帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました

山田うちう

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第15話 デート!デート!

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翌日、殿下が差し向けてくださった迎えの馬車で王宮に向かった。
2日連続のデートって・・・。
公爵令嬢の順番はどうなっているのかしら?
それに、殿下だって他にも色々と勉強があったりするでしょうに。


王宮につくと、早速、殿下のお部屋に案内された。
殿下の自室に入るのは、これで2度目。相変わらず豪勢で広い部屋。
「ルセル嬢、申し訳ないね。もうすぐ勉強が終わるから、あと少しの時間ここでお茶でも飲んで待っていてくれ」
部屋に入ると殿下は、大きな机に座って、何やら書き物をしていた。
私は、殿下の部屋の本棚が気になって、大人しく座ることができず歩き回っていた。
「うん?ルセル嬢?」
殿下が、座らない私に声を掛けてきた。
「殿下、私、本が好きなんです。だから、ここの本棚を見て待っていても良いですか?こちらには私の家には無い本が沢山あるようです」
「もちろん構いませんよ、ルセル嬢。待たせてしまって申し訳ないですね」


(アルファ、ここの本はすごいね)
私は、アルファに話しかける。
会話は、声に出す必要がないから内緒話も場所を選ばずできる。
【うん。ルセル、ここの本棚にある本は、帝国のどの商人も持っていない貴重な蔵書ばかりだね】
(だよね~、さすが殿下の自室って感じ)
【でも、もうすでにここの本の管理人たちと繋がることができたから、ここの本の知識はすべてルセルのものになるよ。ルセルのことが一目で気に入ったみたいで、管理人達がよろこんで本の知識をくれるって言っている】
(ほんとに?あ~ん、だったら今日は王宮に来た甲斐があったね!)
本当にただの無駄足にならなくてよかった。
(アルファも更に賢くパワーアップだね)


「ルセル嬢、気になる本はなかったのかな?本棚を眺めるだけで、本を手に取ることが無いようだけど」
「あ、いえ、そんなことはないです。いま、その、本を選んでいて・・・」
本の知識はアルファを通して私に流れてくるので、本を手に取りパラパラ読んだりする真似をすることを忘れていた。いけない、いけない。
私はわざとらしく、何冊か本棚から引き出してパラパラと本をめくってみた。
すると、開いた本の間から、本の管理人がお辞儀してくれるので、私も微笑みで返す。


それにしても、殿下はまったく。
勉強中だって言っていた割に、私を盗み見ているという相変わらずの目ざとさだわ。


「よし、終わった。僕もお茶を頂こう」
しばらくして、殿下が言った。
「あ、お疲れ様です。殿下」
私も席に着く。
王宮の侍女が2人分の新しいお茶を出してくれた。
「うん。今日のお茶も美味しいね」
「はい、殿下。とても美味しいお茶ですね」
殿下が、お茶を飲みつつ、目線で合図のようなものを送ってくる。
昨日の話の続きを促しているんだろう。
なんとも、大人びたやり方だ。


「殿下、昨日はありがとうございました。いろいろとご配慮頂き、本当に感謝申し上げております」
「いやなに、当たり前の気遣いに対して、礼は必要ないですよ」
殿下がニコっと笑う。
礼は不要と言いつつも、嬉しがっている様だ。
「さて、では私のやりたいことをお教えいたしますが、ちょっと、長い話になるかもしれませんが、それでもよろしいですか?」
「もちろんです、ルセル嬢」


私は、一口お茶を飲んで、はーっと息を吐いた後話し始めた。
「私、領地運営がしたいんです。そのことを側近(アルファの事だけど側近でごまかしておこう)と計画していて、殿下とお会いしていても、そちらのことが気がかりで・・・すみません」
「領地運営?ルセル嬢が?」
「はい。次の誕生日がきたら、父上に領地内の村を1つ譲り受けたいとおねだりするつもりなんです。けれど、ただ欲しがったところで、父上は厳しい方ですから、領民の生活を子供のおもちゃにできないと突っぱねてくると思います。ですから、父上を納得させるだけの計画を立てなければダメだろうと思いまして」
殿下がびっくりした顔で、また同じことを聞いてきた。
「ルセル嬢が領地運営?君、まだ子供でしょ?」
「はい、でも、バーティ伯爵領は、ゆくゆく私が治めるべき領土です。ですから、領地の一部でもいいので、運営に着手するのは、早ければ早いほど良いと考えています」
殿下が腕組みをした。
私のコト「何を言ってるんだコイツ?」って思っているのかしら。
お互いに無言でお茶を一口。


