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松川紗希の混沌
連絡先の交換
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航を待ちながらいつの間にか眠りについてしまっていたようだ。朝起きても隣にいない航を探しに、リビングへ歩く。すると、ソファの上で眠っている航が見えた。梨奈さんと航の淫らな行為が脳裏をよぎる。そして、とっさにその行為を知っていることを、悟られてはいけないと思った。最初から自分は何も知らなかったと自分を騙して、航になぜソファで寝ているのかを問いかける。
「なんでこんなところで寝てるのぉ……?」
「ん……?あ……俺今日ソファで寝てたのか……」
私の問いかけに目覚めた航が、眩しそうに目を開けた。
「帰った時にはもう紗希寝ててさ、起こすのも悪いと思って……」
「そうなのぉ……?気にしなくてもいいのに……」
どうやら航が帰ってきた際の寝たふりはバレていなかったらしい。安堵しながら、航の隣に座る。昨晩のことを思い出さないようにしているが、やはり少しの嫉妬心が湧いてくる。試すような気持ちで、昨日の帰りが遅かったことを少し咎めてみる。
「昨日遅かったね。起きて待ってようと思ったけど無理だった……」
「ごめんごめん、次から気をつける。もし遅くなっても無理しないで。」
白々しいセリフに加えて、また遅くなる示唆ともとれる言葉に、なぜだか胸がギュッと締め付けられる思いがした。
「うん……わかった。」
そんな気持ちを隠すように、航の腕に抱きつく。
「今日は休みだし、ゆっくりしようか。」
航が優しく話しかけてきた。そういえば、今日は夫婦そろっての休みだ。私も航も隠し事がある状況で過ごすことに、動悸が止まらなかった。
休み中は、二人で動画配信サービスの映画を見て過ごすことにした。夫が好きなアクションもの、私が好きなミステリーものを、それぞれ一本ずつ。物語に集中していることもあってか、夫も私も、ボロを出すことはなかった。
夫婦そろっての休日が終わり、航の仕事が始まった。一方の私は、今日まで連休だった。夫婦二人でいつも通り過ごしていると、あの不貞行為が何かの夢だったのではないかと思えてくる。
しかしその錯覚は、早々に打ち砕かれることになった。
ピンポーン
「すみません、望田です。」
私の休みの日を伝えたりしていないのに、なぜいるのがわかったのか。驚きながらも、インターフォンで受け答えた。
「……どうしましたか。」
「ああ、よかった。いらっしゃったんですね。少し、話したいことがありまして。」
どうやら、当てずっぽうで訪ねてきたらしい。とりあえず扉を開けていつものようにリビングに案内した。
「すみませんいきなり。あの後、別の部屋のカメラも確認してたんですけど、どうやら二人で何か話していたんじゃないかと思うんです。多分、今後も隠れて密会できるような”合図”を二人で決めているような気がするんです。具体的にはわからないんですが……。」
あの後、というのは、この間の飲み会の時、浩介さんがうちに来てから、部屋を出た後のことだろう。
「……それで、その合図がなんなんですか。」
「…多分、あの二人はまた絶対に密会します。その時、なるべく早くお知らせできるようにしておきたくて。連絡先、交換してもらえますか。」
私は、少し逡巡した。相手の不貞の情報を知るための関係で、それ以外の気持ちが全くなければ、何もためらうことはないはずなのに。……そう、これは航たちが何をしているか、見届けるための連絡先の交換なのだ。そう言い聞かせ、連絡先を交換することにした。
チャットアプリでお互いを友達登録したところで、ふと気になったことを聞いてみる。
「そういえば浩介さんは、今日仕事じゃないんですか?」
「ええ、私の部署は社内システムの保守の部署でして。基本リモートワークなんですよね。必要があれば出社するスタイルでして、融通が利くんです。」
「へぇ……自由でいいですね。」
「あはは、やっぱりそう見えます?やってみると、意外と自分を律するのが大変ですよ。怠けてると、仕事が終わらないんで。」
私が今まで知ることのなかった分野の話を興味深く聞いてしまう。浩介さんとの会話に、楽しさを感じ始めていた。
「じゃあ、そういうわけで。また連絡しますね。お休みの日とか事前に知らせてもらえると、こっちも予定組みやすいので」
