ったのは確か私が7歳ぐらいだっただろうか。
昔あったときより、だいぶ歳を取ったようではあるけれどまだまだ二人は元気なように見えた。
しかしさすがは美しい母の両親であり、容姿は2人とも一級品だ。
とても大きな孫がいるとは思えないような若さだった。
その反面、話し方はすでに老人のそれなので、違和感がものすごくある。
だけど優しげな眼差しは昔と全く変わっていないようで安心した。
「ふふ、それにしてもエスティったら。本当にきれいになりましたねぇ」
私を見てしみじみ言うおばあ様は嬉しそうに微笑んだ。
おじい様もつられて笑顔になる。
なんとも穏やかで優し気な空間がそこに広がっていて、とても心地が良かった。
それからしばらく、会えなかった時を埋めるようにたくさんの話をした。
主に私とおばあ様が会話をして、おじい様とお兄様はただ黙って聞いているだけだった。
「ねぇお兄様。お兄様も何かお話したら?」
合間にそう問いかけたがお兄様はクビを振って拒んだ。
「おじい様もおばあ様も、お前の話を聞きたいんだよ。だから今回は目一杯、2人にお前の話を聞かせてくれたらいい」
お兄様は穏やかな顔でそう言って、また黙り込んでしたまった。
当のおじい様もおばあ様もその言葉に賛成したように、ゆっくりと頷くだけだった。
なんだか3人の反応に違和感を覚えながらも、促されるまま私は話を続けた。
友人の事、勉強の事、家族の事。
たくさんの話をしたが、得に2人が興味を示したのは、なんといってもヴァリタスの話だった。
第2王子とは言え、一国の王子様の事に興味がないわけがない。
特に年配の人たちはその傾向が強いのだ。
大して話すことも無かったのだが、2人の興味津々な瞳を見ているとどんな話でもしてあげたくて、どうにか記憶を絞りだして話し続けた。
そんなことをしていると、いつの間にか当たりは橙色に染まっていた。
一体どれほど話続けていたのだろうか。
「いけない、もうこんな時間になってしまいましたね。ごめんなさいエスティ。ずっと話続けさせてしまって」
「そんなことないわ。私もおばあ様と話しができて嬉しかったんですから」
「まぁ嬉しい」
おばあ様が笑った時、ふと昔の記憶が蘇った。
それはおばあ様ではなく、私にまだ興味があった頃のお母さまの笑顔に似ていたから。
急になつかしさがこみ上げ、目じりが熱くなる。
いけない、こんな事で泣いてしまいそうになるなんて。
必死に涙を引っ込め平静を保った。
こんなことで泣いてしまっては、おじい様やおばあ様に泣き虫だって思われてしまう。
そんなの恥ずかしいし、この2人に心配なんて掛けたくなかった。
それから、おばあ様が飽きるまで2人で会話を続けていたけれど、それも2日目になるとどうしても話題というのは尽きるもので。
それならば外へ出てピクニックでもしようとおばあ様が提案してくれた。
「ピクニック! 私ほとんどしたことがないのです。すごく楽しみですわ」
「とてもきれいなお花畑があるんですよ。今日はそこへ行きましょう」
近くだと言っていたから油断していたが、目的地へ辿りつくにはゆうに1時間は掛かった。
しかも緩いとはいえ、上り坂が続いているものだから途中で休憩に入らなければならないほどきつい道のりだった。
前世ほど体が弱くないとはいえ、ほとんど屋敷に籠り切りの私にはきついものだった。
そんな私とは裏腹に、おばあ様は息も上げずに上っていくものだから、少し恐ろしくなった。
それでもなんとか歩き続け、辿りついた先の光景は思わず疲れが吹っ飛ぶほどの代物だった。
「うわぁ、すごい! 一面お花畑!!」
黄色やピンク、白色の色とりどりの花が地面一杯に広がっている。
1つ1つが小さな花なのに、それが一面中広がっているのは壮観である。
思わず感動の声が出て、辺りを見渡す私をおばあ様は嬉しそうに見つめていた。
「ここで風呂敷を敷いてお茶でもしましょうか」
「はい!」
持ってきた大きな風呂敷を一緒に広げ、そこに2人で座る。
バスケットに入れてきた軽食と、大きな筒をおばあ様は手に取った。
その見かけない筒が気になっておばあ様に問いかける。
「? おばあ様、それなぁに?」
「ああ、これはね、どこでも熱いお茶が飲める魔法の筒なの」
「ええ⁈ 本当ですか?」
どこか面白そうに私を見やりながら、筒の上にしてあった蓋を取ると一緒に持ってきていたカップに中身を注いだ。
中から出てきた紅茶は、ポットから出てくる紅茶と同じく、小さな湯気を上げていた。
「ほ、本当に、本当に熱いお茶が出てきましたよ、おばあ様! すごい。一体どうやって?」
「ふふ、言ったでしょう。魔法だって」
魔法にはこんなこともできるのか。
すごい、の言葉しか出てこない。
そういえば、市井見学会の時、魔法道具店なるものに入ったっけ。
私の求めるものがなかったからそうそうに出てきてしまったけれど、こんな優れものがあるのならもっとじっくり見ておけばよかった。
「はいおじい様。お会いできて光栄です」
大広間に祖父母と向かい合うように私とお兄様は座った。
