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第6章
304.最悪な対応
それから2日も経たず、断罪の件は公式に実行されることが決まった。
しかも実行されるのは2日後だという。
何度言っても彼女への対応の改善については聞き入ってくれないかったこと事を考えると物凄いスピードだ。父の真意はわからないが、ここまで順調に進みすぎていると何かあるのではと勘繰ってしまう。
そしてその予感はとあるチラシで完全に確信へと変わった。
『悪逆皇帝の生まれ変わり―エスティ・ベルフェリトの断罪裁判―』
そんな見出しのチラシが王都のあちこちに張り出されたのだ。
まるで見世物のように。
なるほど、これが狙いか。
最近は最西部に魔物の出現が報告された。
この国始まって以来の事態という事もあり、国中が騒いだほどの出来事だった。
強いものではなかったし被害はほとんど出ていないため、脅威というほどのものではないが国民の間には不安がっている者も相当数いるだろう。重ねてエスティの問題も浮上し、今年は厄年なのではないかと噂まで立っているほど。
このまま国の運気が下がる前に国民たちに娯楽を与え気分を盛り返そうと思えば、この断罪は恰好の催し物と言えよう。
迅速な対応には感謝するが、彼女を軽んじていると思える扱いに気分が悪くなる。
だが、言い出したのは自分だ。
こうなることぐらい予想しておかなければ、意見する立場にすらなれない。
グッと感情を堪え、今日も彼女の元へと向かった。
「断罪裁判……、ですか?」
チラシの内容を伝えると、彼女は小首を傾げた。
可愛らしい仕草にドキリとする。
以前までの毅然な態度は、ここ数日で姿を消した。
ここに来て数分話すだけの間柄ではあるが、こんな彼女は今までで初めてみた。
まるで何もかもを諦めてしまったような、何も興味のない人のように見える。
だがその姿は彼女の前世を彷彿とさせた。
もしかしたら、本当はこっちの方が素に近いのかもしれない。
今までは気を張っていただけで。
目の前の男が前世の自分を殺した相手の生まれ変わりならば警戒して当然だ。
ただそうやってずっと気を張らせていた事が少しだけショックだった。
「ええ。貴方を公式の場で制裁するらしいのです」
「制裁……。そうですか。それはいつの話ですか?」
「明後日には実行されると」
「明後日……」
それだけ言うと遠くを見つめるように上を向き黙り込んでしまった。
何も考えていないように見えるが、おそらく彼女は全てを諦めてしまっているのだろう。
ただ今の状況を受け入れている。
静かなだけの沈黙が彼女のこれからを物語っているような気がした。
しかし、この静寂を打ち消す事すら僕にはできなかった。
「あの、お願いがあるのですが」
こちらに顔を向けた彼女が問いかける。
凛と澄んだ瞳がこんな状況であっても美しい。
「なんでしょうか?」
勢いよく食いつくと彼女は微笑を僅かに浮かべながら答えた。
「紙とペンを持ってきてくださいませんか? 明日で構いませんので」
「紙とペン……?」
「大切な方に、お手紙を」
手紙……。
その言葉に強い衝撃が脳裏に響いた。
大切な人に手紙を書くという行為が何を表しているのか、わからないほど馬鹿じゃない。
彼女は覚悟しているんだ。
自分が消える運命を。
もしかしたら、この牢獄に閉じ込められてときから。
いいや、あのパーティで騎士たちに自分の前世を暴露された時から前世と同じ運命を歩むのだと覚悟していたのかもしれない。
人より早く前世を告げられ、自分がどれほど人々に恨まれ望まれないまま死んでいったのかを知っていた。そんな前世を背負っていれば、世間に知られたときどんな風に扱われるのか想像しないわけがない。
きっと幼い頃より、そんな未来を恐れていたはずだ。
だからこそ、僕からいつも逃れたいと願っていたに違いない。
せめて下位貴族や庶民に生まれていれば、そんな恐ろしい未来を畏怖することもなかっただろうに。
上位貴族に生まれよりにもよって王族の、しかも僕なんかと婚約したばっかりに彼女はいつもその恐怖に怯える羽目になってしまったのだ。