そう言って、浩介さんは部屋に戻っていった。
本来であれば、この先航が不貞また重ねてしまうのか憂慮するべきなのだろうが、なぜだか私の胸は微かに高鳴っているような気がするのはなぜだろうか。そんな自分の感情に見ないふりをして、いつも通りの一人の休日を過ごした。
「なんでこんなところで寝てるのぉ……?」
「ん……?あ……俺今日ソファで寝てたのか……」
私の問いかけに目覚めた航が、眩しそうに目を開けた。
「帰った時にはもう紗希寝ててさ、起こすのも悪いと思って……」
「そうなのぉ……?気にしなくてもいいのに……」
どうやら航が帰ってきた際の寝たふりはバレていなかったらしい。安堵しながら、航の隣に座る。昨晩のことを思い出さないようにしているが、やはり少しの嫉妬心が湧いてくる。試すような気持ちで、昨日の帰りが遅かったことを少し咎めてみる。
「昨日遅かったね。起きて待ってようと思ったけど無理だった……」
「ごめんごめん、次から気をつける。もし遅くなっても無理しないで。」
白々しいセリフに加えて、また遅くなる示唆ともとれる言葉に、なぜだか胸がギュッと締め付けられる思いがした。
「うん……わかった。」
そんな気持ちを隠すように、航の腕に抱きつく。
「今日は休みだし、ゆっくりしようか。」
航が優しく話しかけてきた。そういえば、今日は夫婦そろっての休みだ。私も航も隠し事がある状況で過ごすことに、動悸が止まらなかった。
休み中は、二人で動画配信サービスの映画を見て過ごすことにした。夫が好きなアクションもの、私が好きなミステリーものを、それぞれ一本ずつ。物語に集中していることもあってか、夫も私も、ボロを出すことはなかった。
夫婦そろっての休日が終わり、航の仕事が始まった。一方の私は、今日まで連休だった。夫婦二人でいつも通り過ごしていると、あの不貞行為が何かの夢だったのではないかと思えてくる。
しかしその錯覚は、早々に打ち砕かれることになった。
ピンポーン
「すみません、望田です。」
私の休みの日を伝えたりしていないのに、なぜいるのがわかったのか。驚きながらも、インターフォンで受け答えた。
「……どうしましたか。」
「ああ、よかった。いらっしゃったんですね。少し、話したいことがありまして。」
どうやら、当てずっぽうで訪ねてきたらしい。とりあえず扉を開けていつものようにリビングに案内した。
「すみませんいきなり。あの後、別の部屋のカメラも確認してたんですけど、どうやら二人で何か話していたんじゃないかと思うんです。多分、今後も隠れて密会できるような”合図”を二人で決めているような気がするんです。具体的にはわからないんですが……。」
あの後、というのは、この間の飲み会の時、浩介さんがうちに来てから、部屋を出た後のことだろう。
「……それで、その合図がなんなんですか。」
「…多分、あの二人はまた絶対に密会します。その時、なるべく早くお知らせできるようにしておきたくて。連絡先、交換してもらえますか。」
私は、少し逡巡した。相手の不貞の情報を知るための関係で、それ以外の気持ちが全くなければ、何もためらうことはないはずなのに。……そう、これは航たちが何をしているか、見届けるための連絡先の交換なのだ。そう言い聞かせ、連絡先を交換することにした。
チャットアプリでお互いを友達登録したところで、ふと気になったことを聞いてみる。
「そういえば浩介さんは、今日仕事じゃないんですか?」
「ええ、私の部署は社内システムの保守の部署でして。基本リモートワークなんですよね。必要があれば出社するスタイルでして、融通が利くんです。」
「へぇ……自由でいいですね。」
「あはは、やっぱりそう見えます?やってみると、意外と自分を律するのが大変ですよ。怠けてると、仕事が終わらないんで。」
私が今まで知ることのなかった分野の話を興味深く聞いてしまう。浩介さんとの会話に、楽しさを感じ始めていた。
「じゃあ、そういうわけで。また連絡しますね。お休みの日とか事前に知らせてもらえると、こっちも予定組みやすいので」
そう言って、浩介さんは部屋に戻っていった。
本来であれば、この先航が不貞また重ねてしまうのか憂慮するべきなのだろうが、なぜだか私の胸は微かに高鳴っているような気がするのはなぜだろうか。そんな自分の感情に見ないふりをして、いつも通りの一人の休日を過ごした。
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