最後に会ったのは確か私が7歳ぐらいだっただろうか。
昔あったときより、だいぶ歳を取ったようではあるけれどまだまだ二人は元気なように見えた。
しかしさすがは美しい母の両親であり、容姿は2人とも一級品だ。
とても大きな孫がいるとは思えないような若さだった。
その反面、話し方はすでに老人のそれなので、違和感がものすごくある。
だけど優しげな眼差しは昔と全く変わっていないようで安心した。
「ふふ、それにしてもエスティったら。本当にきれいになりましたねぇ」
私を見てしみじみ言うおばあ様は嬉しそうに微笑んだ。
おじい様もつられて笑顔になる。
なんとも穏やかで優し気な空間がそこに広がっていて、とても心地が良かった。
それからしばらく、会えなかった時を埋めるようにたくさんの話をした。
主に私とおばあ様が会話をして、おじい様とお兄様はただ黙って聞いているだけだった。
「ねぇお兄様。お兄様も何かお話したら?」
合間にそう問いかけたがお兄様はクビを振って拒んだ。
「おじい様もおばあ様も、お前の話を聞きたいんだよ。だから今回は目一杯、2人にお前の話を聞かせてくれたらいい」
お兄様は穏やかな顔でそう言って、また黙り込んでしたまった。
当のおじい様もおばあ様もその言葉に賛成したように、ゆっくりと頷くだけだった。
なんだか3人の反応に違和感を覚えながらも、促されるまま私は話を続けた。
友人の事、勉強の事、家族の事。
たくさんの話をしたが、得に2人が興味を示したのは、なんといってもヴァリタスの話だった。
第2王子とは言え、一国の王子様の事に興味がないわけがない。
特に年配の人たちはその傾向が強いのだ。
大して話すことも無かったのだが、2人の興味津々な瞳を見ているとどんな話でもしてあげたくて、どうにか記憶を絞りだして話し続けた。
そんなことをしていると、いつの間にか当たりは橙色に染まっていた。
一体どれほど話続けていたのだろうか。
「いけない、もうこんな時間になってしまいましたね。ごめんなさいエスティ。ずっと話続けさせてしまって」
「そんなことないわ。私もおばあ様と話しができて嬉しかったんですから」
「まぁ嬉しい」
おばあ様が笑った時、ふと昔の記憶が蘇った。
それはおばあ様ではなく、私にまだ興味があった頃のお母さまの笑顔に似ていたから。
急になつかしさがこみ上げ、目じりが熱くなる。
いけない、こんな事で泣いてしまいそうになるなんて。
必死に涙を引っ込め平静を保った。
こんなことで泣いてしまっては、おじい様やおばあ様に泣き虫だって思われてしまう。
そんなの恥ずかしいし、この2人に心配なんて掛けたくなかった。
それから、おばあ様が飽きるまで2人で会話を続けていたけれど、それも2日目になるとどうしても話題というのは尽きるもので。
それならば外へ出てピクニックでもしようとおばあ様が提案してくれた。
「ピクニック! 私ほとんどしたことがないのです。すごく楽しみですわ」
「とてもきれいなお花畑があるんですよ。今日はそこへ行きましょう」
近くだと言っていたから油断していたが、目的地へ辿りつくにはゆうに1時間は掛かった。
しかも緩いとはいえ、上り坂が続いているものだから途中で休憩に入らなければならないほどきつい道のりだった。
前世ほど体が弱くないとはいえ、ほとんど屋敷に籠り切りの私にはきついものだった。
そんな私とは裏腹に、おばあ様は息も上げずに上っていくものだから、少し恐ろしくなった。
それでもなんとか歩き続け、辿りついた先の光景は思わず疲れが吹っ飛ぶほどの代物だった。
「うわぁ、すごい! 一面お花畑!!」
黄色やピンク、白色の色とりどりの花が地面一杯に広がっている。
1つ1つが小さな花なのに、それが一面中広がっているのは壮観である。
思わず感動の声が出て、辺りを見渡す私をおばあ様は嬉しそうに見つめていた。
「ここで風呂敷を敷いてお茶でもしましょうか」
「はい!」
持ってきた大きな風呂敷を一緒に広げ、そこに2人で座る。
バスケットに入れてきた軽食と、大きな筒をおばあ様は手に取った。
その見かけない筒が気になっておばあ様に問いかける。
「? おばあ様、それなぁに?」
「ああ、これはね、どこでも熱いお茶が飲める魔法の筒なの」
「ええ⁈ 本当ですか?」
どこか面白そうに私を見やりながら、筒の上にしてあった蓋を取ると一緒に持ってきていたカップに中身を注いだ。
中から出てきた紅茶は、ポットから出てくる紅茶と同じく、小さな湯気を上げていた。
「ほ、本当に、本当に熱いお茶が出てきましたよ、おばあ様! すごい。一体どうやって?」
「ふふ、言ったでしょう。魔法だって」
魔法にはこんなこともできるのか。
すごい、の言葉しか出てこない。
そういえば、市井見学会の時、魔法道具店なるものに入ったっけ。
私の求めるものがなかったからそうそうに出てきてしまったけれど、こんな優れものがあるのならもっとじっくり見ておけばよかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる