発展科学の異端者 学生編

ユウ

文字の大きさ
上 下
4 / 10
天才?天災?科学魔法師現る

4.零の過去

しおりを挟む
 零は、息切れをしていた。

「はぁ、はぁ、馬鹿じゃねーのか」
「いや、うおぇぇぇぇ」
「おい、もどすな。耐えるんだ。耐えろ」
「もう……。ダメ……」

 零と共に走っていた清水が、リバースをする。

 信じられるか、持久力が大事だと言って、4時間ぶっ通しで走っているんだぜ。

「もういい。君は、こっちで休め」
「わ、わりぃ。俺はここまでみたいだ」

 零は、清水を置いて走り出す。すると後ろから声がかけられる。

「ねぇ。あんたはまだ大丈夫なの」
「橋爪か……。まあ、俺は体力がある方だからな」

 橋爪 葵はしづめ あおい。このDクラスの中ではかなり上位に位置することのできる女。正直、あんまり関わりたくないタイプだった。

「城ケ崎、城ケ崎」
「なんだ、名前をそうやって呼ぶな。走るのに、イライラしているのが見えないのか」
「見えているわ」

 零はイラっとする。それを、深いため息で落ち着かせる。

「でっ、なんか用でもあるのか」
「ええ。一つ聞きたいことなんだけど、あなた体力やばくない」
「……」

 零は、橋爪を見て理解する。こいつは負けず嫌いなのだろう。だから、零の体力の限界が気になったのだろう。

「そうか。僕は普通だと思うけど」
「普通?正気かしら。あなたの体力は、普通の体力じゃないわよ」
「……」

 零は空を見上げる。それと同時に午前授業の終わりのチャイムが鳴り響く。

「そこまでだああ。集合」

 学年全員による、持久走は西郷先生の声で終わりを迎えた。ここまで走り抜けたのは10名いるかどうかだろう。

 零は、家での訓練を思い出していた。零がここまで科学武装師に拘らないのは、一つ理由があった。

 昔の零は、科学武装師になることが夢だった。父である城ケ崎喜一は、レベル7に到達していて、七星教会の頂点に立っていた姿を見続けいたからだ。

 その姿を、零や零の姉、兄は追い続けていた。だが、それが壊れたのは、零が10歳になった時だった。

 その時から、零の口から科学武装師になるということは無くなった。

 だから今この学園に来ていることは、零自身にとっても想定外だった。ただ、他の人たちと少し違うことがあるというのであれば、零は科学武装師の中でも異端者であることだろう。

 零が、本気で科学武装師になろうとすれば、この学園を卒業するころにはレベル6に到達することができるだろう。いや、もう、到達していたのかもしれない。

 零の過去を、知っているものはこの学園では、中野彩乃と三上彩花の二人だけだ。

 僕は、この学園でも監視をされているということだ。

「僕は、城ケ崎家の中でも、扱いにくい人間なのかな」

 零のつぶやきは、誰にも聞こえず、消えていった。
しおりを挟む

処理中です...