帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました

山田うちう

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第12話 王宮のお茶会

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今日は侍女や執事を中心に朝から家中がバタバタしている。
私の部屋でも、母上と数人の侍女が揃って私をせっつく。
「今日のドレスはこのブルーにしましょう。ネックレスは、ブルートパーズを」
母上が私の服装を決め侍女に指示を出す。
ブルートパーズのネックレスは私のお気に入りだ。
普段なら、母上が私の服装まで決めることはない。私と侍女に任せてくれる。
けれど、今日は気合が入っているのだろう。
何せ、王宮に行く日だから。


そう、婚約者候補として、とうとう第一皇子と顔合わせだ。
第一皇子より年下で真名を授かった令嬢は、私を入れて2人しかいないそうだ。
今日は、その令嬢も来る。
聞くところによると公爵家の子らしい。
まあ、上手いことその子が婚約者に選ばれてくれれば、当家としては万々歳だ。
それは、父上も母上も、私も同じ考え。


けれど、また別の話もある。
母上としては、娘が第一皇子の婚約者に選ばれて欲しくない。けれど、他家の令嬢と比べられる前提の顔合わせの席で、服装やアクセサリーで公爵家の子に引けを取って欲しくもないのだ。
普通に考えたら、伯爵家である当家よりも公爵家の方が、爵位が高い。
公爵家の家柄を見せつけるように娘を着飾らせるだろう。
貴族間の挨拶なんて、要はマウント合戦。
お互いの格付けの為のものなのだから。


ブルートパーズのネックレスに、同じブルートパーズの髪飾りをつけて、
私は母の決めたブルーのグラデーションが美しいドレスを着た。
あとは馬車で乗り付けるだけ。
さてさて、第一皇子とやらは、どんな方だろうか。

*************************************
父上と母上と共に王宮につくと、直ぐに広間へと案内された。
広間は、大理石で造られ、金銀で飾られていた。
そして、既に公爵家が王と皇后にあいさつを済ませていた。


当家も、広間をまっすぐに進み、玉座に座るプイッサ陛下とパイス皇后にご挨拶する。
「陛下、本日はお招きいただきありがとうございます。ルボン・バーティでございます」
「陛下、ご無沙汰しており申し訳ありません。ケインリーが両陛下にご挨拶申し上げます」
「うむ。伯爵、よく来た。ケインリーも久しいな」
「ありがとうございます、陛下。さっそくですが、娘を紹介させて頂きます。私の隣におりますのが、ひとり娘のルセル・バーティでございます。さ、ルセル、陛下にご挨拶を」
父上に促され、私も陛下にあいさつする。
「陛下、本日はお招きありがとうございます。ルセル・バーティでございます」
「ルセルか。生まれた時に伯爵が王宮に連れてきた以来だが、賢そうな子だ。私もさっそく第一皇子のアポートルを紹介しよう」
陛下が私に声をかけ、第一皇子を私たちの前に立たせた。


「殿下、本日はお招きありがとうございます。ルセル・バーティでございます」
「ルセル嬢、第一皇子のアポートルです。今日はゆっくりしていってください。いま、別室にお茶の用意をさせていますから」
第一皇子がにこやかに案内をしてくれる。
黒髪の美男子だ。


お茶は殿下の書斎に準備され、ここからは大人とは別行動になった。
公爵家の令嬢、私、殿下の3名でテーブルを囲む。
公爵家の令嬢は、名前をベティ・グラフトンと名乗った。金髪がきれいな令嬢だ。
私は赤髪なので、内心、金髪がうらやましい。
ベティは、私のブルーのドレスとは対照的にピンクのドレスを着ている。


「ベティ嬢はどんな真名をもらったの?」
お茶の席、殿下が質問する
「私の真名はフローです。花という意味があります」
「花か、いいですね。かわいらしい。ルセル嬢は?」
と殿下。
「シュチピュリです。意味はないようです」
「え?真名ってすべて意味があるのでしょう?僕はそう聞いているけど」
「私の真名が、意味のないという意味なんです」
「か、変わっていますね」
殿下が困惑気味だw


「そうそう、話は変わりますが、来月、僕の誕生日なので、王宮で祝賀会があります。お2人を招待しますから、いらしてくださいね」
殿下が話題を変えた。
8才とはいえ、さすが皇子。場の空気をバッチリ読めるようだ。
殿下もベティの口元に現れた一瞬の笑みが見えたのかな?
あの子、私の真名を笑ったよね?


静かに、ふつふつと怒りがこみ上げた。
ベティ。
ピンクのドレスもあざとく見えてくる。
友達になれるとかポジティブな期待はしてはいなかったけど、人の真名を笑う子とはね。意地が悪いのか、高飛車な性格なのか、または婚約者候補として敵認定されているのか?まあ、帝国貴族の序列は公爵家が第1位だから、爵位から言えば私の方が格下ではあるけど、私も馬鹿にされたまま黙ってる性格はしていない。まあ、今直ぐどうこうするわけじゃないけど。


「じゃ、殿下に次にお会いするのは来月ですか?」
「いいえ、もっと会いますよ、ベティ嬢」
「いつも3人で会うんですか?」
「いいえ、違いますよ、ベティ嬢。次からはそれぞれ別に会います」
ベティは積極的だ。
私はもう家に帰りたくなっているというのに、ベティは殿下に質問を続ける。
はー、帰りたい。帰って図書室に行くか、剣術の修練をするかしたい。
けれど、話は続く。
「ルセル嬢、君は普段家では何をして遊んでるの?」
「殿下は何をして遊んでいるのですか?」
質問には質問で返す。
「僕は弟と遊んでいます。ルセル嬢は、もうリビとも会いましたか?」
「いえ、リビ殿下とはお会いしていません」
「まだでしたか。では次はリビも一緒にお茶を飲みましょう」




*************************************
お腹がタポタポになって家に帰った。
私は、家に戻ると直ぐさま図書室に入った。
今日のお茶会で、ぜひとも調べたい魔法が出来たからだ。
私は、テーブルに座って検索ワードを言う
「ガイドの魔法、諜報の魔法」
すると、それぞれ1冊本が光った。
「あなたを導くガイドを生む魔法の書」
「秘密の諜報魔法」


それに、今日のお茶の席で、殿下と話してわかったこと。
殿下の性格は、礼儀正しく温厚。
外見は、黒髪の美男子。
私たちは、殿下の誕生日までの間、週に1、2回会うらしい。



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