帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました

山田うちう

文字の大きさ
14 / 16

第14話 デート!

しおりを挟む

こんなことしていたくないのに!
私は、父上の準備してくれた馬車に乗り、王宮に出向いていた。
お約束のデートの日である。
父上を介して、やんわりと「デートは不要です。公爵令嬢の方を大事にされてください」と伝えて頂いたのに、結果は全く効果なし。
で、私は馬車に揺られて王宮を往復する羽目に。


大体、8才かそこらの男子とお茶を飲んで何が楽しいのか?
前世の記憶から言えば、8才なら小学校2年生。
そのころの男子と言えば、虫の死骸を宝物にするヤツ、学校の教室で机に乗っかり裸踊りするヤツ、授業中にトイレと言い出せず○○コ漏らすヤツ。
そんなことしか記憶に浮かんでこない年齢なのだ。
そんな年齢の男子とお茶って・・・・。

はー。
「どうかしましたか?ルセル嬢?」
おっと、無意識にため息が出ていたのね。

「いえ、殿下、なんでもありません」
そう言うと、殿下は少し笑って、
「退屈なのでしょう?」
と首をかしげて私を見た。
わかっているんでしょ!殿下(怒)と思いつつ、顔に出せない貴族社会。
「いえ、殿下、そんなことはありません」
「ふふふっ、わかっているんですよ、ルセル嬢。あなた、王宮にくるのも乗り気じゃ無いですよね?」
「え?」
ドキっとした。
そんなに態度に出ていたかしら?
「いえ、殿下。この広いお庭が立派で眼を奪われていただけですわ」
「ほう。ルセル嬢は庭に興味があるのですね?」
「うっ」
しまった。まったく興味がない。
「いえ、この庭くらい広い部屋が欲しいなと考えただけです(嘘です)特に庭に興味がある訳じゃなくて」
「ハハハ。ルセル嬢は嘘が下手だな」
(いや、8才男子でこんなに落ち着いているあなたの方が変なんですよ、殿下)


「ルセル嬢、やりたいことがあったら言ってください。僕たち、もしかしたら一生を共にする間柄になるかもしれませんから」
「ご冗談を、殿下。伯爵家と公爵家では、もちろん公爵家の方が殿下のお相手としてはよりふさわしい地位でいらっしゃいますから。私になど気を遣われず、どうぞ殿下のお気持ちのままに侯爵家のご令嬢を・・・」
王宮の中庭でとりどりに咲く花を見るでもなく、8才の子供とこんな心理戦を展開しているなんて。
「私は家に帰って、秘密の領地作戦を練りたいのよー」と本心を言えたらどんなに良いか。


「ルセル嬢、僕、実は天邪鬼なんですよ。フフフ」
殿下が、眼を細めた。
え?急に何?怖いじゃない。
「もちろん公爵家の方が僕の相手としてはより良い地位でしょう。けれど、伯爵令嬢であるルセル嬢を婚約者として指名することも僕にはメリットがありますよ?わかっているでしょう?」


確かに。
真名の継承者が少ないとは言え、今までの前例でみれば、現王家は真名を与えられた公爵家か侯爵家の令嬢を王妃となる婚約者として選んできていると聞いた。しかし、今回、殿下が公爵家より地位の低い伯爵家の娘を婚約者に選んだ場合、伯爵家以下の貴族に対して「王族は公爵家、侯爵家以下の貴族も重要視している」という印象を与えることができるし、公爵家と侯爵家に対しても、その地位が王妃を選ぶ前提ではないという釘刺しにもなる。
単純に考えれば一石二鳥。
けれど、それは、そんな前例のないことを皇帝陛下がお認めになれば、の話。貴族社会は、前例が大事。例外を好まないって殿下もわかっているだろうに。


「あれ?ルセル嬢、もしかして前例がないのに何を言ってるのって思ってます?ハハハ。陛下の治世のすばらしさはルセル嬢も知るところだと思いますが、子供の教育に関しても、陛下は、“僕の代の帝国は僕のモノ”という信念を持っていらっしゃる珍しい方なんですよ。だから、今回は、あ・り・え・ま・す・よ!」
「な、なにがありえるのですか?」
焦って、馬鹿な質問をした。
「いや、あなたと私が生涯を共にするってことですよ」
「・・・・・」
「だから、やりたいこと、言いたいことは最初から言っておかないと。後からは言い出せなくなりますよ」


(この人・・・脅しだけだろうか?それとも・・・)


【ルセル、別にまだ子供なんだし、領地の中でも1つの村の計画だから、本当にやりたいこと話しちゃえば?そしてら、こんなお茶会やめられるかもよ】


急にアルファが意識を繋げてきた。
私とアルファは魔力を流し合っているから、いつでも意識を繋げることが出来る。最初の日は気絶しちゃったけれど、今はもう慣れて普通に生活できるようになっていた。アルファ曰く、私の魔力量が急激に増えたんだって。
ま、気絶ばかりしていたら生命の危機だからね、身体が順応しようと頑張ったんだろうな。偉いな、私。


それに、実はアルファと一緒に我が伯爵家領地で計画していることがある。
その計画を練るのが楽しくて楽しくて、ここで無駄にお茶を飲んでいるのが悲しくなるほどなのだ。
もう、今直ぐでも家に帰ってアルファと計画を練りたいのに。


って、そんなことより、どうしよう・・・。
言うか、言わないか?
確かに、言わなければ、この退屈なお茶会がしばらく続く。
それにもし本当に婚約者に選ばれたら・・・。
よし。少し、泣き落とし系でやってみるか・・・。


「殿下、私はバーティ伯爵家の一人娘で唯一の跡取りです。父上と母上は、私が婚約者に選ばれるのは大変名誉だと考えていますが、本当は私が後継者になることを望んでいます。正直、父上と母上を泣かせたくないんです。だから、私は婚約者に選ばれるわけにはいきません。ですから、もし、殿下が私を婚約者として選ばないと誓ってくださるなら、私も私の本当の気持ちを伝えて過ごさせて頂きます」


午後になり、少し陰って寒くなった中庭で、私と殿下が見つめ合っていた。
「ルセル嬢、今はその約束は出来かねます。ですが、最大限考慮するとお約束します。ですから、それを私の誠意として受け取ってはくれませんか?」
「そうですよね。即答は出来ないですね」
少し落胆したが、仕方ないという気持ちが勝った。


「わかりました、殿下。私もやりたいことを言うようにします。とりあえず、もう寒くなってきましたから、今日はこの辺で」
「わかりました。ルセル嬢。でも気になるから、明日も王宮に来てもらえますか?」


(え、明日も?)
驚いて声がでるところだった。が、こらえきれた。
「かしこまりました、殿下。では、また明日」
「はい。ルセル嬢。明日は王宮の馬車を迎えにやりましょう。午前中には着くでしょうから仕度をお願いします」
殿下がエスコートしてくれ、私は帰宅の途についた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...