発展科学の異端者 学生編

ユウ

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天才?天災?科学魔法師現る

3.一つ目の試練

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 入学式が終わり、1週間ぐらいが経過していた。

 この学園に入学したものは、寮に皆入っている。ちなみに男子と女子は別の棟になっている。

「でっ。お前が居るの」

 それは、学業が終わった夜の出来事だった。

「なんで、来ちゃダメだったのかしら」
「……。そう、来ちゃダメなんだ」
「なんで」

 その女子は、うるうるした瞳で零をみていた。

「いや、もしばれたら面倒だろ」
「まー、確かにねぇ。もし、君の友人が来たら、大変だぁぁ」
「馬鹿にしている?」
「馬鹿にしていないけど」

 この場に来ている人物が、クラスの人ならどれほど良かったことでしょう。

 だがこの場に居るのは、生徒会副会長様だった。

「んで、本当に何しに来たんだよ」
「そろそろ、あの子も来るよ」
「あの子……ってことは……」

 零の顔が引きつる。その表情を見て、その女性がニヤッと笑う。

 その数秒後、インターホンが鳴る。恐る恐る、インターホンに出る。

「はい」
「あっ。彩花あやかです」
「……。要件を聞いてもいいかな」
「部屋で要件を、言います」

 零は、しぶしぶ部屋のドアを開けに行く。その際に生徒会副会長を睨んだ。

 その睨みを、生徒会副会長は、顔をそらして口笛を吹いていた。

 そして、零の部屋には、異様な空気に包まれていた。この光景は、他の男子が見たら目から血が出るほど、うらやましい光景だった。何せ、美女と呼べる人が、部屋に2人もいるからだ。

 だが、それは零にとっては、嬉しくはなかった。

「それじゃあ、皆久しぶりだね」

 そう口を開いたのは、中野なかの 彩乃あやのだった。

「久しぶりです。あ、や、の、先輩」
「なんか嫌な言い方だなぁぁ。でも、2人だけの時は彩乃でいいよ」

 三上は、少しだけ嫌な顔をしたように見えたが、目線をそらしながら頷く。

「はい、これ、コーヒーで良かったよね」
「ミルクを、希望しまーす」
「却下しまーす」

 零は、二人の前にコーヒーを置く。最初に口にしたのは、中野だった。

「あっ、おいしい」

 その直後、三上が口にする。

「確かに……」

 その後、零がコーヒーを口にする。

「はぁぁ。でっ、本当の目的は何なの?」
「私は零に、挨拶しておこうと思ってね」
「私もです。クラスが少し忙しかったので」

 零はため息を吐きながら、二人を見る。

「親父になんか……、言われたのか」
「特には、言われていませんよ」
「私も同じです……。と言いたいのですが、一つだけ言われたことがあります」

 そう口にしたのは、三上だった。

「何を、言われたんだ」
「少し前に、グラジア大国にて、A級モンスターの災害が起きたそうです」
「A級モンスター。珍しいわね」

 彩乃が少し驚く。まだこの学園にも情報が来ていなかったからだ。

「はい。A級モンスターは、久しぶりなことみたいで、多くの科学武装師が無くなったと情報が来ています」
「それで?」
「三上家と中野家、白石家に、共同依頼が来ていました。内容は……」

 共同依頼という言葉に、中野の眉が寄る。

「共同クエストってところかしら」
「はい。それで、厄介なことがありまして……」
「私達にも、召集がかかるってこと?」
「……」

 その二人の会話を聞きながら、零はコーヒーをずっと飲み続けている。零は、空気になっていた。いや、空気になるよう努力をしているというべきだろう。

「そうです」
「なるほど、確かにこの学園から出る方法は、2つしかないからね」
「はい。緊急クエスト発生の時と、生徒会に所属する科学武装師だけですからね」
「生徒会に入りたいの?」
「生徒会の活動には、興味はありませんが……。親の命令なので、頑張らないといけないんです」

 三上の瞳を、中野はじっと見つめて、両手を挙げる。

「はい、はい。昔から彩花は変わらないね」
「そういう、彩乃は変わりましたね」
「まあ……ねぇぇ」

 中野は、視線を逸らした。そのまま中野は喋りだす。

「あと1年で、私は世界の最前線よ。そりゃあ、昔のままでいられると思う?」
「私も、そうなるのかなぁ」
「それは……。分からないわ。でも、彩花は私以上の高みに来ると思っているから」
「買いかぶりですよ。私は、零様のために来ているんですから」

 その頃零は、コーヒーを飲みながら、二人を見ていた。

(これ、僕の部屋でやることなのかな?)

 そう疑問を持ったのは、誰も知らない。
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