「ルセル嬢、では、いまのところ計画はどこまで進んでいるのですか?」
「はい、まずは父上から譲り受ける村の場所を選定しています。そこがゆくゆくわが領地の首都となる可能性もありますので、慎重に選定しています」
「領地の首都?」
「はい。私が運営する限り、その土地を繁栄させたく考えておりますので」
「な、なるほど・・・」
眼をむく殿下。


「では、領地内の村の状況はもう調べられたのですか?」
「まだ父上の許可なく自由に外に出られないので、知識としては調べ終わっていますが、現地確認はこれからです」
「譲り受ける村の目星は?」
「もう、大体ついています」
「運営方法はどう考えて?」
「それも、検討の土台にのせる原案は出来ています」
また殿下が目をむく。そして考え込む。
「いや、確かに領地の運営方法や運営主体の選択などは、すべて領主に任されている権限になります。ですから、バーティ伯爵が認めさえすれば、その一部でも全部でもルセル嬢が運営することに何の支障もありません。が・・・」


(が・・・、なによ?)


「いや、すごいことを考えますね。ルセル嬢。年下の女の子とは思えませんよ」
「い、いえ、恐れ入ります。殿下」
再び、お茶を一口。


「ハハハハハハハハ、ハハハハハハハ」
突如、殿下が大声で笑い出した。
私は殿下の笑い声にびっくりして、頬が引きつった。
ひとしきり笑い続けた殿下が、私の眼を覗き込んできた。
まっすぐに私を見ている。
「ルセル嬢、良いですね、君はなんて楽しくて素敵な方なんだ。いや、本当に良いです。ハハハハ」
「はは、恐縮です。殿下」
殿下の大声とは裏腹に私の返事は消え入りそうなほど弱弱しくなる。
既に腰が浮き始めていた。家に帰りたい。


(アルファ、帰りたいわ。何か助けになってくれない?)
【ルセル、帰りたいなら立ち上がって帰るだけでいい。何も言わずに出てしまえばいいのさ】
ダメだ、アルファは役に立たない。


「いや、言わなくてもわかっていると思いますが、もちろん僕も参加しますよ、その計画。そうだな、表立って皇子の立場で何かする訳にはいきませんから、僕は裏で参加するとして、表立って動いてくれる僕の代理を立てましょうか?あ!そうだな、それなら大人に代理してもらった方が後々君の役にも立つでしょう?うーん、そうだ!ちょうど良いのが1人おりますよ。その者に頼むとしましょう。ハハハハハ。いやー、ワクワクしますね!ルセル嬢。僕もゆくゆくこの帝国を治める王となる身。村の1つぐらい繁栄させられなければ、僕の王としての資質が疑われるでしょう。いやー、任せてください、全力で協力しますよ。この際、君の子分第一号になっても良いくらいです!そりゃ、こんな計画があったら楽しくて呑気にお茶なんて飲んで時間を無駄にできないと思いますよ。そうか、そうか。うんうん、確かにわかります、ルセル嬢のお気持ちが。いや、本当に話してくれてよかった・・・。じゃ、明日から一緒に頑張りましょうね。明日も僕がお迎えの馬車を出しましょう。フフフ、出来れば午前中早い時間から来ていただきたいな。あ!それに荷物が多いと大変でしょうから、誰か下働きの者を同行させましょう。荷物があったら、その者に持たせればいい!うんうん。いやー、忙しくなりそうですね、ね?ルセル嬢!聞いていますか?ルセル嬢?ルセル嬢?」


殿下がどんどん喋る。
独り言炸裂。
前世の記憶にある、やばいハイテンションの人のよう。
そして、話す内容もどんどん危険になってゆく。
子分なんて言い出すのはやめてよ・・・。
それにまた明日って?
公爵令嬢はどうなってるのよ?
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