しかも実行されるのは2日後だという。
何度言っても彼女への対応の改善については聞き入ってくれないかったこと事を考えると物凄いスピードだ。父の真意はわからないが、ここまで順調に進みすぎていると何かあるのではと勘繰ってしまう。
そしてその予感はとあるチラシで完全に確信へと変わった。
『悪逆皇帝の生まれ変わり―エスティ・ベルフェリトの断罪裁判―』
そんな見出しのチラシが王都のあちこちに張り出されたのだ。
まるで見世物のように。
なるほど、これが狙いか。
最近は最西部に魔物の出現が報告された。
この国始まって以来の事態という事もあり、国中が騒いだほどの出来事だった。
強いものではなかったし被害はほとんど出ていないため、脅威というほどのものではないが国民の間には不安がっている者も相当数いるだろう。重ねてエスティの問題も浮上し、今年は厄年なのではないかと噂まで立っているほど。
このまま国の運気が下がる前に国民たちに娯楽を与え気分を盛り返そうと思えば、この断罪は恰好の催し物と言えよう。
迅速な対応には感謝するが、彼女を軽んじていると思える扱いに気分が悪くなる。
だが、言い出したのは自分だ。
こうなることぐらい予想しておかなければ、意見する立場にすらなれない。
グッと感情を堪え、今日も彼女の元へと向かった。
「断罪裁判……、ですか?」
チラシの内容を伝えると、彼女は小首を傾げた。
可愛らしい仕草にドキリとする。
以前までの毅然な態度は、ここ数日で姿を消した。
ここに来て数分話すだけの間柄ではあるが、こんな彼女は今までで初めてみた。
まるで何もかもを諦めてしまったような、何も興味のない人のように見える。
だがその姿は彼女の前世を彷彿とさせた。
もしかしたら、本当はこっちの方が素に近いのかもしれない。
今までは気を張っていただけで。
目の前の男が前世の自分を殺した相手の生まれ変わりならば警戒して当然だ。
ただそうやってずっと気を張らせていた事が少しだけショックだった。
「ええ。貴方を公式の場で制裁するらしいのです」
「制裁……。そうですか。それはいつの話ですか?」
「明後日には実行されると」
「明後日……」
それだけ言うと遠くを見つめるように上を向き黙り込んでしまった。
何も考えていないように見えるが、おそらく彼女は全てを諦めてしまっているのだろう。
ただ今の状況を受け入れている。
静かなだけの沈黙が彼女のこれからを物語っているような気がした。
しかし、この静寂を打ち消す事すら僕にはできなかった。
「あの、お願いがあるのですが」
こちらに顔を向けた彼女が問いかける。
凛と澄んだ瞳がこんな状況であっても美しい。
「なんでしょうか?」
勢いよく食いつくと彼女は微笑を僅かに浮かべながら答えた。
「紙とペンを持ってきてくださいませんか? 明日で構いませんので」
「紙とペン……?」
「大切な方に、お手紙を」
手紙……。
その言葉に強い衝撃が脳裏に響いた。
大切な人に手紙を書くという行為が何を表しているのか、わからないほど馬鹿じゃない。
彼女は覚悟しているんだ。
自分が消える運命を。
もしかしたら、この牢獄に閉じ込められてときから。
いいや、あのパーティで騎士たちに自分の前世を暴露された時から前世と同じ運命を歩むのだと覚悟していたのかもしれない。
人より早く前世を告げられ、自分がどれほど人々に恨まれ望まれないまま死んでいったのかを知っていた。そんな前世を背負っていれば、世間に知られたときどんな風に扱われるのか想像しないわけがない。
きっと幼い頃より、そんな未来を恐れていたはずだ。
だからこそ、僕からいつも逃れたいと願っていたに違いない。
せめて下位貴族や庶民に生まれていれば、そんな恐ろしい未来を畏怖することもなかっただろうに。
上位貴族に生まれよりにもよって王族の、しかも僕なんかと婚約したばっかりに彼女はいつもその恐怖に怯える羽目になってしまったのだ。
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お楽しみいただけると幸いです。