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松川航の劣情
誘惑のサイン
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夫婦そろっての休日もつかの間、また仕事の日々が始まった。
紗希は今日まで連休のようだったが、俺は今日から週末まで5連勤だ。
「いってきまーす。」
いつものように玄関から声をかけ、マンションの廊下に出た。外に出るためには、望田家の玄関の前の扉を通らなければならない。
ふと、3日前の梨奈さんの言葉を思い出した。
『ここにこのマトリョーシカの人形がいつも置いてあるんですけど、もしも置いていなかったらそういう気分なので、いつでも、来てください……』
玄関の脇、少し上の方にある窓を見た。例のマトリョーシカの人形が鎮座しているのが見える。
「(まあ、まだ朝早いしな……。)」
さすがの梨奈さんでもこんな時間からそういう気分にはなっていないということらしい。
こんなことを考えている場合ではない、出勤せねば。
頭を切り替えていつも通り会社へと向かった。
いつもと変わらぬ一週間を過ごして、再び週末が訪れた。この一週間は浩介と通勤が重なることもなく、梨奈とすれ違うこともなかった。一週間の仕事の疲れがたまっている俺は、梨奈が言っていたマトリョーシカの置物のこともすっかり忘れていた。
この土日は、紗希と休みが被らない。どうやって過ごそうかと考え、とりあえずやりたいこともなかったので、コンビニに買い物に出かけることにした。
疲れたなあ、などと思いつつ、マンションの廊下に出て、歩き始めたところで、あのマトリョーシカの人形のことを思い出した。
ちょうど立ち止まった望田家の玄関の、隣に見える窓を見る。
そこには、何も置かれていなかった。
つまり、梨奈さんは今…………
『そういう気分なので……』
思い出し、少し躊躇する。しかし、そこから俺の頭は、梨奈さんの誘惑でいっぱいになった。
しかし微かに残った理性が、その誘惑に負けそうな心を押し止めた。
とりあえず、コンビニになにか買いに行こう。それで戻ってきた時には、マトリョーシカが戻っているかもしれない。きっとそうだ。そうすれば諦めがつく。そう言い聞かせて、コンビニへ急いだ。
最寄りのコンビニは、マンションを出てすぐ、道向かいにある。玄関から、5分もかからずに行けるところにあった。
飲み物を2人分、抑えようとしているが効かない煩悩が、避妊具を手に取らせた。
レジに持っていき会計を済ませる。全て袋に入れてもらい、また来た道を引き返した。
そして、いくらも経たないうちに、望田家の玄関の前までたどり着いた。隣の窓にマトリョーシカは、ない。俺は夢遊病かのようにふらふらと望田家のインターフォンへ引き寄せられ、ボタンを押した。
ピンポーン
「…はい。どちら様でしょうか。」
インターフォン越しに梨奈さんの声が聞こえてきた。
「……隣の、松川ですけど。」
「……今開けます。」
すぐに鍵の開く音がして、顔を出した梨奈さんと目があった。
「どうぞ……」
そして体を引いて、俺を玄関の内側に招き入れた。
紗希は今日まで連休のようだったが、俺は今日から週末まで5連勤だ。
「いってきまーす。」
いつものように玄関から声をかけ、マンションの廊下に出た。外に出るためには、望田家の玄関の前の扉を通らなければならない。
ふと、3日前の梨奈さんの言葉を思い出した。
『ここにこのマトリョーシカの人形がいつも置いてあるんですけど、もしも置いていなかったらそういう気分なので、いつでも、来てください……』
玄関の脇、少し上の方にある窓を見た。例のマトリョーシカの人形が鎮座しているのが見える。
「(まあ、まだ朝早いしな……。)」
さすがの梨奈さんでもこんな時間からそういう気分にはなっていないということらしい。
こんなことを考えている場合ではない、出勤せねば。
頭を切り替えていつも通り会社へと向かった。
いつもと変わらぬ一週間を過ごして、再び週末が訪れた。この一週間は浩介と通勤が重なることもなく、梨奈とすれ違うこともなかった。一週間の仕事の疲れがたまっている俺は、梨奈が言っていたマトリョーシカの置物のこともすっかり忘れていた。
この土日は、紗希と休みが被らない。どうやって過ごそうかと考え、とりあえずやりたいこともなかったので、コンビニに買い物に出かけることにした。
疲れたなあ、などと思いつつ、マンションの廊下に出て、歩き始めたところで、あのマトリョーシカの人形のことを思い出した。
ちょうど立ち止まった望田家の玄関の、隣に見える窓を見る。
そこには、何も置かれていなかった。
つまり、梨奈さんは今…………
『そういう気分なので……』
思い出し、少し躊躇する。しかし、そこから俺の頭は、梨奈さんの誘惑でいっぱいになった。
しかし微かに残った理性が、その誘惑に負けそうな心を押し止めた。
とりあえず、コンビニになにか買いに行こう。それで戻ってきた時には、マトリョーシカが戻っているかもしれない。きっとそうだ。そうすれば諦めがつく。そう言い聞かせて、コンビニへ急いだ。
最寄りのコンビニは、マンションを出てすぐ、道向かいにある。玄関から、5分もかからずに行けるところにあった。
飲み物を2人分、抑えようとしているが効かない煩悩が、避妊具を手に取らせた。
レジに持っていき会計を済ませる。全て袋に入れてもらい、また来た道を引き返した。
そして、いくらも経たないうちに、望田家の玄関の前までたどり着いた。隣の窓にマトリョーシカは、ない。俺は夢遊病かのようにふらふらと望田家のインターフォンへ引き寄せられ、ボタンを押した。
ピンポーン
「…はい。どちら様でしょうか。」
インターフォン越しに梨奈さんの声が聞こえてきた。
「……隣の、松川ですけど。」
「……今開けます。」
すぐに鍵の開く音がして、顔を出した梨奈さんと目があった。
「どうぞ……」
そして体を引いて、俺を玄関の内側に招き入れた。
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